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雑誌目次

雑誌文献

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩59巻5号

2007年05月発行

雑誌目次

特集 脳画像最前線

マルチスライスCTの神経疾患への応用

著者: 片田和廣

ページ範囲:P.451 - P.457

はじめに

 CTはその登場以来,中枢神経系の診断に大きな役割を果たしてきた。MRIの登場後一時的にその中心的役割を失いつつあったが,ヘリカルスキャンの登場とともに再び臨床的重要性が増大した。その最大の利点は,それまでのスライスごとではなく,臓器全体をボリュームデータとして得ることにあった1)。これにより断面変換(multiplanar reconstruction:MPR)や各種の三次元画像処理が可能となったのである。さらにその後のマルチスライスCTの開発により,その臨床応用は再び拡大した。本稿では,最新のマルチスライスCTの開発状況と,その中枢神経系への応用について報告する。

光トポグラフィーによる脳機能の計測

著者: 渡辺英寿

ページ範囲:P.459 - P.466

はじめに

 脳の活動している状態を生きたまま計測することは長い間,動物でしか行うことができなかったが,近年のテクノロジーの急速な発展に伴って,ヒトにおいても現実的なものとなってきた。その嚆矢はpositron emissiontomography(PET)である。この技術により,活動しているヒトの脳の動態を外部から観察する方法が開かれ,非侵襲的脳機能マッピング法として開花した1)。その後,1980年代にfMRI が臨床応用されるに及んで,非侵襲的脳機能マッピング法は一気に広く用いられるようになった。これらは,いずれも神経活動に伴って起こる局所の脳血流の変化を捉えようとしたものである。本稿で述べる光トポグラフィーは近赤外線スペクトロスコピー(NIRS:near infrared spectroscopy)を用いたもので,脳機能を継続的にかつ簡便にマッピングを行う目的で開発された。現在この装置は空間分解能こそ20~30mmにとどまるが,脳の活動状況をほぼリアルタイムに連続計測することが可能である。また,脳波計と同じ程度の大きさであり,容易に移動できるので,病室や,診察室などでの計測や,運動中の計測まで可能で,さらに頭部が多少動いても計測できるため,日常的な環境下で作業しているときの脳の活動を観察することができる点に大きな特徴がある。

神経疾患と拡散tractography―その応用と限界

著者: 青木茂樹 ,   増谷佳孝 ,   阿部修

ページ範囲:P.467 - P.476

はじめに

 脳白質においては水分子の拡散に方向性がある。脳のMRI 拡散強調像を適切に解析し,コンピューター・グラフィックスにより三次元的に表現するとあたかも脳解剖図のシェーマのような特定の白質路の拡散tractographyを得ることができ1,2),その白質路の(拡散情報からみた)線維の密度や2点間の連絡の強さなどの定量値も算出できる。

 拡散テンソルに代表される拡散解析は今までin vivoに観察することが困難であった主要脳白質路を描出し,それを定量的に評価できるという他の方法にない特徴をもつ3-8)。拡散テンソルtractographyは臨床的には皮質脊髄路などの主要白質路と脳腫瘍9-11)や脳梗塞などとの立体的関係を三次元的に描出することができる点(Fig.1)が高く評価されている。手術のアプローチの決定や脳梗塞の予後予想などでの有用性が報告され12,13),手術ナビゲーション14,15)や定位放射線照射と組み合わせた報告16)も出てきている。

 こういった目に見える病巣と白質路の立体的関係のみならず,従来の方法では描出されなかった白質の微細な変化を捉えようという研究も急速に進んでいる17)。まずALS(amyotrophic lateral sclerosis)のように特定の白質路の障害が強く予想される疾患で異常が検出可能であることが確認され18,19),白質のdisconnectionが病因として注目されている統合失調症での報告も相次いでいる20)。疾患だけでなく,正常での線維連絡や白質のmaturation,加齢変化の検討もなされている。大脳皮質と視床との線維連絡などの検討には,多軸の撮像とシミュレーションを用いるprobabilistic tractographyが有用との報告もあるが,錐体路や鉤状束,帯状束,脳弓などの比較的太い,あるいは独立した白質路に関しては,拡散テンソルによる解析でも大きな差は出ないようである21)

 ここでは筆者らのグループでの経験を中心に拡散tractographyの現状を述べ,最後によく聞かれる質問とその回答をまとめてみた。

高磁場MRIと神経疾患

著者: 松末英司 ,   小川敏英

ページ範囲:P.479 - P.485

はじめに

 わが国では,2003年2月に3 tesla(以下,T)MR装置が頭部領域に限って薬事承認を取得したが,2005年に入り全身用装置としての薬事承認が得られた。2005年11月には複数メーカーの3T MR装置の薬事承認が得られ,今後3T MR装置は臨床機として主力となることが予測される。鳥取大学では3T MR装置が導入されて約3年が経過し,現在までに10,000例以上の頭部領域の臨床例を経験している。この経験を基に,3T MRIにおけるそれぞれの撮像法の特徴をふまえて,神経疾患の診断に際しての臨床的有用性を中心に,問題点を含めて概説する。

神経疾患とSPECT ― easy Z-score imaging system(eZIS)による解析

著者: 松田博史

ページ範囲:P.487 - P.493

はじめに

 脳のsingle photon emission computed tomography(SPECT)検査は,そのほとんどが脳血流を評価するものであるが,positron emission tomography(PET)に比べ,空間分解能および定量性に劣るという欠点を有する。その空間分解能は8mm前後であり,この10数年,ほとんど改善していない。定量性の点で,SPECTの散乱線補正に関しては種々の方法がルーチンで用いられている。

 一方,吸収補正に関しては,SPECT装置と一体となったCT 装置を用いて吸収補正を行う方法が今後普及する可能性があるが,通常は脳を一様の楕円吸収体とみなすChang法が用いられており,transmission線源を用いるPETに比べ不正確な吸収補正となっている。しかし,脳血流SPECTは種々の精神・神経疾患に保険適用されており,PET装置に比較すると普及度は極めて高いことから,日常臨床に広く用いられている。

 脳血流低下が顕著な脳血管障害例では,SPECT像の視覚評価のみで十分なことが多いが,精神疾患や初期の変性疾患では,血流異常が軽微なため視覚評価が困難なことが多い。この視覚評価を補うものとして最近多用されている手法が,画像統計解析法である。本稿では,われわれが開発した画像統計解析法であるeasy Z-score imagingsystem(eZIS)の脳血流SPECTへの応用について述べる。

神経疾患のFDG-PETと神経伝達機能イメージング

著者: 百瀬敏光

ページ範囲:P.495 - P.501

はじめに

 Positron emission tomography(PET)の特徴として(1)分解能が良い,(2)定量性に優れている,(3)標識薬剤を柔軟に選択できる,(4)繰り返し測定が可能,という利点が挙げられる。これらはSingle photon emission computedtomography(SPECT)に優っている点であり,脳局所で何がどの程度起こっているかを定量化し,画像化する装置としては最も信頼に足るものである。なかでもPET の最も優れた点は,さまざまな放射性薬剤の標識,合成により,脳機能の多種多様な生理,生化学的プロセスを画像化できることである。脳機能を正常に維持するためには,脳内の各構成要素がバランスよく活動する必要があり,その活動を支える基本的要素である血流,酸素代謝,糖代謝,神経伝達機能を定量的に測定できることは,PETの最大の特徴といえる。現在臨床利用されている主なPET用放射性薬剤をTable1に示す。現在の臨床PETでは,おおむね病態別に適応が決まっており,血流,酸素代謝,糖代謝,アミノ酸代謝,ドーパミン,セロトニンなどの神経伝達機能系の測定を目的に応じて適宜組み合わせて,検査を施行している。PETの神経疾患への利用法の実際について概説する。

総説

骨髄間葉型細胞を用いた筋ジストロフィーへの再生医療の可能性

著者: 出澤真理

ページ範囲:P.503 - P.508

はじめに

 筋ジストロフィーなど筋肉が変性する遺伝性の筋肉変性疾患に対しては,遺伝子治療や薬剤投与など,さまざまな方法が試みられており,その1つとして細胞移植治療法の開発も取り組まれてきた。特に筋肉に含まれており増殖可能な筋肉のもととなる筋衛星細胞の分離が研究され,同時にES細胞,あるいは胎児の細胞から筋肉細胞を誘導する方法が検討されてきた。これらの方法により大きな進歩がもたらされ,細胞移植治療に大きな可能性が見出されつつある。ただし移植に必要な細胞数確保が難しいこと,さらに死亡胎児を必要とすること,あるいはこれらの細胞を移植するに当たっての安全性や倫理問題をめぐっての問題点も指摘されている。

 今回筆者らの研究グループは,骨髄間葉系細胞から効率よく骨格筋系譜の細胞を誘導する方法を開発した。この細胞の持つメリット,今後の問題点などを含め,筋細胞移植治療の可能性について考察したい。

皮質脊髄路損傷後の手指の巧緻運動の機能回復メカニズム―霊長類モデルでの研究

著者: 西村幸男 ,   伊佐正

ページ範囲:P.511 - P.520

はじめに

 箸で刺身をつまんだり,折り紙を折ったりといったような器用な運動ができる動物は霊長類であるヒトのみである。それが実現できるのは,ヒトが5本の指を持ち,それら1本1を独立に制御できるためである。しかしながら,脳梗塞,脳内出血や交通事故などで脊髄より上位で皮質脊髄路(corticospinal tract:CST注1)に障害が生じた場合,障害と反対側の手指に麻痺が生じ,5本の指を独立して動かすといった,手指の運動の巧緻性が失われてしまうことが大きな問題である。このようなCSTの損傷による巧緻運動障害の動物実験モデルとしては,古典的なLawrenceとKuypers19)の実験が有名である。彼らはアカゲザルにおいて延髄レベルで錐体を両側性に切断すると,到達運動と5本の指を同時に同じ方向に動かし,まとめて物をつかむといった運動(power grip)はある程度回復しても,個々の指を独立して動かす精密把持(Fig.1A)のような巧緻運動は永久に失われてしまうと報告した(Fig.1B)。

 CSTは系統発生学的に新しい経路で,霊長類において大きく発達を遂げ,脊髄運動神経細胞(spinal motoneuron:MN)との直接結合(単シナプス性結合)をつくるようになる(Fig.1C)。そして手指の独立制御や巧緻性も霊長類において大きく発展を遂げる。またさまざまな霊長類種の間で比較を行うと,この直接結合の発達と手指の巧緻性の間には相関があるとされている4,9)。これらの観察結果と上記のLawrenceとKuypersら19)の研究をはじめとする損傷実験の結果から,一般には錐体路が運動ニューロンと直接結合することが,手指の巧緻性の原因であると考えられてきた。

 しかし,LawrenceとKuypers19)自身がその論文の中で書いているように,彼らの損傷は「CSTからMNないしは脊髄介在ニューロン系注2)に対する入力を遮断したもの」であって,必ずしもMNへの直接投射を遮断しただけではない(Fig.1D)。したがってCST から脊髄介在ニューロン系への経路が重要な役割りを果たしていることが想像されるが,これまで霊長類でのCSTの運動制御に対する機能に関する研究は,そのMNへの直接経路に限られており,脊髄介在ニューロン系への投射がもつ機能については必ずしも注意が払われてこなかった。

原著

脳卒中患者における誤嚥の有無と臨床症状の比較検討

著者: 前島伸一郎 ,   大沢愛子 ,   高城文彦 ,   黒住司尾子 ,   太田信子 ,   熊倉勇美

ページ範囲:P.521 - P.526

はじめに

 不顕性誤嚥(silent aspiration:SA)は,咳やむせなどの徴候なしにみられる誤嚥であり,Amberson1)によって最初に報告された。SAは嚥下障害の26.7~58.0%にみられるとされているが,疾患,年齢,時期,評価法などが報告者によって異なる2-6)。近年,嚥下造影検査(videofluorography:VF)の普及によって,摂食・嚥下におけるSAを容易に発見できるようになった。また,最近は,VFや喉頭鏡検査(videoendoscopy:VE)を用いずに簡便に誤嚥リスクを判断できるベッドサイドでのスクリーニング検査が普及した7,8)

 摂食・嚥下に影響を及ぼす要因としては,年齢,覚醒レベル,認知機能,身体能力,肺炎の既往などが重視されている9)。しかし,これらの臨床症状やスクリーニング検査とSAとの関係は明らかではない。本研究では,VFでSAを確認できた症例に対して,その要因についての検討を行った。

症例報告

急性期の大量ステロイド投与が奏効した抗グルタミン酸受容体抗体陽性の非ヘルペス性脳炎の1例

著者: 和田裕子 ,   高橋竜一 ,   柳原千枝 ,   西村洋 ,   高橋幸利

ページ範囲:P.527 - P.532

はじめに

 非ヘルペス性辺縁系脳炎(acute limbic encephalitis: ALE)は,楠原ら1)により提唱された,頭部MRIで辺縁系に病変を認め,単純ヘルペス感染や傍腫瘍性によるものは否定的である原因不明の急性脳炎である。発熱,意識障害で発症し,後遺症として健忘症候群を認めることが多いとされている。

 抗グルタミン酸受容体(glutamate receptor:GluR)ε2抗体は,Rasmussen脳炎で高率に陽性であることが知られているが2),非ヘルペス性急性脳炎でも陽性を示すことが報告されており,その病態には自己免疫学的機序が想定されている3-6)

 われわれは,急性期の血清・髄液中に抗GluRε2およびδ2抗体を検出した非ヘルペス性辺縁系脳炎の1例に対し,早期からの大量ステロイド投与を試みた結果,奏効し,しばしば問題となる記憶障害も急速に回復し,早期の社会復帰が可能であった。今後の治療を考えるうえで重要な症例と考えられたので報告する。

いわゆる『他人の手徴候』(拮抗失行)を呈した多発性硬化症の1例

著者: 小長谷正明 ,   酒井素子

ページ範囲:P.533 - P.536

はじめに

 自分の意思に反して非利き手が勝手に行動し,患者には他人の手のように感じられる,いわゆる『他人の手徴候』は,前頭葉内側面,脳梁,視床後外側腹側核およびその周辺などの病変で出現することがある1-3)。このうち,利き手による随意運動や随意的意図に触発されて生じる,非利き手の異常行動である拮抗失行は脳梁病変によって惹起されるが4,5),日常の臨床で目にすることは極めて少なく,また大部分が血管障害例である。一方,多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は脳梁になんらかの障害を認める例が多いとされているが6-8),拮抗失行などの脳梁離断症候群の報告は稀である9-11)。筆者らは右手の随意運動時に左手の拮抗失行を示し,画像にて脳梁病変を認めたMS患者を経験し,MSの脳梁障害を考えるうえで貴重と考え,報告する。

仙髄に至る広範病変を認めた中枢神経系アミロイド・アンギオパチー関連肉芽腫性血管炎の1剖検例

著者: 武田景敏 ,   辰己新水 ,   山下真理子 ,   山本徹

ページ範囲:P.537 - P.543

はじめに

 中枢神経系に限局する肉芽腫性血管炎(granulomatous angiitis of CNS:GANS)1-5)とアミロイド・アンギオパチー(cerebral amyloid angiopathy:CAA)6-9)の2つの病態が関連すると考えられる症例が知られてきた10-19)。われわれはCAAが関連した中枢神経系の肉芽腫性血管炎で広範囲に病変を認めたほか,大脳皮質にβ-amyloid(Aβ)を伴わないtau沈着を認めた症例を経験したので報告する。

連載 神経学を作った100冊(5)

Ueber die multiplen Fibrome der Haut und ihre Beziehung zu den multiplen Neuromen 1882

著者: 作田学

ページ範囲:P.544 - P.545

 フリードリッヒ・ダニエル・フォン・レックリングハウゼン(1833-1910)は,ウイルヒョウの最も優れた弟子の1人だった。そしてウイルヒョウの恩師が,ヨハネス・ミュラーということになる。彼は31歳でケニヒスベルクの病理解剖学の教授となり,39歳でストラスブルク大学の病理学主任教授に招聘され,生涯をそこで過ごした。この間に書いたモノグラフが上記の書物であり,彼の名前を今に伝えることになった。

 現在では神経線維腫症1型(NF1)がRecklinghausen病と呼ばれ,神経線維腫症,カフェオレ斑,虹彩結節を特徴とすることが知られている。そしてNF1は常染色体優性遺伝で,遺伝子座17q11.2にコードされるタンパク質neurofibrominは癌抑制遺伝子として機能すると考えられている。今日,神経線維腫症は8型まで知られている。

書評

「神経内視鏡手術アトラス」―石原 正一郎,上川 秀士,三木 保●編集 フリーアクセス

著者: 冨永悌二

ページ範囲:P.478 - P.478

 このたび,石原正一郎先生,上川秀士先生,三木 保先生らが編集した「神経内視鏡手術アトラス 第1版」が発売された。神経内視鏡は,歴史は古いものの脳神経外科領域における診断・治療技術としては片隅に追いやられていた感がある。しかし新たな内視鏡機器の開発や技術の洗練によって成熟し,今やある種の閉塞性水頭症では治療の第一選択肢となるほど重要なmodalityとなりつつある。本書はこのような流れの中にあって誠に時宜を得た企画であり,神経内視鏡を志す脳神経外科医,第一線で神経内視鏡治療に携わっている脳神経外科医のみならず,一般の脳神経外科医にとっても大変有用な著書である。

 第一章「歴史と基礎知識」では神経内視鏡の歴史がわかりやすく紹介されるとともに,従来の著書では軽視されがちであったdeviceとしての神経内視鏡に関する解説がなされている。軟性鏡と硬性鏡それぞれの特色や利点にとどまらず,最近登場した脳室内ビデオスコープについても従来の軟性鏡との違いについて解説している。さらに現在の神経内視鏡手技において最も問題となる止血操作の際に用いられる凝固因子についても,各製品の作用原理,生体への影響について,わかりやすく述べている。

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あとがき フリーアクセス

著者: 作田学

ページ範囲:P.548 - P.548

 今月号は脳画像の最前線を特集した。片田和廣先生はマルチスライスCTの神経疾患への応用を寄せられた。3D-CT angiographyは,既に脳動脈瘤の診断にはなくてはならない地歩を占めている。大動脈弓部からウイリス動脈輪までの画像が,わずか6.9秒の時間でスキャンできるとは驚きであり,さらに256列面検出器CTによる美しい画像は,今後の応用が期待される。渡辺英寿先生は,光トポグラフィーによる脳機能の計測について書かれた。これは近赤外線を使用し,脳の活動を明らかにするものであり,特にてんかん焦点の同定が興味深かった。青木茂樹先生らは神経疾患と拡散tractographyをご寄稿いただいた。4年ほど前から実用に供されている画像だが,場合によっては息を飲むほど美しい像を提供している。松末英司先生らは高磁場MRIと神経疾患についてお書きになったが,3テスラで1万例以上の症例の蓄積を披露された。特に図3は脳解剖図を彷彿とさせる見事さである。松田博史先生は神経疾患とSPECTについてお書きいただいた。特にご自分が開発され,現在の主流になっているeZISについて,多数例を示された。百瀬敏光先生は神経疾患のFDG-PETと神経伝達機能イメージングについてお書きいただいた。先生のライフワークとも言える領域で,お聞きするたびに進化している様子が目に浮かぶようである。放射線薬剤も主なものだけで,14種類にも及び,特にパーキンソニズムの鑑別診断はすばらしい。

 出澤真理先生は骨髄間葉系細胞を用いた筋ジストロフィーへの再生医療の可能性と題した総説で,新たな治療法の方向を打ち出された。ただし,筋ジストロフィーではジストロフィン遺伝子など,機能を欠失している遺伝子を何らかの方法で補う必要があるとされた。西村幸男先生らには皮質脊髄路損傷後の手指の巧緻運動の機能回復メカニズムという総説をお寄せいただいた。たとえ皮質脊髄路が損傷を受けても,それと平行して下行する経路を合目的的に駆動するリハビリテーションが大切であることをお示しになった。

基本情報

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1344-8129

印刷版ISSN 1881-6096

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