文献詳細
症例報告
悪性貧血や亜急性脊髄連合変性症がなく,認知症,失調性歩行を呈したビタミンB12欠乏の1例
著者: 岩波久威1 田中道人1 岩川秀輝1 滝口義晃1 犬飼敏彦1
所属機関: 1獨協医科大学越谷病院内分泌代謝・血液・神経内科
ページ範囲:P.267 - P.269
文献概要
ビタミンは生体維持に必須な物質でありながら,体内で合成することはできない。さまざまな原因によってビタミン欠乏状態が出現すると特異的な臨床症状を呈するが,原則として補充療法で予防と治療が可能である。ビタミンB12(vitamin B12:VB12)はヒドロキソコバラミン(OH-B12),アデノシルコバラミン(Ado-B12),メチルコバラミン(MeB12),シアノコバラミン(CN-B12)の総称で,DNA合成系の補酵素として働き,抗悪性貧血因子として牛の肝臓中に発見されたビタミンである。VB12が欠乏すると悪性貧血や亜急性脊髄連合変性症をはじめとしたさまざまな神経症状,舌乳頭萎縮やHunter舌炎などの消化器症状,抑うつ,幻覚妄想,錯乱,人格障害などの精神症状を呈するといわれている。しかし,このうち亜急性脊髄連合変性症以外の神経症状や精神症状が出現することは比較的稀である。今回われわれは,悪性貧血や亜急性脊髄連合変性症がなく,認知症,失調性歩行を呈したビタミンB12欠乏症を経験したので,若干の考察を加えて報告する。
参考文献
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