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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル58巻11号

2024年11月発行

文献概要

連載 運動療法に活かすための神経生理(学)・第5回

完全頸髄損傷患者の損傷レベル付近の筋力は,どのようなメカニズムで回復し得るのか?

著者: 正門由久12

所属機関: 1IMSグループ医療法人財団明理会新越谷病院 2東海大学医学部リハビリテーション科

ページ範囲:P.1271 - P.1275

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はじめに

 近年の全国調査によると,完全頸髄損傷患者は減少し,不全頸髄損傷患者が多くなっている1).特に平地転倒における不全頸髄損傷は,高齢者の増加による脊柱管狭窄に起因すると推測される.ただし,平地転倒でも完全頸髄損傷に至っている割合は少なくない.

 完全頸髄損傷において,例えば「C6完全頸髄損傷」であれば,C6までの神経支配は損傷を免れており,そのレベルまでの徒手筋力テスト(Manual Muscle Testing:MMT)は3以上(通常は5)となる.一方それ以下では,C7の支配筋の筋力がMMT 0,1,2,さらにそれ以下の髄節の支配筋ではMMTがほぼ0となる.受傷当日から72時間以内に診察を何度も行い,損傷部以下の(神経支配が及ぶ領域の)筋力や感覚障害の回復の経過を観察し,回復がなければ,完全損傷,つまりAmerican Spinal Injury Association(ASIA)機能障害尺度Grade Aと診断される.72時間の時点でGrade Aであった患者は,完全頸髄損傷であり,回復はほぼ望めない.

 しかしながら,完全頸髄損傷のレベルの下にある髄節(例:C6完全頸髄損傷であればC7,つまり直下)が支配する筋の筋力は,軽度ではあるが回復することが報告されている.

参考文献

1)工藤大輔,他:日本における完全頸髄損傷の疫学.Jpn J Rehabil Med 2023;60:1138-1143
2)Ditunno JF Jr, et al:Wrist extensor recovery in traumatic quadriplegia. Arch Phys Med Rehabil 1987;68:287-290
3)Ditunno JF Jr, et al:Motor recovery of the upper extremities in traumatic quadriplegia:a multicenter study. Arch Phys Med Rehabil 1992;73:431-436
4)永田雅章:頸髄損傷における上肢筋力の回復.リハ医1995;32:361-366
5)正門由久,他:運動単位数推定法.総合リハ1996;24:407-413
6)近藤 健:上腕二頭筋の運動単位数の計測とその臨床応用に関する研究.リハ医1995;32:367-375
7)布谷芳久:頸髄損傷により不全麻痺をきたした上腕三頭筋における運動単位の発射様式.リハ医1999;36:390-398

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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