文献詳細
書評
「《神経心理学コレクション》脳を繙く 歴史でみる認知神経科学」―M. R. Bennett,P. M. S. Hacker●著 河村 満●訳 山鳥 重,河村 満,池田 学●シリーズ編集 フリーアクセス
著者: 酒井邦嘉1
所属機関: 1東大大学院・言語脳科学
ページ範囲:P.1100 - P.1100
文献概要
本書の構想は,「脳科学全体にわたる主要な研究を網羅的に取り上げ,整理し,研究内容を歴史的に位置付け,批判的に考察する」というものである。その一方で,ちまたではちょっと不思議にも思えるくらいもてはやされてきた用語である「ワーキング・メモリー(作動記憶)」に関してはたった1カ所,「ミラー・ニューロン」に至ってはまったく記述や議論がみられない。どちらの概念に対しても,特に言語への安易な適用に対して常に懐疑的な私には,むしろこれは適切な判断であると言えるのであるが,もしもこれらの点について徹底的に議論してもらえたら,盲信されている概念に対する多くの誤解が解けたことであろう。
掲載誌情報