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雑誌目次

雑誌文献

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩64巻10号

2012年10月発行

雑誌目次

特集 辺縁系をめぐって

フリーアクセス

ページ範囲:P.1089 - P.1089

特集の意図

 ブローカに端を発する辺縁系をめぐる研究は,パペッツ,マクリーンを経て着実に対象部位の理解を深めている。これまで,各部位が単独に取り上げられる機会はあったが,辺縁系として包括して取り上げられることは少なかった。本特集をとおして,辺縁系の奥深さとおもしろさを味わっていただけると幸いである。

―対談―辺縁系をめぐって―前編

著者: 福武敏夫 ,   河村満

ページ範囲:P.1091 - P.1096

この特集について

河村 今回の特集について,簡単に説明しておきますと,2010年の神経学会(第51回日本神経学会総会)のシンポジウム「辺縁系をめぐって」が元になっています。一部変更していますが,概ねそのときのシンポジストに原稿を依頼しました。それで,この対談はそのシンポジウムの司会を務めた私たち2人で,特集項目の中では取り上げきれなかったものを紹介しつつ,より多くの読者にこの領域のおもしろさが伝わればと思って企画しました。

福武 あのシンポジウムは「島皮質をめぐって」で応募したのですが,神経学会としては少し狭すぎるのではないかというお話があり,辺縁系がテーマになりました。かなり,ややこしい領域ではありますね。

行動選択障害の神経内科学―懲りないパーキンソンと恐れ知らずのデメンチア

著者: 岩田誠

ページ範囲:P.1097 - P.1102

Ⅰ.行動選択の神経機構

 1.体験に基づく獲得性行動選択

 ヒトの日常生活は,行動選択の絶え間ない連続である。その過程で中心となるのは,ワーキングメモリー1)の形成であると考えられる。ワーキングメモリーは行動選択の意思決定を行うための情報の集積・統合の場であり,外界や自己の身体内からのさまざまな感覚情報と,それらの情報に関係する出来事記憶,意味記憶(知識),そしてこれらを操作する手続き記憶(技)などの情報が一堂に集められ2),その形成部位は前頭前野であろうと考えられている。前頭前野は,これらのさまざまな情報に基づいて行動選択の意思決定を行っていると考えられているが,その中で大きな意義を持っているのは,成功体験,あるいは失敗体験といった出来事記憶の存在である。

 齋藤3)は,10歳頃までの思い出を自由想起させ,想起された思い出のそれぞれに,「快」「不快」「どちらともいえない」の3段階評価を行わせると,一般の人の場合,その比率は大体6:3:1になると述べ,この比率を思い出の中の感情比率と呼んでいる。すなわち,自由想起される出来事記憶のうち約30%は,「不快」な記憶であるが,このようなマイナスの記憶が常にほぼ一定の割合で存在していることは,日々の行動選択において大きな意義を有すると考えられる。

島の情動機能

著者: 鈴木敦命

ページ範囲:P.1103 - P.1112

はじめに

 仕事帰りに立ち寄ったバーで,バルサミコ酢を隠し味に入れたフレーバービールの試飲をお願いされたとしよう。この文を読んだだけで,口の中に酸っぱいものがこみ上がってくるような嫌悪感を覚えた人もいるかもしれない。その予感のとおり,「バルサミコ酢が入っています」と言われてビールを飲んだ人はまずいと感じる。しかし,面白いことに,何も言われずにバルサミコ酢ビールを飲むとおいしく感じるという1)。どちらの場合もバルサミコ酢ビールを飲んでいる点,つまり味覚入力は同じである。にもかかわらず,ビールの評価が分かれるということは,「まずいだろう」という先入観によって味覚の意識的経験がトップダウン的に調節されることを意味する。

 味覚経験と同様に,快-不快を伴う情動経験は感覚入力と予期などの認知的因子が統合されて生じるものであり,その表象には島(insula)が深く関与するとされる2,3)。本稿は辺縁系の中でもこの島に焦点をあてたものである。

 島は外側溝の底に位置し,弁蓋部を除去することであらわになる(Fig.1)。島は,帯状回や扁桃体と神経連絡を持ち,その前腹側端は眼窩前頭皮質と連続しているなどの解剖学的特徴を有するため,辺縁系回路の中に含められてきた4)。実際,島は辺縁系の主要な機能である情動と関連した活動がヒト神経イメージング研究で最も頑健に観測される脳領域の1つである5)

 「辺縁系」と「情動」という概念の持つ曖昧性・複合性を批判したJoseph LeDouxは,特定の神経構造が特定の情動において果たす役割に着目するという研究方略を提案した6)。この立場のもと,彼は恐怖条件づけを支える扁桃体回路の詳細を解明し,今日における情動の神経科学研究の隆盛に大きく貢献した7)。同様に,島は嫌悪という特定の情動に関わりの深い脳領域として注目されてきた8)。しかし,先述のように,現在では,島は情動の種類によらず,その意識的・主観的経験に重要な役割を果たすのではないかと提案されている2,3)。本稿では,これら島の情動機能をめぐる種々の話題を概観する。

情動,扁桃体と自律神経系

著者: 上山敬司

ページ範囲:P.1113 - P.1119

はじめに

 情動(emotion)は,情と動の合成である。すなわち,心身の動揺を伴う感情の変化といえる。感情の変化や程度を客観的,あるいは定量的に評価することは現状では容易ではない(最近の脳科学では,後述するようにそれも可能になりつつある)。一方,身体活動は体性運動神経系と自律神経系が司る。体性運動神経系は骨格筋の運動であり,闘争や逃走のように目に見える動きを司る。これに対して,自律神経系は内臓の働きを司る。したがって,自律神経活性の変化から情動の程度を客観的かつ定量的に評価できる。また感情と身体活動の関係を解剖生理学的に解明する糸口になりうる。ここでは,自験例を中心に,情動,自律神経系を司る中枢神経回路,特に扁桃体を中心に解説する。

前頭葉眼窩部とモラル

著者: 船山道隆 ,   三村將

ページ範囲:P.1121 - P.1129

はじめに

 最近の脳科学では,脳とモラルの関係が1つの大きなテーマとなっている1-7)。モラルの神経基盤に関しては,前頭葉,側頭葉,帯状回,扁桃体,海馬,大脳基底核などが挙げられているが1),その中でも前頭葉眼窩部ないし腹内側部は,脳とモラルを考えるうえで最も重要な領域である。損傷例研究および動物実験から始まり,最近は機能画像研究によって,前頭葉眼窩部の機能は徐々に解明されつつある。本稿では,損傷例研究の流れに焦点を当て,まず前頭葉眼窩部の損傷例で観察されるモラル関連症候を紹介し,次に損傷例研究から得られた前頭葉眼窩部の機能の仮説について紹介する。

―対談―辺縁系をめぐって―後編

著者: 福武敏夫 ,   河村満

ページ範囲:P.1131 - P.1138

小池上春芳『大脳辺縁系』

河村 実は,福武先生と私とは同門で,千葉大学の神経内科で,15年ぐらい一緒に働いたことがあります。

福武 そうですね。断続的ですが。

総説

多系統萎縮症―臨床試験に向けての現況と課題

著者: 市川弥生子

ページ範囲:P.1141 - P.1149

はじめに

 多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)は,オリーブ・橋・小脳系,線条体・黒質系,自律神経系という多系統に障害が進行していく孤発性の神経変性疾患である。MSAはオリーブ橋小脳萎縮症(olivopontocerebellar atrophy:OPCA),線条体黒質変性症(striatonigral degenetarion:SND),シャイ・ドレーガー症候群(Shy-Drager syndrome:SDS)の3疾患を包括した疾患概念として位置づけられている。現時点では原因不明の神経変性疾患であるが,疾患関連遺伝子の探索研究も進んでおり,今後,病態機序に基づく病態抑止型の治療が実現するものと期待される。

 臨床試験に先立ち,適切な診断基準・評価方法を定め,自然史を明らかにしておくことが必要である。欧米を中心にMSAの診断基準が策定され,疾患特異的評価スケールも策定された。現在,欧米,本邦において多施設共同研究体制が構築され,その診断基準,疾患特異的評価スケールを用いて,自然史研究が行われているが,再考すべき課題も明らかとなってきた。

 本稿では疾患概念確立から診断基準の策定までの背景,多施設共同研究体制による研究(自然史研究,疾患関連遺伝子研究)の現況を概説したうえで,MSAの臨床試験において考慮すべき点と課題について考察する。

脳腫瘍の画像診断と病理―悪性神経膠腫における症状・画像・病理組織の多様性

著者: 岡嶋馨 ,   太田善夫

ページ範囲:P.1151 - P.1157

はじめに

 画像医学は近年最も発達した科学の1つであり,その進歩は特に脳の臨床医学において革命的であった。その中心はいうまでもなく1970年代に普及したX線CT,1980年代に普及したMRI*である。(*当初NMR-CTと言われていた。現在でもMRIという呼称には疑問があるがここではMRIとする。)MRIを応用した種々の撮像方法やPETでの生体の画像化は現在も進歩が続いており,わが国ではこれら装置が普及しているのが欧米に比べ大きな特徴である。

 脳腫瘍の画像診断は主にMRIを用いて行われ,その手法は現在までにほぼ確立されている。その診断は腫瘍の存在や組織型の鑑別のみでなく,腫瘍の進展範囲や悪性度を予測して治療方法に応用することまでにも貢献している。脳腫瘍は多種に及ぶので本稿では高悪性度星状細胞腫(high grade astrocytoma)のみを対象に,典型例の画像診断と病理組織像・臨床症状との関連を考察する。

2012年7月公表の日本うつ病学会うつ病治療ガイドライン―作成の経緯と,概要,そして今後の方向性

著者: 小笠原一能 ,   尾崎紀夫

ページ範囲:P.1159 - P.1165

はじめに

 今般,日本うつ病学会は「治療ガイドライン Ⅱ.大うつ病性障害2012 Ver.1」(以下,本GL)1)を作成・公表した。学会が発表するうつ病に関するガイドラインとしては,本邦で初めてのものである。

 本GLは基本的に,うつ病診療に関わる臨床医が活用することを念頭において作成したものであったにもかかわらず,公表と同時に一部全国紙で一面報道2)されるなど,予想外の注目を浴びたことには,執筆に関与したわれわれも驚くと同時に,社会全体のうつ病に対する関心の高さを再認識したところである。

 本稿では,本GLの作成の経緯と狙いを中心に解説するとともに,内容の概略を紹介したい。それによって,うつ病診療に関わる臨床医である読者に本GLの理解を深めていただくとともに,それ以外の読者には現在の精神医学が日々取り組んでいる問題の一端をご紹介できればと考える。

 なお,本GLは当学会ホームページ(http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/0726.pdf)から全文が入手可能である。

お知らせ

第2回 都医学研シンポジウム 脳神経疾患の臨床・研究の拠点形成による医療イノベーション フリーアクセス

ページ範囲:P.1165 - P.1165

 ビッグデータのデータマイニング解析によって,思いもよらぬ事象が浮き彫りになる情報処理の発想が,近年,医学研究や医療の分野でも応用されつつあり,それに伴い,臨床研究の方法や,それにより蓄積されてくるデータやノウハウの拠点化(データベース化)が,次世代での改革につながっていく……。

 本シンポジウムでは,全国規模で行われているプリオン病の調査研究,アルツハイマー病の疾患修飾療法の開発へ向けた大規模な臨床研究に加えて,主に都立病院との連携を視野に入れた非アルツハイマー病(前頭側頭葉変性症),脳腫瘍,および難治性てんかんにフォーカスを当てた病態解明の研究,診断・治療のデータベース構築とその応用について紹介します。

日 時 2012年11月28日(水) 13:30~16:15

会 場 津田ホール(JR総武線千駄ヶ谷駅)

新生児けいれんおよび関連疾患国際シンポジウム 第15回乳幼児けいれん研究会 フリーアクセス

ページ範囲:P.1174 - P.1174

正式名称(英文):

    International Symposium on Neonatal Seizures and Related Conditions (ISNS)

    ――Cutting Edge in Seizure Detection, Management and Neuroprotection

    ――The 15th Annual Meeting of Infantile Seizure Society (ISS)

会 期:2013年4月12日(金)~14日(日)

会 場:順天堂大学医学部有山記念講堂ほか(東京都文京区本郷2-1-1)

原著

新規抗てんかん薬レベチラセタムの臨床効果―部分てんかん患者に対する有効性検証

著者: 山添知宏 ,   藤本礼尚 ,   山﨑まどか ,   横田卓也 ,   岡西徹 ,   内山剛 ,   大橋寿彦 ,   田中篤太郎 ,   榎日出夫 ,   山本貴道

ページ範囲:P.1169 - P.1174

はじめに

 レベチラセタム(levetiracetam:LEV)は既存の抗てんかん薬とは異なる化学構造を有する新規抗てんかん薬である。米国では1999年に,欧州では2000年に承認され,現在90以上の国と地域で承認・販売されている。欧州や米国においては特発性全般てんかん患者でのミオクロニー発作や強直間代発作,特発性全般てんかんである若年性欠神てんかん・若年性ミオクロニーてんかん・覚醒時大発作てんかんへのLEV併用療法の有効性が報告され1-3),成人または小児の部分発作のみならず,若年性ミオクロニーてんかんのミオクロニー発作および特発性全般てんかんにおける強直間代発作に対する他の抗てんかん薬との併用療法として承認されている。わが国では2010年7月,「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する抗てんかん薬との併用療法」を効能・効果として承認された。

 LEVの作用機序は完全には解明されていないものの,①神経終末のシナプス小胞蛋白2A(synaptic vesicle protein 2A:SV2A)との結合によりシナプス前神経伝達物質の放出を調節4),②神経細胞内貯蔵庫からのカルシウムイオン遊離抑制5),③神経細胞間の過剰な同期抑制作用が認められる6)など多彩な作用機序が確認されており3),既存の薬剤とは異なる特徴を有する薬剤として期待が持たれている。

 わが国ではLEVに関して,発売前の国内第Ⅲ相試験(213例の多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験)が報告されているが7),発売後の報告は乏しい。今回,筆者らは聖隷浜松病院(以下当院)での発売当初からのLEV使用経験を報告する。

症例報告

左房粘液腫による心原性脳塞栓症の1例

著者: 畑山さや香 ,   緒方利安 ,   大川将和 ,   東登志夫 ,   井上亨 ,   高野浩一 ,   峰松紀年 ,   田代忠 ,   坂田則行

ページ範囲:P.1175 - P.1179

はじめに

 左房粘液腫は最も頻度の高い心臓腫瘍であり,しばしば心原性脳塞栓症の原因となる1)。これまで左房粘液腫による脳塞栓に対し,経静脈的血栓溶解療法〔rt-PA(recombinant tissue plasminogen activator)療法〕を施行した症例は必ずしも多くない2-7)。加えて,その根治療法は開心腫瘍摘出術であるが,脳梗塞から手術までの期間の患者管理について明確な指針はない。

 今回筆者らは,心原性脳塞栓症を疑いrt-PA療法を施行後,左房粘液腫による脳梗塞と診断した症例を経験した。左房粘液腫に伴う脳梗塞に対する抗血栓療法の是非を含めて報告する。

Neurological CPC

経過7年で進行性のパーキンソニズム,発語障害を呈した74歳男性

著者: 田久保秀樹 ,   本間琢 ,   内原俊記 ,   河村満 ,   横地正之 ,   後藤淳 ,   織茂智之 ,   福田隆浩 ,   藤ヶ﨑純子 ,   鈴木正彦 ,   星野晴彦

ページ範囲:P.1181 - P.1190

症例提示

司会(河村) 臨床のプレゼンテーションをお願いします。

臨床医(田久保) 症例は74歳男性。主訴は歩行困難と発語困難で,既往歴はなし。家族歴は,母方の祖母がいとこ婚で,実母に認知症を伴うパーキンソン症状があったと患者の奥様の証言がありますが,神経内科医が確認したわけではなく,詳しい病状はわかりません。その後,実母は膵臓癌で亡くなっています。患者の同胞は4人で,特に神経疾患に罹った方は現在までいないそうです。なお,左利きから右利きに矯正しています。

学会印象記

Peripheral Nerve Society / Inflammatory Neuropathy Consortium 2012(2012年6月24~27日,ロッテルダム)

著者: 海田賢一

ページ範囲:P.1192 - P.1193

 2012年6月24日(日)~27日(水)までロッテルダム(オランダ王国)で開催されたPeripheral Nerve Society(PNS)/Inflammatory Neuropathy Consortium(INC)2012に参加してまいりました。INCはPNSのサテライトミーティングであり,ギラン・バレー症候群(GBS),慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP),多巣性運動ニューロパチー(MMN)などの免疫性・炎症性ニューロパチーのケアと治療を改善することを趣旨に,当時PNSのpresidentであったRichard Hughesによって2007年に設立されました。このINCは,隔年で開かれるPNS全体会議(PNS biennial meeting)が開催されない年に行われます。

 今回は前回より参加者が多く,限られたテーマであるにもかかわらず280人強の医師,研究者が集まり,免疫性・炎症性ニューロパチーへの関心が年々高まっているように感じました。参加者の多くは欧米からですが,日本からも10人前後参加しておりました。今回のオーガナイザーはロッテルダムにあるErasmus Medical CenterのProf. van DoornとDr. Bart Jacobsでした。プログラムの企画・内容に加えて,会の進行,会場でのサービス,会員相互の情報交換・親睦などに関しても大変行き届いており,自然と参加型のmeetingになっていたと感じました。

連載 神経学を作った100冊(70)

デジュリーヌ『中枢神経系の解剖学』(1895,1901)

著者: 作田学

ページ範囲:P.1194 - P.1195

 デジュリーヌ(ドゥジュリーヌが原語に近い)(Joseph Jules Dejerine;1849-1917)は,現フランス領サボワの出身でスイスのジュネーブ近郊の馬車業をしていた父の下に生まれ,育った。当時イタリアはサルディニア王国のサボワ家を中心として統一の機運にあり,フランスにサボワ地方とニースを1860年に割譲し,その黙認の下に統一を果たした。サボワ地方は現フランス南東部にあり,イタリア,スイスに国境を接している。デジュリーヌが生まれた場所はサボワともジュネーブ市内のプレンパレとも言われているが,そういう事情があった。ただ,22歳までにジュネーブで学業を済ませたことは事実である。

 1870年,スペインの王位継承問題を契機としてプロイセンとフランスの戦争(普仏戦争)が起こった。プロイセン軍はライン川を越えて,8月にフランスに入り,9月にはナポレオン三世をセダンで捕虜にした。その報とともにパリには革命が勃発し,共和制が宣言され,国防政府が成立した。1871年1月パリが陥落し,2月に新政府とドイツの間で平和の調印が行われた。

書評

「アクチュアル 脳・神経疾患の臨床―てんかんテキスト New Version」―福島県立医科大学医学部神経内科学講座教授 宇川義一●専門編集 東京大学大学院医学系研究科神経内科学教授 辻 省次●総編集 フリーアクセス

著者: 葛原茂樹

ページ範囲:P.1139 - P.1139

 てんかんは,わが国において患者数が約100万人と推定されている頻度の高い疾患であるにもかかわらず,医学分野では比較的地味な存在であった。ところが,近年,自動車運転中のてんかん発作による交通事故発生を契機に,にわかに大きな社会的関心を集めるようになった。事故の大部分は怠薬による発作であり,きちんと服薬すれば発作の大部分はコントロール可能という成績が示されているので,最新最適のてんかん診療を学び実践することは,患者と社会に対する医師の社会的責任でもある。このような要請に正面から応えることができる指南書として,このたび中山書店から『てんかんテキスト New Version』が刊行された。

「今日の精神疾患治療指針」―樋口輝彦,市川宏伸,神庭重信,朝田 隆,中込和幸●編 フリーアクセス

著者: 佐藤光源

ページ範囲:P.1167 - P.1167

 『今日の治療指針』は日常診療の実用書として既に定評があり,毎年,項目と執筆者を替えて改訂されている。しかし精神疾患のページ数と項目は限られていて,日頃出会う精神疾患の治療指針としてはかなり制約がある。

 本書は,それを克服した『今日の治療指針』の精神疾患版で,一般診療に向けた具体的な治療指針が網羅されている。23章341項目で構成され,第一線で活躍中の300人を超えるエキスパートが執筆している。薬物療法と心理社会療法を組み合わせて症状を改善し,社会的機能を高めるところに精神疾患治療の特徴があるが,それを従来の『今日の治療指針』と同じスタイルで編集したことは画期的といえる。

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次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1149 - P.1149

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.1196 - P.1197

あとがき フリーアクセス

著者: 森啓

ページ範囲:P.1198 - P.1198

 ロンドンオリンピックの17日間が終わった。始まる前は,金メダル論議が盛んであったが,終わってみればメダル獲得数の記録が話題となった。スポーツ音痴で関心が低かった私も生来の睡眠障害が幸いしてテレビに釘付けになった。恥ずかしながら選手のエピソードに触れては涙腺を緩め,数々の名場面を見て感動し,興奮し,力こぶを握りしめ,小声を出して楽しんだ。情感を司る辺縁系が活性化されたと思った瞬間に「あとがき」の宿題を思い出し我に返ってしまった。

基本情報

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1344-8129

印刷版ISSN 1881-6096

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