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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル58巻1号

2024年01月発行

雑誌目次

特集 Physical Activity

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.14 - P.15

 ヒトが安静時よりも多くエネルギーを使う営み「physical activity(身体活動)」は,心身の健康への寄与,免疫能への好影響,生活習慣病予防など,多くの効果が期待されます.現代人の身体活動の減少が注目され,年齢や身体能力に合わせた適切な運動の継続が提唱されています.

 本特集はphysical activityの定義,意義,継続の難しさ,疾患群別留意点などを多角的にまとめました.身体運動を専門とする理学療法士として概念を理解し,その意義を理学療法に広く役立てていただきたいと思います.

Physical Activity—理学療法にどう取り込むか・活かすか

著者: 金居督之 ,   田島敬之 ,   中村学

ページ範囲:P.16 - P.23

Point

●定期的な身体活動の実施と座位行動の減少は健康アウトカムにポジティブな影響を与える

●少しの身体活動でも,何もしないよりはよい

●理学療法士は「身体活動および座位行動に関するガイドライン」の知識と理解を深めたうえで指導を実践するとともに,ガイドラインの啓発・普及を図る必要がある

Physical Activity—高齢者の特性と理学療法の役割

著者: 植田拓也

ページ範囲:P.24 - P.30

Point

●Physical activityには,運動と生活活動の2つの側面がある

●すべての高齢者にphysical activityは強く推奨されており,中等度のエビデンスがある

●高齢者の理学療法では,運動に加え社会資源を活用した生活機能やQOLを高めるアプローチが求められる

Physical Activity—なぜ運動を開始・継続できないのか? 習慣化と行動変容

著者: 真田将幸

ページ範囲:P.31 - P.36

Point

●運動指導は,行動変容ステージに応じて行う

●行動変容ステージが低い時期は,行動変容に及ぼす心理的要因を変えることが目標である.行動変容ステージが高くなれば,いくつかのテクニックを用いて行動変容を効果的に促す

●運動という行動を体系的に理解する

Physical Activityの心理的影響と理学療法

著者: 河合克尚

ページ範囲:P.37 - P.42

Point

●Physical activityは認知症予防やメンタルヘルスに影響を与える要因の一つである

●Physical activityが認知機能やメンタルヘルスに影響を及ぼすメカニズムにマイオカインや神経伝達物質が関与している

●認知機能や心理・精神面への影響を意図した理学療法では,運動や物理的手段を取り入れながら,生活活動を含めたphysical activityを促すためのサポートが重要である

脳卒中とPhysical Activity

著者: 久保宏紀

ページ範囲:P.43 - P.49

Point

●脳卒中者は幅広い重症度を呈すため,重症度や病期に応じた身体活動の目的を考慮することが望ましい

●身体活動の評価には活動量計による歩数や強度別活動時間が用いられるが,活動量計を用いなくても立ち座りや歩行の回数といった観察で評価することは可能である

●身体活動の促進により軽症例では再発予防,中等症例では機能回復や機能維持,重症例では合併症予防といった効果が期待される

関節疾患とPhysical Activity

著者: 白谷智子

ページ範囲:P.50 - P.56

Point

●関節疾患に対してかつての理学療法は愛護的アプローチが中心であったが有酸素運動と筋力トレーニングにより痛みや障害が改善することが明らかになっている

●近年は積極的な身体活動(physica activity)により機能喪失を防ぐことが報告されている

●積極的な身体活動により機能喪失を防ぎ,痛みが軽減できる

●関節炎患者の身体活動の維持のためには理学療法士の介入によるファシリテートが重要である

内部疾患とPhysical Activity

著者: 内藤紘一

ページ範囲:P.57 - P.63

Point

●身体活動は内部疾患の予防と管理に不可欠であり,日常生活に取り入れることが重要である

●内部疾患患者の日常生活での身体活動の実態はブラックボックス化している

●日常生活での身体活動は実測しなければ正確に把握することはできない

がんとPhysical Activity

著者: 井平光 ,   阿部真佐美

ページ範囲:P.64 - P.69

Point

●Physical activityはがんを予防するエビデンスが確立した生活習慣である

●最近の研究では,1日のうちのわずかな運動でも,がんリスク低下に効果があることが示されている

●がんサバイバーに対する運動処方は,さまざまな機能低下予防に有用である

Close-up メカニカルストレス

PFC-FDTMによる治療の概要

著者: 髙木博

ページ範囲:P.72 - P.75

 変形性膝関節症(knee osteoarthritis:KOA)は,日本を含め世界中で一般的な関節疾患であり,高齢者を中心に多くの人々がその影響を受けている.日本国内においても,KOA患者はとても多く認められ,1000万人を超えると言われている.この疾患は関節軟骨の変性や損傷に伴って関節の痛み,腫れ,運動制限などを引き起こすため,生活の質が低下する可能性がある.そのため,KOAは国民病として認識され,治療やケアの重要性が強調されてきている.

 近年,KOAの治療の選択肢の一つとして,多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)療法が挙げられるようになってきた.この治療は,本邦において,保険診療での保存加療(消炎鎮痛剤の内服やヒアルロン酸関節内注入など)と,手術加療(関節鏡手術や骨切り術や人工膝関節置換術)の中間に位置する,biologic healingと考えられる自由診療(保険適応外治療)である.一般にPRP療法は,KOAなどの関節障害に対する比較的新しい治療法であると認識されている.

メカニカルストレスに対する関節組織の細胞応答と相互作用

著者: 浅田啓嗣

ページ範囲:P.76 - P.80

はじめに

 日常の運動に伴い,われわれの関節は常に多様なメカニカルストレスにさらされており,関節を構成する細胞はさまざまな応答をしている.その細胞の機能と役割に対応した特性を維持するために,メカニカルストレスが必要であることには議論の余地はないが,加齢や肥満,外傷といった過度のメカニカルストレスによって関節機能が損なわれることも事実である.

 変形性関節症(osteoarthritis:OA)は軟骨基質の破壊と疼痛による機能制限をもたらす退行性疾患で,高齢者の増加と長寿化に伴い患者数が増加している.関節軟骨の自己治癒能力は乏しく,痛みや変形に対する効果的な治療・予防方法はいまだ確立されていない.OAは関節軟骨の障害だけでなく骨,靱帯,滑膜,関節包といった他の関節組織を含む関節全体の機能障害である1)

 以前は関節リウマチなどの炎症性関節炎と区別され非炎症性と説明されていたが,発症初期のOAにおいては,炎症性メディエーターが大量発現することが報告されており2),現在は炎症はOAの症状と進行に寄与することが認識されている3).滑膜の炎症が疼痛や関節水腫の発生に関与し,その病態にカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)やサブスタンスP(substance P:SP)などの神経ペプチドによる神経原性炎症が関与していると考えられている2).しかしながら,OAの発生と進行の病理学的メカニズムにはいまだ不明な点が多い.滑膜や軟骨・骨といった関節構成細胞がメカニカルストレスによってどのような応答をするのか.各細胞の炎症などによる病態生理学的シグナル伝達経路と関連する分子を明らかにしていくことが,関節損傷の予防と治療方法の開発にとって重要である4,5).本稿では関節構成細胞の機械的刺激(メカニカルストレス)に対する細胞応答と組織間の相互作用の一端を紹介する.

靱帯再建の意義とメカニカルストレス

著者: 金口瑛典

ページ範囲:P.81 - P.84

前十字靱帯(ACL)損傷膝における半月板損傷

 半月板は,荷重の伝達,衝撃緩衝,関節安定化,潤滑および関節固有感覚機能を担う線維軟骨である1,2).前十字靱帯(anterior cruciate ligament:ACL)損傷と半月板損傷はいずれも発生頻度の高い膝の疾患であり,ACL損傷膝では半月板損傷を併発していることが多い.この半月板損傷は,ACL損傷と同時に生じるケースと,ACL損傷時には損傷しておらず,その後二次的に生じるケースがある.ある報告3)によると,ACL損傷時に半月板損傷も合併している患者の割合は10〜20%であるが,ACL損傷後6か月でその割合は63%に増加する.本稿では,われわれが行った動物実験の結果を含め,ACL損傷と再建によるメカニカルストレスの変化が半月板の変性・損傷に及ぼす影響について概説する.

連載 とびら

小児理学療法40年—原点は人生の強み

著者: 小玉美津子

ページ範囲:P.11 - P.11

 小児理学療法に従事して,約40年.その原点は,理学療法士の道に導いた母であり,最初に就職した神奈川県立ゆうかり園(現・神奈川県立総合療育相談センター)です.養護学校が併設された肢体不自由施設で医師,看護師,ケースワーカー,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,心理職,保育士,教員らと多職種のなかでチーム療育の原点を学びました.なかでも教員から受けた影響は大きく,振り返ると現在の職務につながっているような気がします.当時,教員から「何の目的のために理学療法を行っているのか?」,「子どもにとって,それでいいのか?」などと質問攻めに遭ったのを鮮明に覚えています.

 当時は,“脳性麻痺児を正常化する”というボバース・ボイタ法が小児理学療法の主流の時代でした.そのような中,新人研修で成人の施設に1週間宿泊で体験する機会がありました.あの痛ましい事件があった津久井やまゆり園です.重度知的障害,行動障害,寝たきりの脳性麻痺と今まで見たことのない世界に衝撃を受けたのを覚えています.幼い脳性麻痺の子どもたちの理学療法にかかわるなか,子どもたちがどのように生まれ育ってきたのか? この子たちの将来は? 自然と子どもたちの地域生活に興味をもつようになりました.

単純X線写真 読影達人への第一歩・第10回

腰椎分離症・すべり症

著者: 藤澤俊介 ,   古谷英孝

ページ範囲:P.1 - P.7

症例情報

●基本情報:中学2年生,男性.

●診断名:腰椎分離症(lumbar spondylolysis).

●主訴:腰部の動作時痛.

●現病歴:5年前から部活動で野球をしている.2か月前から投球動作時に腰痛を認めていた.痛みは改善せず,投球動作で増悪を認めたため,整形外科を受診し,腰椎分離症の診断を受ける.

●理学療法評価:

 疼痛:腰痛(動作時)Visual Analogue Scale(VAS)65mm,運動麻痺・感覚麻痺:所見なし,腰椎分離症に対する整形外的テストである片脚立位過伸展テスト(右/左):陽性/陰性,Straight Leg Raising Test(右/左):陰性/陰性,棘突起圧痛テスト:陽性.

今月の深めたい理学療法周辺用語・第1回【新連載】

Multimorbidity—多疾患併存

著者: 菊池徹哉 ,   藤沼康樹

ページ範囲:P.86 - P.87

はじめに—Multimorbidity(多疾患併存)とは

 Multimorbidity(多疾患併存)とは,2つ以上の慢性疾患が併存し,診療の中心となる疾患の設定が難しい状態のことをいう.日本の成人における多疾患併存の有病率は29.9%で,65歳以上の高齢者では62.8%にまで上昇しており1),高齢者では多疾患併存の割合が高くなってきている.

 多疾患併存と似ている概念として,併存症(comorbidity)や合併症(complication)がある. これらは,中心となる疾患が存在し,それに関連する症状や状態のことを指している点で多疾患併存とは異なっている.

 さらに,よりケアの必要度が高い患者を特定するために,complex multimorbidity(慢性疾患が3つ以上併存)やmultiple functional limitation(MFL)という概念もあり,特にMFLは「90m歩く」,「2時間座る」などADLや症状などの項目が含まれている. これは同じ慢性疾患でも高血圧症と関節炎では,日常生活への影響が変わるためである2).また,孤独感や社会的孤立,経済的困窮,教育水準の低さなど心理社会的側面も多疾患併存との関連があり3),今後は多疾患併存の定義に影響する可能性がある.

中間管理職の悩み・第7回

指導とハラスメントの狭間で,どのように指導したらよいのでしょう?

著者: 藤原愛作

ページ範囲:P.89 - P.91

はじめに

 理学療法士は日々の業務のなかで,後輩や学生へ指導を行う場面があるが,近年ハラスメントの問題などもあり,「指導が難しい」という声を聞く機会が増えた.

 実際の事案として,2007年に職場内の上司からのいじめ・ハラスメントが原因でうつ病を発症した労働者が自殺した事件では,自殺の原因として「パワーハラスメント(以下,パワハラ)」が日本で初めて労働災害と認定された1).私たちの業界に目を向けてみると,臨床実習中に上記のようなハラスメント事例が起きており,パワハラが自殺の要因であったことが認定されている2)

 このような事例の再発防止のために,ハラスメント防止に関する取り組みが多く行われるようになっており,日本理学療法士協会からも倫理に関するポスターや動画が公開されている3).これらを見てみると,価値観の押し付けや相手への思い込みなどがモラルハザード(倫理感の欠如)として紹介されている.

 そこで,本稿ではパワハラの定義を確認したうえで,相手との認識の違い(バイアス)の観点を踏まえ,指導者側がもっておくべき注意点について考えていく.

理学療法士のための「money」講座・第1回【新連載】

お金は大事—実はみんな聞きたかったお金のこと

著者: 高橋哲也

ページ範囲:P.93 - P.96

はじめに

 「『理学療法ジャーナル』がお金(money)のことをやるのか」と,驚かれた読者も多いかもしれない.

 バブル崩壊以来となる株価上昇のわりに,日本経済は40年ぶりという物価上昇に見舞われている.ロシアによるウクライナへの軍事侵攻もあり,物価上昇はやむを得ないかな,と思っていた人たちも,給料が目に見えて上がらないわりにモノの値段が上がり続けるとさすがに堪えてくる.また,急激な円安などから,海外旅行に行っても割安感はなく,日本の一人あたりの国内総生産(gross domestic product:GDP)国際ランキング(国の平均的な豊かさを測る指標)は3位にまで低下している.

 日本には伝統的に「お金の話」はタブーという文化があるが,経済が右肩上がりに成長し預貯金がいつの間にか増えるような時代は遥か彼方となった.本誌を購入するのにもお金はかかるわけで,いまや私たちの生活にお金の話は避けて通れなくなった.

臨床実習サブノート 臨床実習で技術のステップアップをめざそう・第10回

治療技術④ 基本動作練習,移乗動作練習

著者: 石坂和貴

ページ範囲:P.97 - P.102

はじめに

 基本動作,移乗動作とは,理学療法士が臨床場面で主にかかわる重要な項目です.本稿では各動作のポイントについて概説しながら,診療参加型実習における「見学」,「協同参加」,「実施」に向けて,技術をどのように習得していくか,学生にイメージをもってもらえるよう,疑似症例を通して学んでいきます.なお,ここでは各項目において要点のみに触れるので,動作メカニズムなどの詳細については各種専門書籍をご参照ください.

 診療参加型実習において指導者は,学生をチームの一員として迎え入れ,「情意(態度)」,「認知(知識)」,「精神運動(技能)」領域の3側面から評価し,よりよい理学療法士へと成長する手助けをしていきます.

私のターニングポイント・第48回

脳卒中理学療法トップランナーとの邂逅が,私にもたらした現状打破

著者: 五月女宗史

ページ範囲:P.85 - P.85

 社会人を経て31歳で理学療法士になり,急性期病院に就職しました.安定した生活と,回り道をしてようやく理学療法士になった満足感から,最初の5年間は,仕事をこなしつつも自己研鑽の程度は及第点,「このまま定年まで働ければ」と思っていました.

 しかし,2016年に仙台で行われた脳卒中理学療法の研修で,阿部浩明先生(福島県立医科大学)と吉尾雅春先生(千里リハビリテーション病院)の講演が,そんな私を一変させます.脳卒中は脳のシステム障害であり,脳画像所見から障害を適切に評価すること,重度麻痺患者に対して長下肢装具を積極的に使用し歩行へと展開させること,などの内容は学生時代と臨床で学んだ経験とはまったく異なり,驚愕し,まさに雷に打たれたような衝撃でした.自らの膨大なデータを駆使し,科学的根拠をもって論理的に話をされており,こんなにもすごい理学療法士が存在していること,そして真摯に理学療法に向き合う姿勢,患者さんをよくしようと尽力する強い矜持を感じました.

My Current Favorite・22

定量的評価機器を用いた理学療法評価

著者: 伊藤翔太

ページ範囲:P.88 - P.88

現在の関心事は?

 適切に理学療法を行うためには,適切な評価が重要であると考えています.経験が浅い頃には主観的な評価を中心に行っており,自分の行った治療は本当に効果があったのか悩むことが多くありました.理学療法の評価では現在でも主観的に判断されているものもあり,各理学療法士に依存しているのが現状です.

 当院では痙縮を有する患者さんに対して理学療法とボツリヌス療法を併用して行っており,歩行は三次元動作解析装置を,痙縮は関節抵抗値を測定する機器を用いて定量的評価を実施しています.定量的な評価を行うことでわずかな変化も捉えることができます.そのため,治療に効果があったのかがより明確になり,理学療法を進めていくなかで治療方法の決定が行いやすくなりました.定量的な評価を行うことで,治療の効果が明確になるだけではなく,患者さんのモチベーション向上にもつながっています.

プラクティカル・メモ

安価な器具—小型デジタルスケールを用いた筋力測定の工夫

著者: 坂口翔平 ,   渡邉英夫 ,   坂田修治 ,   平山史朗

ページ範囲:P.103 - P.105

はじめに

 臨床上,筋力評価は理学療法の基本的評価であり,そのための客観的筋力測定に際しては,ハンドヘルドダイナモメーター(hand held dynamometer:HHD)の使用が適当と考えられ,器具も複数市販されている.HHDについては測定肢位と測定方法がまだ標準化されていない1)という問題点はあるが,日常の診療で客観的な筋力測定をしたい場面は多い.

 松葉ら2)がHHDの小型デジタルスケール(小型digital scale:小型DS)を用いた健常成人での上肢の測定で,良好な信頼性および妥当性を報告しており,筆者らはその測定理論を下肢筋力測定にも応用している.現状での筆者らの経験では,筋力測定が手軽に短時間で行えて,ある程度の筋力までは理学療法士1人でも測定が可能なので紹介する.

ひろば

理学療法士の詩(うた)

著者: 奈良勲

ページ範囲:P.107 - P.108

 人類がヒトから人に進化した特徴を定義づけるものとして,創造の人(ホモ・ファーベル)・遊戯の人(ホモ・ルーデンス)・器用な人(ホモ・ハビリス)・直立し,火を使う人(ホモ・エレクトス)などがある.それらのなかで,ホイジンガによるホモ・ルーデンスの定義では,哲学すること,詩作すること(日本では俳句,短歌など)が最高の遊びであるとされている1)

 私もこれまで哲学するとか,詩作をしてきたと思っているが,ホイジンガのホモ・ルーデンスの定義を知ったとき,知らず知らず最高の遊びをしてきたこと自体に驚いた.私の詩のなかに,自身の理学療法士としての仕事に関連したものもある.本稿ではそのうち3編の詩を紹介したい.なお,♪ 理学療法士の詩(うた) ♪は約30年前に風刺的に作詩したものであることを断っておきたい.

動物に対する理学療法—私の職場紹介

著者: 吉川和幸

ページ範囲:P.109 - P.109

はじめに

 動物に対する理学療法と聞いて,読者はどのようなイメージをもたれるだろうか.その領域の存在自体を知っている理学療法士は多いかもしれないが,具体的内容について知る機会は少ないと思える.

 英国をはじめとした海外10か国では,すでに理学療法士が動物への理学療法を担っている.その起源については諸説あるが,1960年代に馬を対象とした理学療法が始まり,1980年後半から犬や猫などの伴侶動物を対象とした医学的リハビリテーションへの関心が高まったとされている.

 本邦の獣医療界では2004年に獣医師を中心とした日本動物リハビリテーション学会が設立され,理学療法界では2010年に日本動物理学療法研究会が発足した.現在は日本理学療法士協会内に動物に対する理学療法部会があり,これから大きな発展が望める分野であると思われる.

 一方で,犬は踵を接地しない4足歩行をする動物であり,胸腰椎の数がヒトよりも多く,鎖骨が退化し肩関節の複合的な運動が難しいなど,学ぶべき解剖/運動学が多い.また,本邦で理学療法士が公的に獣医療にかかわるには,乗り越えなければならない課題が山積している.

学会印象記

—第9回日本糖尿病理学療法学会学術大会—「チーム糖尿病理学療法」としてのご報告と深謝

著者: 竹田昌広

ページ範囲:P.92 - P.92

 今大会のテーマは「STOP糖尿病重症化! 歩く力は理学療法士が守る 歩ける足はチームで守る」でした.大会長の林久恵先生,副大会長の河野健一先生と面識があったことや,糖尿病にかかわる理学療法士の使命を直球で謳ったテーマであることから,函館より参加しました.多科の医師や多職種による集学的な連携が必要になる糖尿病理学療法の特徴が見事に具現化された学会でした.日本フットケア・足病医学会の理事長である寺師浩人先生からは「多くの理学療法士の方々が『足病』の世界に参入しなければ,日本の『足』を守ることができない.日本の足病患者の『歩行を守り,生活を護る』一翼を担ってほしい」と,日本腎臓リハビリテーション学会の副理事長である柴垣有吾先生からは「延命するから『生きる価値』を与え患者を幸せにするために多職種アプローチが必要である」と理学療法士への熱い想いと期待をいただきました.

臨床のコツ・私の裏ワザ

人工膝関節全置換術後の熱感を測定するコツ

著者: 元家佳仁

ページ範囲:P.110 - P.111

人工膝関節全置換術後の炎症に対する評価

 人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)後の臨床的な炎症反応として,発赤,腫脹,熱感,疼痛を示す.評価項目として,腫脹ならば周径,疼痛ならば痛みの評価スケールを使用して数値化できるが,発赤や熱感に関しては,その有無を把握するのみで,これまで数値化できていなかった.

 熱流補償式体温計により非侵襲的に深部温を測定する方法1)があるが,機器が高価なこともあり一般に臨床に普及しているとは言いがたい.そこで本稿では,通常の評価に加える工夫として,非侵襲的に皮膚表面温度を測定することで,熱感を数値化する方法を紹介する.

書評

—国際医療福祉大学成田病院リハビリテーションセンター(編),角田 亘(責任編集),西田 裕介,森井 和枝,後藤 和也,白砂 寛基,大森 智裕(編集協力)—「PT・OT・STポケットマニュアル」

著者: 庄本康治

ページ範囲:P.71 - P.71

 本書『PT・OT・STポケットマニュアル』が発刊されました.ポケットに収まるサイズでありながら広範囲を網羅,かつわかりやすい内容になっています.

 Ⅰ章の「リハビリテ—ション・プロフェッショナルとしての常識」では,プロフェッショナルとしてのあり方,認知・非認知能力の重要性,診療記録,キャリアパスへの示唆まで論述されています.まさに,新人セラピストが最初に目を通すべき内容だと感じましたし,診療参加型臨床実習に参加中の学生が熟読すべき内容であるとも思いました.Ⅱ章「リハビリテ—ション医療の基礎知識」では,ICF,病期ごとのリハビリテ—ション,リスク管理,診療報酬システムなどについて論述されています.Ⅲ章「リハビリテ—ション評価の基本」では,問診と面接から広範囲の基本的評価について論述されていますが,図表や画像所見も豊富で,大変わかりやすくなっています.Ⅳ章「リハビリテ—ション治療の基本」では,関節可動域訓練やポジショニングなどのベーシックな治療はもちろんですが,エビデンスに基づく最新治療についても簡単に紹介されていて,本書から論文や書籍などの検索に進むことも可能でしょう.Ⅴ章「疾患ごとのリハビリテ—ション診療」では,さまざまな疾患に対する推奨治療が多くの図表を使用してコンパクトに論述されています.Ⅵ章「重要評価スケール」では,代表的評価方法がコンパクトにまとめられています.

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目次

ページ範囲:P.12 - P.13

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.91 - P.91

第35回「理学療法ジャーナル賞」発表

ページ範囲:P.105 - P.105

バックナンバー・次号予告

ページ範囲:P.114 - P.115

編集後記

著者: 永冨史子

ページ範囲:P.116 - P.116

 あけましておめでとうございます.2024年第1号をお届けいたします.

 本号の特集はPhysical Activityです.近年,身体不活動や座位中心生活による健康への悪影響が指摘され,ヒトが「立ち,歩き,動く」身体活動の意義が世界的に注目されています.Physical Activityは,ヒトの身体の成り立ちと弱点・現代文化とが相まった多角的な課題に対しさまざまな点で重要となる概念です.理学療法にどう取り込むか,あるいは日々の理学療法がPhysical Activityと重なるにもかかわらずその量や効果をあいまいにみていないか,疾患や障害が背景にある場合の工夫など,理学療法士の目線でPhysical Activityを考える企画としました.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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