文献詳細
特集 神経救急
文献概要
はじめに
神経救急に引き続く長期的な諸問題を考えるには,まず神経救急疾患の特徴として,急性期病院のみで治療が完結することが少なく,急性期からその後のリハビリテーション(以下,リハビリ),療養,在宅療養などの医療・介護の連携態勢が治療の結果を総体として決定するため,医療社会資源の供給体制について論じなければならない。さらに,神経救急に引き続く長期的な問題として是非触れなければならないこととして,頭部外傷後の高次脳機能障害がある。これはわが国の障害認定や補償の歴史の中で最も遅れていた分野の1つである。
わが国では,厚生労働省による救急医療体制の整備として救命救急センターを全国に展開し,初期研修医制度における救急医療研修を必修化させ,全国大学の医学部附属病院に救急部あるいは救急科の設置を誘導するなど,10~20年の長期戦略を着々と実現してきたようにみえる。しかし,近年の病院勤務医の大規模な,“立ち去り型サボタージュ”ともいえる開業ラッシュを引き金に,地方を中心とした医療崩壊,特に救急医療の崩壊が一昨年頃より顕著になってきた。このような社会的現象は,医療過誤を疑えば刑事事件の被告として医師を逮捕し,処罰しようとするわが国の法制や,メディアによる残酷ともいえる医師への攻撃等に対する,いわば無言の抗議として,次世代を担う若い医師達が治療リスクの高い診療科へ進むことを拒否していることも大きな原因と考えられる。
本稿では,救急医療における病床数の不足の解決についてや,患者のための治療を考えるうえで欠くことができない医療連携の中での後方連携,つまり回復期病床や療養病床,在宅医療の現状の問題と解決すべき方向についてを中心に述べることにする。
神経救急に引き続く長期的な諸問題を考えるには,まず神経救急疾患の特徴として,急性期病院のみで治療が完結することが少なく,急性期からその後のリハビリテーション(以下,リハビリ),療養,在宅療養などの医療・介護の連携態勢が治療の結果を総体として決定するため,医療社会資源の供給体制について論じなければならない。さらに,神経救急に引き続く長期的な問題として是非触れなければならないこととして,頭部外傷後の高次脳機能障害がある。これはわが国の障害認定や補償の歴史の中で最も遅れていた分野の1つである。
わが国では,厚生労働省による救急医療体制の整備として救命救急センターを全国に展開し,初期研修医制度における救急医療研修を必修化させ,全国大学の医学部附属病院に救急部あるいは救急科の設置を誘導するなど,10~20年の長期戦略を着々と実現してきたようにみえる。しかし,近年の病院勤務医の大規模な,“立ち去り型サボタージュ”ともいえる開業ラッシュを引き金に,地方を中心とした医療崩壊,特に救急医療の崩壊が一昨年頃より顕著になってきた。このような社会的現象は,医療過誤を疑えば刑事事件の被告として医師を逮捕し,処罰しようとするわが国の法制や,メディアによる残酷ともいえる医師への攻撃等に対する,いわば無言の抗議として,次世代を担う若い医師達が治療リスクの高い診療科へ進むことを拒否していることも大きな原因と考えられる。
本稿では,救急医療における病床数の不足の解決についてや,患者のための治療を考えるうえで欠くことができない医療連携の中での後方連携,つまり回復期病床や療養病床,在宅医療の現状の問題と解決すべき方向についてを中心に述べることにする。
参考文献
1) Tomita H, Ito U, Saito J, Maehara T: Cerebral atrophy after severe head injury. In Long CM (ed): Brain Edema. Pathogenesis, Imaging and Therapy. Advances in Neurology 52. Raven Press, New York, 1990, p553
2) 富田博樹, 伊藤梅男, 戸根 修, 正岡博幸, 富永 勉, 他: 脳震盪患者におけるshort latency, somatosensory evoked potential(SEEP)の経時的変化―Diffuse axonal injury(DAI)患者との比較. 神経外傷15: 95-100, 1992
3) 富田博樹, 伊藤梅男, 堀川直史, 戸根 修, 正岡博幸, 他: 瀰慢性軸索損傷(Gennarelli)における受傷早期の脳循環血液量および脳酸素消費量と神経心理学的予後. 神経外傷17: 201-206, 1994
4) 堀川直史, 山崎友子, 小鳥居直子, 伊藤梅男, 富田博樹, 他: 瀰漫性軸索損傷患者における神経心理学的所見の経時的変化. 神経外傷17: 225-228, 1994
5) 富田博樹, 伊藤梅男, 戸根 修, 正岡博幸, 早川隆宣, 他: び漫性軸策損傷における受傷早期の脳循環代謝と長期高次機能予後. 神経外傷22: 65-69, 1999
6) 富田博樹, 戸根 修, 堀川直史, 山崎友子, 山野美樹, 他: 頭部外傷後の高次機能障害 神経外傷24: 27-35, 2001
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8) 富田博樹, 戸根 修, 秋元秀昭, 原 睦也, 重田恵吾, 他: 多摩地区における脳外傷による高次脳機能障害患者の地域完結型の診療およびサポート体制(ネットワーク)の構築―多摩高次脳機能障害研究会の活動. 神経外傷31: 21-27, 2008
9) 中島八十一(主任研究者): 高次脳機能障害者に対する地域支援ネットワークの構築に関する研究 H18年度総括・分担研究報告書
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