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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル58巻4号

2024年04月発行

雑誌目次

特集 DXが理学療法にもたらす未来

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.382 - P.383

 DX(デジタルトランスフォーメーション;digital transformation)は,「進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活をよりよいものへと変革するもの」とされ,社会に浸透しつつある.医療・介護・福祉の領域においても,データとデジタル技術を駆使した診療業務や経営モデルなどに変革が進んでおり,理学療法の有り様も変化していくことが予想される.理学療法が関連する領域での先進的な取り組みなどを通してDXの現在地と将来について知り,今後DXが理学療法にもたらす変化と可能性について考えていく足がかりとしたい.

DXとは何か—医療・福祉・介護にDXがもたらすもの

著者: 吉橋謙太郎

ページ範囲:P.384 - P.388

Point

●医療・福祉・介護分野におけるDXは,「Society 5.0」や「データヘルス改革」など多角的な視点をもって理解する必要がある

●DXには,「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」などの段階や,分野特有の課題があり,それらを踏まえて実践する必要がある

●医療・介護分野におけるDXにはロードマップがあり,その流れに乗り遅れないよう,自組織のDXを進めていく必要がある

DXと電子カルテ,その可能性と未来

著者: 篠原直樹

ページ範囲:P.389 - P.394

Point

●電子カルテのモバイル化は情報通信技術(information and communication technology:ICT)の利活用を促進させ,働き方改革に有効である

●チャットによる多職種連携の強化と生成AI(artificial intelligence)による個人の能力拡張が人材不足をカバーする鍵となる

●地域包括ケアシステムの実現に電子カルテのモバイル化とクラウド化が重要である

疾病管理におけるヘルスケアアプリの活用の実際と可能性

著者: 金居督之 ,   野村章洋

ページ範囲:P.395 - P.400

Point

●スマートフォンのヘルスケアアプリを活用することにより,生活習慣が可視化される

●現在日本国内では3件の治療用アプリが薬事承認されている

●デジタルヘルスの臨床活用が進めば,理学療法士がデジタルバイオマーカーのエビデンス創出に貢献できる可能性がある

VR・AR・MRのリハビリテーションへの応用と可能性

著者: 金子文成 ,   岡和田愛実

ページ範囲:P.401 - P.410

Point

●現実の物理的空間と人工的につくられた空間を融合させて新たな体験を生み出す一連の技術を包括する総称をextended reality(xR)という

●xRを用いることで,プライミング効果や身体感覚の錯覚に伴う生理学的効果が期待でき,リハビリテーション治療に応用する利点がある

●一言でxRといっても製品ごとに生理学的効果が異なるため,その点を理解して使用する必要がある

歩行分析のデジタイゼーション—深層学習を活用した姿勢推定技術の現在地点と今後のDXの可能性

著者: 奥山航平

ページ範囲:P.411 - P.416

Point

●深層学習を活用した姿勢推定技術により,簡便かつ安価に定量的な歩行分析が実施可能である

●姿勢推定技術による歩行分析の精度は,時空間的パラメータはおおむね良好とされている一方で,運動学的パラメータには課題が残されている

●低コストで大量の歩行情報が集積可能になることで,歩行以外の臨床的に有益な情報が推定できる可能性がある

遠隔心臓リハビリテーションの実際と可能性

著者: 福田吉辰 ,   有薗信一

ページ範囲:P.417 - P.422

Point

●遠隔心臓リハビリテーションは身体機能やQOLを改善させる

●遠隔心臓リハビリテーションの導入において最も重要なのは緊急対応マニュアルを作成することである

●研究で用いる遠隔監視システムは誰もが使用可能であり,呼吸器や腎臓病患者への研究応用も可能である

Mobile applicationによる生活習慣病管理の可能性

著者: 脇嘉代

ページ範囲:P.423 - P.429

Point

●国内でも自分の健康管理のためにスマートフォン・アプリケーション(以下,アプリ)を利用する人が増え,その利活用の重要性が謳われている

●3学会の合同事業のランダム化比較試験により,糖尿病性腎臓病重症化抑制において情報通信技術システムによる介入の有用性が明らかとなった

●アプリの利用継続性には課題があり,患者の状況に応じて個別の自動フィードバックを行えるようアプリと連携しながら,適宜,医療従事者の介入を追加する仕組みが不可欠である

在宅医療におけるオマハシステムの活用—訪問リハビリテーションでの活用事例

著者: 中西純 ,   岩本大希

ページ範囲:P.430 - P.436

Point

●オマハシステムの活用により,効率的に「問題」,「介入」,「問題別評定」の3ステップで記録ができる

●多職種連携が行いやすい情報管理システムとなっている

●情報管理がしやすく,スタッフ間のコミュニケーションの円滑化が期待できる

教育現場でのDX活用の実際と可能性

著者: 山下喬之 ,   平原大助 ,   小林泰之

ページ範囲:P.437 - P.442

Point

●理学療法士養成校でも,教育デジタイゼーションは完了したと言える

●今後は,あらゆるデジタルを利活用して理学療法士のかかわる業界全体として取り組みの方針,方法までをも変革していくデジタルトランスフォーメーション(digital transformation:DX)が求められるフェーズとなる

●仮想現実(virtual reality:VR)を用いた多職種連携教育により,学生にとって,「初めて経験する臨床実習」を,「何度も見たことがある実習」へ変革できた.今後は,技能系科目におけるDXの拡充が課題である


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます.

DXがもたらす未来に理学療法士が備えておきたいこと

著者: 梶原侑馬

ページ範囲:P.443 - P.448

Point

●リハビリテーションに関するデジタルトランスフォーメーション(digital transformation:DX)において,情報通信技術(information and communication technology:ICT)や人工知能(artificial intelligence:AI)を有効活用した先進事例が増えてきている

●DX化において円滑なコミュニケーションは欠かすことができず,情報収集力,論点設計力,質問力などのコミュニケーション能力を向上させることが重要である

●DX化は,広範囲にわたるプロセス最適化の可能性を秘めており,理学療法の質の向上が期待される

Close-up 短下肢装具・下腿義足の現在の課題

理解しておこう 短下肢装具の現在の課題

著者: 中野克己

ページ範囲:P.450 - P.454

はじめに

 装具は,四肢や体幹に機能障害を負った場合に,これらの軽減を目的として使用する補助器具である.特に下肢装具は,術後療法での安静・固定,骨折や足底潰瘍への免荷,痛みを伴う疾患への圧力分散,変形した足部の収納,立位歩行の部分的な代償や援助など多岐にわたっている1)

 一方,(一社)日本支援工学理学療法学会(以下,支援工学学会)が,2017年に理学療法士に必要とされる装具に関する知識・能力の20項目についてアンケート調査した結果,すべての項目で半数以上の理学療法士が「大いに持つべき」と答え,ほぼ全員が「持つべき」と回答している.しかし,実際に「大いに持っている」と回答した者は3割未満であり,「持っている」と回答した者を合わせても半数にとどまっていた2)

 本稿では,屋外での歩行がなんとか可能で,活動度レベルが低〜中程度の脳卒中片麻痺者のレベルを想定した場合の短下肢装具(ankle foot orthosis:AFO)が抱える現状と今後の課題について考察する.

理解しておこう 下腿義足の現在の課題

著者: 山本一樹

ページ範囲:P.455 - P.460

はじめに

 筆者が切断患者を初めて見たのは学生のときだった.一度は歩行能力を失った患者が理学療法士と義肢装具士の適切な介入により,再び歩行能力を取り戻し自宅復帰を果たしたときの感動を今でも覚えている.それから国家資格を取得し,義足のリハビリテーションにかかわるようになり10年以上が経った.

 その間,身体と義足をつなぐソケットテクノロジーや人体の関節の役割を担う膝継手や足部は進化を続け,確実に義足ユーザーのパフォーマンスが向上してきたと実感している.テレビやsocial networking service(SNS),動画配信サービスにおいても外傷や腫瘍で下肢切断となったアクティブな義足ユーザーが多く取り上げられ,「義足ユーザー=アクティブ」といったイメージが世間にも浸透しているのではないだろうか.実際,筆者が在籍している義肢装具サポートセンター(以下,義肢装具SC)でも義足のアスリートがメディアに取り上げられる機会が多いため,活動度の高い切断者ばかり利用しているイメージをもたれていることをよく耳にする.

 しかし,義肢装具SCへの入所者の属性としては高齢化,低活動化が以前より進んでおり義肢製作に至らない症例が存在し,アクティブな義足ユーザーとの差が大きくなっていることも事実である.

 本稿では臨床で比較的目にする機会の多い下腿義足を中心に,義肢のリハビリテーションを専門に行っている理学療法士の視点から臨床で今なおある課題を挙げ,今後への期待を述べていく.

連載 とびら

点睛の機

著者: 内山靖

ページ範囲:P.379 - P.379

 今から遡ること60年.

 1963年と言えば,国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院が開学し,日本リハビリテーション医学会が設立された年でもあります.日本の理学療法・リハビリテーション科学の歴史は,還暦を迎えました.

今月の深めたい理学療法周辺用語・第4回

ソーシャル・キャピタル(social capital:SC)

著者: 藤原佳典

ページ範囲:P.462 - P.463

 超高齢化と少子化・人口減少が進行するわが国では,限られた資源をどのように配置するのか. 例えば,高齢者にかかる社会保障費について,研究者や政策立案者はとかく疾患や障害の予防に意識が偏りがちになる.一方,高齢期の疾患や障害には多種多様かつ不可避で重積するリスク要因が存在することが多い.そのため,リスク要因の個々に対処していくことは限られた資源や人材に依拠した政策としては非効率的かつ非現実的といえる.同時に,リスクを有する個々人を対象にする,いわゆる「ハイリスク・アプローチ」も効率的とはいえない.

中間管理職の悩み・第10回

スタッフの離職に伴う職場環境ケアの方法を教えてください

著者: 渡邉賢治

ページ範囲:P.464 - P.465

はじめに

 職員の離職による人員減少は業務面や経営面だけでなく,働き続けている職員の心理面にも大きな影響を及ぼす可能性がある.離職による人員減少が生じた際,管理者はその影響を最小限に抑える一方で,組織や個人の成長機会を最大限に引き出すことが求められる.

 本稿では,離職に伴う職場環境ケアに関する具体的な取り組みについて解説する.

理学療法士のための「money」講座・第4回

ぶっちゃけ,何がどう違うの?—NISA,iDeCoを徹底比較

著者: 細川智也

ページ範囲:P.467 - P.471

はじめに

 前回(本誌2024年3月号)は,「なぜ資産運用が必要か」に焦点を当てました.しかし,多くの方がまだ資産運用に対して恐怖心や懐疑心をもっているのではないかと思います.その原因はおそらく「よくわからないから」だと筆者は思います.

 そこで今回は,皆さんが安心して資産運用を開始できるよう,資産運用のコツをいくつかご紹介します.後半では多くの方が気になっているNISAとiDeCoについて,詳しくお伝えできればと思います.

臨床実習サブノート 「どれくらい運動させていいかわからない」をどう克服するか・第1回【新連載】

—運動器疾患—人工膝関節全置換術後の関節可動域運動

著者: 田中友也

ページ範囲:P.473 - P.479

人工膝関節全置換術(TKA)とは

 変形性膝関節症[以下,膝OA(osteoarthritis)]では膝関節の痛みや関節可動域[以下,膝ROM(range of motion)]制限が主症状となり,日常生活活動(ADL)能力が低下します.そのような症状に対して,人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)が行われます.

 TKA術後の膝ROMは患者満足度や動作に影響するとされているため,急性期からROM運動を行い,膝ROMを改善させる必要があります.しかし,術後急性期では痛み・腫脹・術前からの膝周囲筋の硬さによって,膝ROM制限が生じることがあり,理学療法士は患者の状況を考えながらROM運動を行っていきます.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年4月30日).

私のターニングポイント・第51回

行動し続けてもたらされた,神様からのプレゼント

著者: 吉田竜一

ページ範囲:P.482 - P.482

 かつて私は,理学療法士という言葉をまったく知らない経営を学ぶ夜学の大学生でした.その当時,大学卒であったとしても就職氷河期で,望む一般企業への就職はかなりの狭き門であり,どのように社会へ出ていくべきかよく悩んでいたことを覚えています.同時に教員をめざしていたこともあり,教職課程を履修するなか,クラスにたまたまいた同級生の理学療法士に「こんな仕事あるけど興味ある?」と声をかけてもらい,興味をもち始め手始めにとある病院のリハビリテーション助手として飛び込みで勤務を始めてから27年,理学療法士免許を取得し20年目となりました.その当時はとても大変だったと記憶されていますが,振り返ってみると昨日のことのように感じます.時の流れは早いものですね.

 私にとってのターニングポイントは,1つ目は最初の就職の際,尊敬する上司(津曲良太郎先生)から通所リハビリテーション事業所の立ち上げに声をかけていただいたこと.2つ目は生活期勤務から急性期病院へ転職するとき.この2つが大きなものではないかと思います.特に生活期から急性期病院へ転職活動をする際にさまざまな募集へ応募しことごとく不採用となり,これが最後と決めて応募した先の面接官が近藤国嗣先生で,面接での受け答えはとても採用してもらえる内容ではなかったと当時思ったのですが「面白そうだったから」という理由で採用となり,キャリアチェンジのチャンスをいただけたことがありがたかったです.急性期へ移り,右も左もわからないことをなんとかしようと学会が主催する研修に参加したことがきっかけで学術活動を積極的に行うようになりました.そこから交流が広がり,研究・講師活動を行う機会を得るようになったり,最初は違った体験をしてみようと思い応援に行った施設に縁あって異動することとなり,現在は長年過ごした千葉県を離れ,神奈川県に移り主に循環器内科領域での診療に従事しています.

報告

脳卒中により運動失調を呈した患者におけるMini-Balance Evaluation Systems Testの変化の感度と応答性

著者: 山崎雄一郎 ,   丸木秀行 ,   高石真二郎 ,   髙村浩司 ,   新井智之

ページ範囲:P.483 - P.488

要旨 【目的】本研究は,脳卒中により運動失調を呈した患者に対して,Mini-Balance Evaluation Systems Test(Mini-BESTest)の変化の感度と応答性を,Functional Reach Test(FRT)や片脚立位保持時間などの各バランス評価と比較することを目的とした.【方法】脳卒中により運動失調を呈した患者30名を対象に,入退院時の運動機能(体幹機能,下肢筋力,歩行速度,バランス能力),運動失調の重症度を比較し,effect size(ES),standardized response mean(SRM),relative efficiency(RE)を求めた.応答性は退院時の独歩自立の有無を入院時の各バランス評価と比較することで検討した.【結果】すべての対象者が歩行の自立に至った.入退院時の比較では,Mini-BESTestのESは1.08,SRMは1.54と高い変化の感度を示した.独歩自立を外部基準とした際には,Mini-BESTestのarea under the curveが0.83と最も高い応答性を示した.【結論】Mini-BESTestは,脳卒中により運動失調を呈した患者のバランス能力の変化を,FRTや片脚立位保持時間よりも鋭敏に検出できる有用な評価指標であることが示唆された.

紹介

性的マイノリティへの理学療法を適切に実践するために性をSOGIから捉える

著者: 中西純 ,   喜多一馬

ページ範囲:P.490 - P.491

はじめに

 近年,性の多様性に関する社会の理解が広がりつつある.本稿を執筆している2023年3月現在,全国自治体の同性パートナーシップ制度(申請をした2人が「生活をともにするパートナーである」と公的に認める認定制度)は,人口カバー率が約65.2%にもなっている1).本稿では,こうした社会状況に即した理学療法に必要なSOGIという概念を紹介し,理学療法とのかかわりや展望を述べる.

学会印象記

—第6回日本理学療法管理学会学術大会—理学療法の多様性と管理学,そして価値の創造

著者: 井上靖悟

ページ範囲:P.466 - P.466

 第6回日本理学療法管理学会学術大会は,「2040年を展望した【保健・医療・福祉】の理学療法マネジメントとメンタルヘルス」と題し,第9回日本精神・心理領域理学療法研究会との合同学会の一環として開催されました.内容は,各大会長による基調講演,シンポジウム4題,ランチョンセミナー,特別・教育・海外招待講演など多岐にわたり,一般演題は108演題(うち管理学会72演題)と充実した学会でした.また,会期後はアーカイブ配信により当日参加できなかった講演を聴講できるなど学びを深めることができました.

—第12回日本理学療法教育学会学術大会—卒前から卒後までのシームレスな教育連携の意義と課題の再考

著者: 忽那俊樹

ページ範囲:P.472 - P.472

 2023年12月9日と10日の2日間にわたり,第12回日本理学療法教育学会学術大会が大宮ソニックシティにて開催されました.本学術大会のテーマは「学習科学に基づいた教育活動の実践—学習を成功に導くための教育とは」と題され,大会長基調講演,特別講演,教育講演,シンポジウム,セミナー,口述発表(18演題),およびポスター発表(75演題)といった多岐にわたる魅力的な企画が組まれており,参加者は充実した時間を過ごすことができました.

書評

—齋藤 佑樹,上江洲 聖(著)—「作業療法の曖昧さを引き受けるということ」

著者: 酒向正春

ページ範囲:P.481 - P.481

 表紙を見て,すぐ読みたくなった.「作業療法の曖昧さを引き受けるということ」を漫画で理解させるのか,すごく楽しみである.しかし,タイトルからして,なんとなく複雑そうな予感もした.

 作業療法とは,人々の健康と幸福を促進するために,作業に焦点を当てた治療,指導,援助と定義されるが,作業が何であるかがわかりにくい.私たちの臨床現場で作業療法と言えば,上肢戦略,生活戦略,精神・高次脳機能・復職戦略の3本柱の実践である.その実践には,患者との信頼関係の構築が前提となる.本書は,まさに患者との信頼関係の構築方法を丁寧に漫画と解説文で説明していた.まるで,ソーシャルワーカーの教育書ではないかと感じるほどに,患者の心と気持ちを大切にしていた.

臨床のコツ・私の裏ワザ

気道粘膜の生理学に基づいた呼吸理学療法・排痰のコツ

著者: 石光雄太

ページ範囲:P.493 - P.495

 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)をはじめとした慢性呼吸器疾患では気道の慢性炎症などから喀痰を呈することも多い.軽症例では離床や咳嗽などによる痰の自己喀出が可能であるが,重症例では十分な自己喀出が困難となることもしばしば経験する.簡便な排痰能力の指標として咳嗽力(cough peak flow:CPF)が挙げられ,中高齢者での自己排痰の可否を調べた研究では240〜270L/分が喀痰の可否のアウトカムとされていると報告されている1,2)

 自己喀出困難な症例に対しては体位ドレナージやアクティブ・サイクル呼吸法などさまざまな呼吸理学療法の手技が報告されており,本稿ではそれらに付随して実施することで効果が期待できるものを紹介する.

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目次

ページ範囲:P.380 - P.381

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.448 - P.448

動画配信のお知らせ

ページ範囲:P.479 - P.479

バックナンバー・次号予告

ページ範囲:P.498 - P.499

編集後記

著者: 加藤浩

ページ範囲:P.500 - P.500

 2024年度最初の「理学療法ジャーナル」をお届けします.この時期になるとある言葉を思い出します.それは,以前,テレビ番組で世界に展開している某日本企業最高責任者へのインタビューでの言葉です.グローバル競争時代を勝ち抜く秘訣は何かとの質問に対し,「多くの企業は口ではグローバル化と言っていますが,国内志向がすごく強い.今のままでよいのか.今のままでよいことはない.安定は衰退の前兆です.今の時代を勝ち抜くためには,チャレンジ精神がないと,上司の言うことばかり聞いて毎日,同じオペレーションを回している人はだめですね」と語られていました.

 私自身,理学療法士の資格をとり,早三十数年という年月が過ぎました.長年の経験から守備範囲内の仕事(安定した仕事)であれば,それなりに効率よく済ませる方法も覚えました.それがよいことなのか,果たして悪いことなのかはわかりませんが……ただ,安定を繰り返さないためには,自分の仕事の守備範囲を広げること,つまり,新しいことに挑戦する(行動する)ことが大切だと思います.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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