文献詳細
書評
「バナナ・レディ 前頭側頭型認知症をめぐる19のエピソード」―Andrew Kertesz●著,河村 満●監訳 フリーアクセス
著者: 中島健二1
所属機関: 1鳥取大学・脳神経内科学
ページ範囲:P.50 - P.50
文献概要
前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia:FTD)は,医学的にいまだ不明な点が多く,実際の頻度も明らかではないが,本邦においても神経変性性の認知症の中ではアルツハイマー病,レビー小体型認知症に次いで多いとされる。1900年前後にArnold Pickが記載して以来,1つの臨床症候群として知られてきたが,臨床的・病理学的特徴の多様性から,別々の疾患として報告されたりしてきた経緯もある。そのため,日常診療においてはアルツハイマー病や躁うつ病などと間違えられたりすることも多く,多くの症例が診断されなかったり,死後の病理学的検討によってやっと診断されたりしてきた。しかし,FTDという疾患名が登場して以来,再び注目が集まるようになった。また,近年ではタウ蛋白に続いて,TDP-43やFUSなどの新たな関連異常蛋白が報告され,その基礎医学的研究の発展も目覚ましく,大きな関心を集めるようになっている。このような時期に本書が発刊されることは,まさに時宜を得ているものと思われる。
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