文献詳細
文献概要
連載 とびら
人は物語を生きている
著者: 小林浩介1
所属機関: 1広島市立北部医療センター安佐市民病院
ページ範囲:P.1025 - P.1025
文献購入ページに移動 Da-Da-Da-Dum! ベートーヴェンの交響曲第5番,通称『運命』冒頭の4つの音は何を表現しているのか? 弟子のシンドラーが尋ねたところ,ベートーヴェンは「このように運命は扉を叩く」と答えたという.このエピソードが広まり,件の交響曲は『運命』と呼ばれるようになったのだが,後にシンドラーの作り話だったことが判明している.とは言え,ダダダダーン! には,運命が扉を叩く音を思わせる確かな感触がある.
運命は突然やって来て,執拗に扉を叩き続ける.世の中には,運命に叩かれる前から扉を開けて,自ら新しい世界へ飛び出す人もいるだろうが,私は,ずっと受動的だった.完全なる無意志.いつでも運命のノックを待っていた.時に運命は,17歳だった私の前に理学療法の姿で現れて,どこまでも続く風景があることを教えた.
運命は突然やって来て,執拗に扉を叩き続ける.世の中には,運命に叩かれる前から扉を開けて,自ら新しい世界へ飛び出す人もいるだろうが,私は,ずっと受動的だった.完全なる無意志.いつでも運命のノックを待っていた.時に運命は,17歳だった私の前に理学療法の姿で現れて,どこまでも続く風景があることを教えた.
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