文献詳細
特集 神経救急
神経救急とリハビリテーション―地域における包括的脳卒中診療のあり方
著者: 栗原正紀1 小笠原貞信1 鮫島光博1
所属機関: 1長崎リハビリテーション病院
ページ範囲:P.61 - P.71
文献概要
わが国の救急医療体制は交通事故の増加に伴って,1977年から主に外傷患者に対する応需システムとして初期・二次・三次救急医療機関の整備が行われてきた。しかし昨今,急速な高齢化に伴い疾病構造は大きく変化し,救急搬送患者にも高齢者の内因性疾患が多くを占めるようになってきた。なお,長崎救急医療白書1)によると1998年から2007年までの10年間に救急搬送された患者の原因疾患は,毎年脳卒中が最も多く,次いで肺炎,そして大腿骨頸部などの骨折であり,いずれも70歳以上が50%を超え,年々その割合も高くなってきている。また頭部外傷による頭蓋内出血だけとっても同様に,高齢者が多い傾向がみられるようになっている。これらの実情から,地域の救急医療の大きな課題は高齢者の神経救急疾患であることがわかる。
一方,リハビリテーション(以下,リハビリ)医療は従来,全身状態が完全に安定してから開始され,主たる対象はリウマチや若い人の脊髄損傷・骨折などの整形疾患であり,一般的に慢性期の医療として認識されていた。ところが2000年に大きな転換期が訪れた。そのきっかけは介護保険法の成立と回復期リハビリ病棟の誕生である。介護保険はリハビリ前置主義が唱えられ,その主要な場として回復期リハビリ病棟の位置づけがある。さらに,急性期医療における平均在院日数の短縮化も加わり,急性期(救急)医療,亜急性期医療,そして慢性期医療という医療機能の分担化が促進されるに従い,回復期リハビリ病棟が急性期(救急)後の亜急性期医療の場として期待されるようにもなってきた。このように近年,リハビリ医療は救急医療と切っても切れない密接な関係として捉えられ,その重要性が幅広く認識されているところである。
超高齢社会を目前に,“高度に進歩した専門的治療を如何にして効果的・効率的に地域生活に繋げていくか”地域医療のあり方が問われている。その抜本的対策は“高齢者の特徴2)を踏まえた救急医療とリハビリ医療の包括的展開”にあると考える。
そこで本稿では神経救急疾患の中で最も多い脳卒中を取り上げ,地域における包括的脳卒中診療のあり方とリハビリについて私見を交えながら整理する。
参考文献
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