文献詳細
書評
「高次脳機能障害ハンドブック―診断・評価から自立支援まで」―中島 八十一,寺島 彰●編 フリーアクセス
著者: 岩田誠1
所属機関: 1東京女子医科大学・神経内科学
ページ範囲:P.933 - P.933
文献概要
さて,この書評の対象となっている書物が取り扱っているのは,行政用語としての「高次脳機能障害」である。昔から使用されてきた高次脳機能障害の古典的中核病態は,失語,失行,失認であったが,これらの比較的捉えやすい病態を有する人々とは異なり,主に記憶障害,注意障害,遂行機能障害および社会的行動障害などを有する人々の能力障害は,しばしば表面的には捉えがたく,一見健常者との区別がつきにくい。このため,これらの障害を有する人々は,家庭や職場において社会的不利益を受けやすいのにもかかわらず,長らく障害認定や福祉サービスの枠外に置かれてきた。ようやく2001年になり,本書の編者らが中心となって,そのような人々に対する厚生労働省の支援モデル事業が始められ,「高次脳機能障害」を有する人々の実態が明らかにされると同時に,そのリハビリテーションや生活指導,職業訓練への試みが始められたのである。
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