文献詳細
原著
痙性斜頸患者におけるToronto Western Spasmodic Torticollis Rating Scale(TWSTRS)の評価者間信頼性の検討
著者: 梶龍兒1 大澤美貴雄2 柳澤信夫3 TWSTRS評価者間信頼性検討会4
所属機関: 1徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部神経情報医学分野 2東京女子医科大学病院神経内科 3関東労災病院 4参加施設および医師名を本文末に掲載
ページ範囲:P.65 - P.71
文献概要
痙性斜頸は,頸部筋の不随意的な収縮により引き起こされる頭頸部の不随意運動あるいは異常姿勢のことをいう。有病率は,日本では10万人あたり2.85人1),米国では10万人あたり9人2)あるいは30人3)との報告があり,日本よりも頻度は高い。診断基準は「頭頸部の筋緊張異常により頭位の異常を生じる病態」と定義され,日本においては欧米の定義が翻訳されて使用されている。また,治療の第一選択は世界的にボツリヌス毒素療法4-6)とされていることからも,日本と欧米で医療環境に大きな違いはないと考えられる。
痙性斜頸に対する有効な治療薬を開発するために客観的な評価尺度を用いることが重要になっている。痙性斜頸治療の評価尺度として,海外ではToronto Western Spasmodic Torticollis Rating Scale(TWSTRS)7)が治療効果の評価に用いられている。一般に,海外で作成された評価尺度を本邦で使用する場合,日本語への正確な翻訳が必須となるが,原著の意味を忠実に再現する訳語を当てはめることはしばしば困難である。したがって,使用する評価尺度によっては,例えば地域特有の質問などが含まれる場合には,事前にその日本語版の信頼性や妥当性を評価しておくことが重要である。
TWSTRS7)は1994年にConskiとLangによって開発された評価尺度であり,重症度,機能障害度および疼痛度を評価する3つの下位尺度から構成されている。このうち重症度スケールにおける信頼性および妥当性が報告されている。重症度スケールは本尺度の主要な構成要素であり,頭位偏倚の角度や偏倚の持続時間を評価するために用いられる。すなわち海外や日本とで共通した概念である「角度」や「時間」を評価の基準としているため,測定者間における評価の不一致などは少ないと考えられる。しかしながら,本邦では本尺度の使用経験がないためこれを裏付ける十分なデータは得られていない。そこで,米国において詳細な評価者訓練マニュアルが提示されているTWSTRS-重症度スケールについて,本邦における評価者間一致性を検討した。
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