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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル58巻9号

2024年09月発行

雑誌目次

特集 最適な非対称性動作を考える

EOI(essences of the issue)

ページ範囲:P.986 - P.987

 理学療法において,脳卒中であれば「麻痺側と非麻痺側」,運動器疾患であれば,「術側と非術側」というように常に障害側(術側)と非障害側(非術側)を比較し,左右対称をめざした治療が実施されることは少なくない.しかし,左右完全対象が最良であるのだろうか.

 本特集では非対称性動作を「必ずしも悪いものではない」という視点で捉え直し,新たなる理学療法実践のきっかけにしていただきたい.

力学的視点からみた非対称性の意義

著者: 水谷康弘

ページ範囲:P.988 - P.993

Point

●物体を安定的に制御するには力学的な力の釣り合いに加えてエネルギーの安定性を評価し,どのように「非対称性を加えるか」の視点をもつ

●外部刺激に対する応答を非対称にすることで,加えられたエネルギーを効率よく用いることができる

●幾何形状もしくは物質的な非対称性を考えることで非対称性を生み出すことができる

解剖学的視点からみた非対称性の意義

著者: 白鳥秀卓

ページ範囲:P.994 - P.998

Point

●内臓器官の多くは,解剖学的形態が左右非対称である

●解剖学的形態の左右非対称性が異常でも胚性致死とならないが,機能的にも左右非対称である心臓の発生が異常になると生後すぐに致死となる

●限られた体内空間に多くの器官を配置するために左右非対称になったと考えられるが,証明することは難しい

左右対称の歩行動作を生み出す神経基盤—歩行障害に表れる非対称性をどう捉えるか?

著者: 河島則天 ,   志水宏太朗

ページ範囲:P.999 - P.1003

Point

●歩行中の身体動作は,重心移動とともに体幹を軸として左右体肢が対称的に繰り返される特性をもつ.歩行における四肢の協調動作は神経系の制御に加えて動的安定性を保つための力学的作用により実現される

●神経障害,整形疾患,痛みの発現による歩行動作の破綻は,不可避に歩行動作の非対称性を生ずる

●障害に伴う機能低下をもちながらも可能な限り安定した,効率のよい歩行動作の習得をめざすうえでは,残存機能を考慮した適正範囲の代償動作の獲得をめざすことが重要となる

非対称性からみた健常者の歩行動作の特徴

著者: 平田恵介 ,   塙大樹 ,   金村尚彦

ページ範囲:P.1004 - P.1008

Point

●歩行の非対称性の複雑性:歩行の非対称性はさまざまな要因により影響され,異常な左右差かどうかを判断する難しさがある

●非対称性の定量方法:歩行の非対称性を評価するためには,いくつかの定量方法が存在し,それらを適切に選択し,外れ値の確認と結果の解釈に留意する必要がある

●偏側性の重要性:歩行中の偏側性は特異的な非対称性であり,健常者の歩行にも存在する.これを理解することが臨床場面での疾患者の歩容評価に重要である

非対称性からみた健常者の立ち上がり動作の特徴

著者: 鈴木誠 ,   吉田高幸 ,   我妻昂樹

ページ範囲:P.1009 - P.1014

Point

●健常者の立ち上がり動作をマクロなレベルでみれば,左右対称的でエネルギーコスト最小の原理に従う

●健常者の立ち上がり動作をミクロなレベルでみれば,運動機能や動作条件に依存した左右の非対称性が必ず存在する

●健常者の床からの立ち上がり動作においてもエネルギーコスト最小の原理が働き,非対称性動作を選択している

最適な非対称性歩行動作の獲得をめざした理学療法—運動器疾患

著者: 南角学 ,   河野拓巳 ,   黒田隆

ページ範囲:P.1015 - P.1020

Point

●非対称性歩行では歩行中の重心移動を円滑に行うことができず,歩行効率の低下を招くことから治療の対象となる

●変形性股関節症では非対称性歩行によって股関節への負荷を軽減し,痛みを回避することで日常生活での活動量を維持している可能性がある

●人工股関節により股関節の機能・構造的な改善が得られると,歩行効率や身体機能の向上のためには対称性の歩行パターンを獲得することが必要となる

最適な非対称性歩行動作の獲得をめざした理学療法—中枢神経疾患

著者: 荻原啓文

ページ範囲:P.1021 - P.1024

Point

●歩容改善も理学療法の選択肢の1つだが,患者の全体像を把握したうえでいくつかの選択肢から患者と協働で決定されるべきである

●歩行能力を把握するためには,Academy of Neurologic Physical Therapy(ANPT)の臨床実践ガイドラインで紹介されている歩行とバランスに対するコアアウトカムセットが有用である

●最適な非対称性歩行動作の獲得とは,重症度や自立度など全体像を加味した歩行能力に優先順位をつけて介入した結果である

最適な非対称性立ち上がり動作の獲得をめざした理学療法—運動器疾患

著者: 井原拓哉

ページ範囲:P.1025 - P.1030

Point

●変形性膝関節症患者では,疼痛回避のための代償戦略として左右非対称な動作を呈する

●変形の進行抑制のためには,運動戦略に鑑みて力学的負荷の軽減に資する介入策の策定を図る必要がある

●障害部位に限局せず,心理的・環境的・機能的拘束要件を明確にし,介入対象に据える必要がある

最適な非対称性立ち上がり動作の獲得をめざした理学療法—脳卒中片麻痺

著者: 谷内幸喜

ページ範囲:P.1031 - P.1037

Point

●脳卒中片麻痺者の立ち上がり練習法は,麻痺側下肢への荷重増加を促すのが一般的な見解と考える.今回,非麻痺側優位の立ち上がり動作練習によって,最適な非対称性立ち上がり動作の獲得をめざすことの必要性に迫ってみた

●脳卒中片麻痺者における立ち上がり動作のパターンを,立ち上がり動作時における上方移動開始時の重心線と足圧中心との位置関係から判断した分類法を提案する

●「脳卒中片麻痺者の非麻痺側優位の立ち上がり動作は,立ち上がり動作能力低下を意味している」,「脳卒中片麻痺者の麻痺側下肢への荷重の困難性から生じる不安定性を非麻痺側優位の立ち上がり動作戦略で補っている」どちらも正しい相反する見解に対し,後者の適応群を示してみた

Close-up 小型カメラの理学療法活用

片麻痺歩行の評価を目的とした臨床指向型歩行評価システムの開発

著者: 春名弘一 ,   昆恵介 ,   稲垣潤

ページ範囲:P.1040 - P.1046

はじめに

 理学療法においては,異常動作(逸脱動作)そのものが評価・治療対象となるため,動作の客観的な評価が重要である.特に歩行動作は,臨床で理学療法士がかかわる機会も多く,さまざまな評価手法が開発されている.

 歩行動作を定量的に評価する手法としては,① 三次元動作解析装置などの光学式モーションキャプチャを用いて計測する手法,② 加速度・ジャイロセンサなどのウェアラブルセンサを用いて計測する手法,③ 圧センサや光学式分析装置を床に設置して歩行の時間・距離因子を計測する手法などが確立されている.

 表に ①〜③ の代表的な歩行評価手法とその特徴を示した.計測精度が高く,計測空間の制約がなく,計測準備や解析が容易で,体表マーカやセンサなどの装着の必要性がなく,可搬性が高いといった,計測時の要求をすべて満たす手法は存在しないのが現状である.そうした理由もあって,リハビリテーションの臨床現場においてこれらの計測器は十分には普及しておらず,歩行動作の評価は観察による主観的評価や歩行パフォーマンステストによる効果判定が主となっている1,2)

 筆者らはこれまでに,脳卒中片麻痺者の下肢装具の開発3〜5)や効果的な装具療法6,7)について研究を行ってきた.片麻痺歩行における下肢装具療法の効果判定としては,歩行速度や歩行耐久性といった歩行パフォーマンスによる評価がよく用いられている.一方で,片麻痺歩行の特徴は左右の非対称的な歩行パターン(歩容)にあり,片麻痺者の歩容は歩行速度の影響を受ける8)ことが明らかになっている.そのため,片麻痺歩行の評価は歩行パフォーマンスと歩行パターンのどちらか一方のみでは不十分であり,両者を包括的に評価することが重要な課題であると考えている.

 筆者らは,臨床現場における片麻痺歩行の客観的かつ包括的な歩行評価を支援する目的で,新たなシステムの開発を行っている.具体的には,市販の小型カメラ1台で撮影した歩行動画から人工知能(artificial intelligence:AI)技術を活用して,歩行の時間・距離因子を検出し,歩行パフォーマンスと歩行パターンのデータを同時に算出する臨床指向型歩行評価システムである.

 本稿では,開発中のシステムの概要について紹介し,その他の小型カメラの理学療法活用例として,理学療法分野でも活用事例の多いオープンソースソフトウェアであるOpenPoseとOpenCapに触れる.

連載 とびら

二つの三猿

著者: 金子秀雄

ページ範囲:P.983 - P.983

 今年,2年ぶりに帰省した.前回はまだpolymerase chain reaction(PCR)検査が望まれる時期であった.マスク装着で過ごし,飛沫防止パネルに阻まれた会話は途切れがちとなり,同じ言葉がたびたび繰り返されていた.今回はマスクを装着することもなく,コロナ禍前のように過ごすことができた.当然,飛沫防止パネルもなかったのだが,同じ言葉はたびたび繰り返されていた.重ねた歳は無視することができなかった.

 少し時間があったので昔を懐かしんで秩父神社に立ち寄った.高校時代は何度となく通りすぎ,人生の節目にお世話になった神社である.駐車場の入口はどこ? と聞かれ,沈黙したまま神社を一周.入口を見つけると昔の記憶が蘇ってきた.その記憶を確かめるように風景を眺めながら階段を上ると,記憶とは少し違う本殿が佇んでいた.4年間をかけて本殿は改修されていた.

視覚ベースの動作分析・評価・第5回

肩関節—外傷性肩腱板断裂保存療法において他部位からの介入が奏効した症例

著者: 北山達也

ページ範囲:P.977 - P.979

症例紹介

年齢 60歳台.

性別 男性.


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年9月30日).

運動療法に活かすための神経生理(学)・第3回

下肢の運動により痙縮を有する脳性麻痺者の神経生理学的抑制は生じるか?

著者: 安部千秋

ページ範囲:P.1047 - P.1050

はじめに—脳性麻痺の痙縮と運動療法

 痙縮は上位運動ニューロン症候群の陽性徴候の1つであり,脳性麻痺者の約80〜90%がこの徴候を有している1).痙縮は筋のスティフネスや短縮をもたらし2),転倒のリスクにもつながる3).また,動作そのものの妨げになることも多く,リハビリテーションによる介入が重要となる.

 脳性麻痺の痙縮に対する治療として,通常のリハビリテーションでは痙縮筋のストレッチを行うことが多く,そのほかにはボツリヌス療法,髄腔内バクロフェン投与などの薬物療法も用いられている.また,ボツリヌス療法と運動療法の併用も推奨されている4)

 特に下肢の痙縮を軽減させる運動療法として,サイクリング運動やトレッドミルトレーニングが挙げられる.脳性麻痺者からこれらの運動後に「身体の力が抜けて動きやすくなった」などの発言が聞かれることも多く,随意運動後に痙縮が軽減していることを臨床的に感じとれる場面は少なくない.このような場面に限らず,リハビリテーションにおいては痙縮の変化を見逃さず,適切に評価することが欠かせない.

 本稿では,痙縮のメカニズムと評価の方法を概説するとともに,痙縮を軽減させる運動の1つである下肢のサイクリング運動がもたらす神経生理学的変化について,最新の知見を交えて紹介する.

今月の深めたい理学療法周辺用語・第9回

超音波エラストグラフィー

著者: 中村雅俊

ページ範囲:P.1052 - P.1053

はじめに

 超音波エラストグラフィーの技術が開発されて以来,現在まで多くの臨床場面で使用されており,一部の領域では診療報酬が加算されるようになった.超音波エラストグラフィーについて,一度は聞いたことがあるという読者も多いだろう.本稿ではその基本的な原理を紹介するとともに理学療法における有用性についても概説する.

理学療法士のための「money」講座・第9回

生命保険は必要か—掛け捨てはもったいない?

著者: 細川智也

ページ範囲:P.1055 - P.1059

はじめに

 皆さん,生命保険には加入していますか? この日本において,実に90%弱の世帯の方が生命保険に加入していると言われています1).日本特有なのか,「お守り」感覚で生命保険に加入している話もよく聞きます.しかしながら本来は,そういった精神的なものではなく,生命保険の機能,その中身を理解することが大事です.とは言え,精神的な側面も大事ですし,最も大事なことは実はほかにあります.いったいどういうことなのでしょう? ぜひ本稿を最後まで読んでください.

 Social networking service(SNS)が当たり前になった昨今,生命保険に関してさまざまな情報が飛び交っていますが,皆さんにはご自身の考えのもと,適切な判断ができるようになっていただけたらと思っています.ただ,生命保険の詳細は非常に複雑であるため,専門家のアドバイスを求めることをお勧めします.

臨床実習サブノート 「どれくらい運動させていいかわからない」をどう克服するか・第6回

—中枢神経疾患—回復期脳卒中患者に対する筋力増強運動

著者: 大田瑞穂

ページ範囲:P.1060 - P.1064

脳卒中患者の筋力増強運動

 脳卒中患者の上肢および下肢筋力は同年代の対象と比較して30〜50%と報告されており1〜4),筋力低下を呈する症例は多いです.また,この筋力低下は歩行速度の低下や社会参加の制限と関連しているため5,6),多くの理学療法場面で筋力増強運動を実施する機会があります.一般的に筋力増強運動では対象者の筋力に合わせた漸進的抵抗トレーニング(progressive resistance training:PRT)を実施することが推奨されていますが,運動麻痺を呈して筋力低下の著しい脳卒中患者ではPRTの実施が難しいです.運動麻痺によってPRTの実施が難しい場合は,電気刺激装置や体重免荷トレッドミルを使用した抵抗負荷を与えない反復練習を実施します.本稿では脳卒中患者の機能レベルに適したPRTと反復練習による麻痺側下肢の筋力増強運動を解説します.

私のターニングポイント・第56回

Escape Your Comfort Zone

著者: 南波祐介

ページ範囲:P.1051 - P.1051

 現在,私は理学療法士として,アスレティックトレーナー(以下,AT)として活動しています.理学療法士の資格は2000年に,ATの資格は2015年に米国の大学院を卒業と同時に試験をパスし同国の公認AT(以下,BOC-ATC)を取得しました.BOC-ATCはスポーツ医学の医療資格者です.理学療法士免許を取得して10年,スポーツ医学を学ぶため熱望していた米国留学は,想像を絶する困難との闘いでした.これが,私のいくつかあるターニングポイントの1つです.

 日本人が米国の大学または大学院に入学するとき,TOEFLという英語能力試験の入学基準を満たす必要があります.大学院入学においては,全受験者がGREという試験の基準点を満たすことが要求されます.ちなみに,BOC-ATCを取得するには,修士号の学位を求められます.私は高校時代,理数系科目が苦手で受験勉強を避けてきましたが,理学療法士養成校受験では当然避けられず,予備校へ2年も通うことになりました.

My Current Favorite・29

地域づくりによる介護予防をめざして

著者: 倉地洋輔

ページ範囲:P.1054 - P.1054

現在の関心事は?

 私の現在の関心事は「地域づくりによる介護予防」です.これまで理学療法士として地域に出向き,筋力トレーニングや関節の痛みの対処法などを指導するなかで,本当に地域住民の役に立っているのか? と悩んでいた時期がありました.私自身,伝え方・資料づくりなど長年工夫してきましたが,自宅で継続して介護予防に取り組む人は決して多くはありませんでした.しかし,この悩みを解決する糸口が「地域づくりによる介護予防」という新しい考え方にありました.

症例報告

高度肥満を伴う両側人工膝関節全置換術後症例に対し吊り下げ型体重免荷式歩行器を用いた理学療法を実施した1例

著者: 髙瀬慶太 ,   深田亮 ,   村田淳

ページ範囲:P.1065 - P.1069

要旨 人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)の術後成績の不良因子として肥満がある.高度肥満を伴う両側TKA術後症例に対し,吊り下げ型体重免荷式歩行器(以下,免荷式歩行器)を用いて理学療法を実施した1例を報告する.症例は,末期破壊性両側変形性膝関節症に対し両側TKAが施行された40歳台の女性である.術後は荷重時痛および下肢筋力低下のため歩行が困難であった.また,高度肥満により従来の一般的な理学療法で用いられる前腕支持型歩行器の使用が困難であったため,転倒予防および疼痛増悪の予防を目的に術後早期から,免荷式歩行器を用いた歩行練習を中心に実施した.その結果,転倒および疼痛増悪を認めずに連日歩行練習を実施することができ,転院時に両側にロフストランド杖を用いた歩行が自立した.本症例は免荷式歩行器を用いることで,有害事象なく術後早期から十分な歩行練習が実施可能となり,歩行機能を再獲得できた.

ひろば

理学療法管理学

著者: 奈良勲

ページ範囲:P.1071 - P.1071

 最新の理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則(カリキュラム)は,2020年4月から施行されている.総単位数は101となり,そのなかに理学療法管理学が2単位新設された.その主な内容は職場管理であるが,理学療法教育および職業倫理も含まれている.1965年に日本に理学療法士が誕生して以来,理学療法士の活躍の場は,保健・医療・福祉領域および地域包括ケアシステムへと拡がり,多様性に富む業務が期待されている.よって,理学療法士の養成過程で理学療法管理学の授業科目が新設されたことは意義のあることだと思える.

 管理(学),マネジメントに関する書籍は数え切れないほどあるが,本稿ではM.リーサック,J.ルース1)による『ネクスト・マネジメント』で記述されている「創発型マネジャー12の心得」を紹介したい.

臨床のコツ・私の裏ワザ

使ってみようチルトテーブル—意外と使われない便利な道具を使うコツ

著者: 井上裕貴

ページ範囲:P.1072 - P.1073

 新しい食洗器や衣類乾燥機を導入して,家事が劇的に楽になった経験はないだろうか.便利な道具を積極的に使うことで,短時間で,楽に,より高い成果を上げることができる.

 多くのリハビリテーション室にあるチルトテーブル(起立台)は,脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)(Ⅱ)の施設基準の項目にも含まれており,言うなれば「国が認めた便利な道具」である.にもかかわらず利用していない理学療法士が多いのが現状であり,もったいなく感じる.そこで,筆者の使用例を紹介したい.

書評

—荒木 秀明(著)—「非特異的腰痛の運動療法[Web動画付] 第2版—病態をフローチャートで鑑別できる」

著者: 東裕一

ページ範囲:P.1039 - P.1039

 腰痛および体幹機能障害は,理学療法士が臨床において頻繁に直面する課題の一つである.理学療法士の特殊性は人の運動を扱うことにある.そのため上肢の障害に対する肩甲骨の位置の修正,下肢の障害に対する理想的な荷重の回復および初動の力源という意味でも,腰部骨盤帯もしくは体幹に対する運動療法は基本となることが多い.腰部に対する運動療法は,疾患にかかわらず,ADLの拡大に向けた理学療法の根幹になると言える.

 本書では,腰部骨盤帯に関して,構造と機能および評価から解説されている.そのため,書名にある非特異的腰痛だけではなく,多くの腰部疾患および体幹機能についての基本事項が記載されている.宮本重範氏の教えが生かされ,現在では「医療面接」と言われることも多い「問診」および「視診」を重視しながら,自動運動時の痛みの発現もしくは制限からフローチャート(アルゴリズム)が展開されている.医療面接の経験が少ない理学療法士にとっては,「問診」の項目が参考になるであろう.

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目次

ページ範囲:P.984 - P.985

動画配信のお知らせ

ページ範囲:P.1008 - P.1008

「作業療法ジャーナル」のお知らせ

ページ範囲:P.1014 - P.1014

バックナンバー・次号予告

ページ範囲:P.1076 - P.1077

編集後記

著者: 加藤浩

ページ範囲:P.1078 - P.1078

 9月号をお届けします.今月の特集は,「最適な非対称性動作を考える」です.理学療法を実施する際,患側機能は健側を基準に評価され,健側の動きに近づけることが治療目標とされることは少なくないと思います.しかし,解剖学的にみた場合,左右対称にみえても,注意深く観察すると左右非対称の形態であることが多いことに気づきます.また,日常生活活動においても利き手(足),非利き手(足)があるように左右でパフォーマンスや筋出力などに違いが存在します.これらのことから考えると,ヒトの動作においても,効率的な非対称性動作が存在し,それは,動作を遂行するうえで重要な役割の一つである可能性があります.本特集では,さまざまな視点から非対称性動作の特徴や,治療を進めるうえでのメリット,デメリットなどについて解説していただきました.

 Close-upでは,「小型カメラの理学療法活用」にフォーカスを当てました.今回は,人工知能(AI)技術を活用した小型カメラを用いた動作分析の精度や,利点,欠点などわかりやすく解説していただきました.これらの技術は,今後,ますます進展していくものでもあり理学療法への活用が大いに期待されるところです.巻頭カラー連載でとり上げている「視覚ベースの動作分析・評価」なども,情報をAIに学習させることで,将来的にはAIベースである程度の分析が行える時代が来るかもしれません.その他,連載企画の内容も非常に興味深く,読み応えのある内容となっています.

読者の声募集

ページ範囲:P. - P.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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