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連載 運動療法に活かすための神経生理(学)・第5回
完全頸髄損傷患者の損傷レベル付近の筋力は,どのようなメカニズムで回復し得るのか?
著者: 正門由久12
所属機関: 1IMSグループ医療法人財団明理会新越谷病院 2東海大学医学部リハビリテーション科
ページ範囲:P.1271 - P.1275
文献購入ページに移動近年の全国調査によると,完全頸髄損傷患者は減少し,不全頸髄損傷患者が多くなっている1).特に平地転倒における不全頸髄損傷は,高齢者の増加による脊柱管狭窄に起因すると推測される.ただし,平地転倒でも完全頸髄損傷に至っている割合は少なくない.
完全頸髄損傷において,例えば「C6完全頸髄損傷」であれば,C6までの神経支配は損傷を免れており,そのレベルまでの徒手筋力テスト(Manual Muscle Testing:MMT)は3以上(通常は5)となる.一方それ以下では,C7の支配筋の筋力がMMT 0,1,2,さらにそれ以下の髄節の支配筋ではMMTがほぼ0となる.受傷当日から72時間以内に診察を何度も行い,損傷部以下の(神経支配が及ぶ領域の)筋力や感覚障害の回復の経過を観察し,回復がなければ,完全損傷,つまりAmerican Spinal Injury Association(ASIA)機能障害尺度Grade Aと診断される.72時間の時点でGrade Aであった患者は,完全頸髄損傷であり,回復はほぼ望めない.
しかしながら,完全頸髄損傷のレベルの下にある髄節(例:C6完全頸髄損傷であればC7,つまり直下)が支配する筋の筋力は,軽度ではあるが回復することが報告されている.
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