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雑誌目次

雑誌文献

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩64巻3号

2012年03月発行

雑誌目次

特集 アカデミアから新規治療の実現へ―トランスレーショナルリサーチの現状

序―アカデミア発の新規治療開発の展望

著者: 祖父江元

ページ範囲:P.221 - P.223

Ⅰ.本特集の企画意図

 近年,さまざまな疾患に対する分子標的治療が開発されており,特に悪性腫瘍や自己免疫性疾患などの分野において,臨床応用が進んでいる。こうした治療法開発の基盤となるのは,大学などの研究・教育機関(アカデミア)での基礎研究で得られた分子病態に関する知見であることが多く,神経学の分野でも基礎研究の成果を治療法開発やその臨床応用に橋渡ししようとするアカデミア主導のトランスレーショナルリサーチが最近10年間ほどの間に加速的に進められている。本特集では,こうした研究背景をふまえ,神経・筋疾患に対するトランスレーショナルリサーチの第一人者の先生方に,治療法開発・応用の背景・現状と将来的展望を論じていただいた。どの項目も世界をリードしてわが国が開発に取り組んでいる分野について,タイムリーかつ示唆に富む内容がまとめられている。

急がば回れ―臨床研究医の厚い層の育成は,将来の創薬研究を支える

著者: 福原俊一 ,   佐久嶋研 ,   西村正治

ページ範囲:P.225 - P.228

Ⅰ.日本の臨床医学研究の危機?

 日本発の臨床医学研究が,国際的なレベルで質も量も低いことは以前から報告されてきた1)。最近のいわゆる「Clinical Core Journal」120誌に掲載された日本発の臨床研究論文を調査した結果でも,日本発の臨床医学研究の発信数が急速に減っている一方で,中国,韓国発の臨床医学研究論文が7年間で倍増していることが最新のデータでも明らかになっている(Fig.,Table1)2)

 なぜこのような事態になってしまったのか。主たる要因を,2004年にわが国に導入された臨床研修必修化を端緒とした若手医師の大学離れに求める意見もあるが,果たしてそれだけだろうか。多くの識者は,いわゆる,「人,もの,金」の不足を指摘している。すなわち,「統計家,CRCなどの専門家の不足」,「データセンターなどインフラの不足」,「大型の臨床研究を支える研究費の不足」,など。その中にあって,筆者はあえて,「臨床研究の源であるリサーチ・クエスチョンを考案し,研究結果の意義を解釈し,臨床に還元できる唯一の存在である臨床医研究者(clinician investigator)の不足」を,今日の臨床医学研究の危機的状況の要因の筆頭に挙げる者である。

神経疾患における創薬研究・開発展望

著者: 中村治雅 ,   宇山佳明

ページ範囲:P.229 - P.235

はじめに

 神経疾患における創薬研究は,世界的には抗がん剤や精神領域とともに開発の盛んな領域である。近年の基礎研究領域における病態の解明,それに基づくシーズの創出は日進月歩ではあり,多くの神経疾患において医薬品の開発,創薬が待ち望まれている。このため,世界的に神経疾患による創薬研究は活発に行われており,多くの治験が計画され,実施されてきた。しかしながら,日本においてはドラッグ・ラグ問題(欧米各国と比較して日本での医薬品承認時期が数年以上遅滞し,薬剤治療レベルが低下するという問題)を抱えており,世界とは異なった開発状況が存在している。

 本稿では,神経疾患における創薬の必要性,神経疾患における創薬開発の現状,日本におけるドラッグ・ラグ,今後の日本における開発戦略および臨床現場で取り組むべき課題について,特に神経難病や希少疾患における治験,臨床試験を中心に私見を述べることとしたい。

球脊髄性筋萎縮症の病態抑止治療―リュープロレリン酢酸塩

著者: 鈴木啓介 ,   坂野晴彦 ,   勝野雅央 ,   足立弘明 ,   田中章景 ,   祖父江元

ページ範囲:P.237 - P.244

はじめに

 神経変性疾患とは,特定の神経細胞がなんらかの原因により変性・脱落して生じる進行性疾患の総称で,本稿で述べる球脊髄性筋萎縮症(spinal and bulbar muscular atrophy:SBMA)のほか,パーキンソン病,アルツハイマー病,筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)などが含まれる。これまで開発が進められてきた神経変性疾患の治療の多くは,パーキンソン病に対するレボドパやアルツハイマー病に対するドネペジルに代表されるように,神経変性によって枯渇してくる神経伝達物質などを薬で穴埋めするという,いわゆる補充療法であった。これらの治療法は神経変性そのものを抑制するものではないため,疾患が進行すると治療の効果が乏しくなり,寝たきり状態になるなどADL(activities of daily living)の著しい低下をきたすことが多く,根本的な治療とはなっていない。また,ALSなど補充療法さえも開発されていない予後不良の疾患も多く,神経変性疾患の克服は悪性腫瘍と並んで現代医学の最重要課題となっている。

 近年,多くの神経変性疾患の病態に,神経細胞における変異蛋白質の集積が深く関与していることが判明し,病態の解明とともに神経細胞の変性そのものを抑止する病態抑止治療の開発が進められている。われわれも,モデルマウスを使って男性ホルモンが関与しているSBMAの分子病態を解明し,病態抑止治療の臨床応用を目指すトランスレーショナルリサーチを進めてきた。本稿では,これらの研究成果について述べるとともに,今後の研究の方向性や課題についても論じることとする。

筋萎縮性側索硬化症に対するHGF治療

著者: 青木正志

ページ範囲:P.245 - P.254

はじめに

 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は主に中年期以降に発症し,上位および下位運動ニューロンを選択的かつ系統的に障害をきたす神経変性疾患である。片側上肢の筋萎縮に始まり,反対側上肢,両下肢へ徐々に筋萎縮が進行して,その間に言語障害,嚥下困難などの球麻痺症状および呼吸筋麻痺が加わる経過をたどることが多い。人工呼吸器による呼吸管理を行わないと,発症後2~5年で呼吸不全のために死亡に至ることがほとんどである。呼吸筋を含めた全身の筋萎縮および脱力にもかかわらず,知能などの高次脳機能や感覚はまったく保たれることが普通であり,ALSは神経疾患の中で最も過酷な疾患とされる。いわゆる神経難病の中でも「難病中の難病」といっても過言ではない。

 厚生労働省の特定疾患治療研究事業の対象疾患であり,同事業の臨床調査個人票によると全国8,500名余りの患者がALSに罹患しており,その数は年々増加している。現在までに有効な治療薬や治療法がほとんどないため,早期に病因の解明と有効な治療法の確立が求められる一方で,希少疾患であるゆえアカデミア発のトランスレーショナルリサーチによる創薬が必要とされている。

縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーのシアル酸補充療法

著者: 西野一三 ,   野口悟

ページ範囲:P.255 - P.261

はじめに

 本邦においては,希少疾病は患者数5万人未満の疾患と定義される。教科書的に,筋疾患の中で最も頻度が高いとされるデュシェンヌ型筋ジストロフィーですら,本邦での患者数は1,500~3,000人程度と推定されており,希少疾病の定義である患者数の1割にも満たない。したがって,筋疾患はすべて希少疾病である。本稿で述べる縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーは本邦での患者数が150~400人程度と推計されており,デュシェンヌ型筋ジストロフィーの1/10,希少疾病の基準患者数の1/100にすら満たない“超”希少疾病である。希少疾病用医薬品は,その開発の難しさからしばしばオーファン・ドラッグと呼ばれるが,縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーのような“超”希少疾病用医薬品はさらに開発が困難であり,最近は,特にウルトラオーファン・ドラッグと呼ばれるようになってきている。本疾患は,幸いにして,治療法開発方法の原理を本邦研究室で確立することができた。

 本稿では,本邦におけるウルトラオーファン・ドラッグ開発のモデルケースとなることを願いつつ進めている縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー治療薬開発の現状を,その疾患の概要とともに記す。

総説

脳の中のナビゲーションシステム

著者: 泰羅雅登

ページ範囲:P.263 - P.271

はじめに

 普段の生活において,われわれは広い空間の中を自由に行き来している。初めて訪れた場所は除いて,行き慣れた場所であれば何も考えなくても迷うことなくその場所まで移動できる。いわゆるナビゲーションと呼ばれるこの行動をわれわれの脳はどのようにコントロールしているのであろうか。最近のわれわれの研究で,頭頂葉内側面がナビゲーションに重要な役割を果たしていることがわかってきた。本稿は佐藤暢哉博士(現,関西学院大学文学部准教授)との共同研究の成果をまとめたものである。

ALSの炎症機序

著者: 藤田浩司 ,   和泉唯信 ,   梶龍兒

ページ範囲:P.273 - P.278

はじめに

 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は上位および下位運動ニューロン障害を主徴とする神経変性疾患で,現在のところ根本的治療法は確立していない。ALSでは炎症(neuroinflammation)が病態に大きく関わることが多くの研究から示されている1,2)。さらに最近われわれがALSにおいてoptineurin(OPTN)変異を報告3)して以来,免疫・炎症に関与する転写因子であるnuclear factor-κB(NF-κB)4)(Fig.1)と運動ニューロン変性の関係が注目を集めている。

遺伝性パーキンソン病におけるミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)の役割

著者: 松田憲之 ,   田中啓二 ,   小松雅明

ページ範囲:P.279 - P.285

はじめに

 細胞内の代表的な大規模分解経路として,ユビキチン・プロテアソーム経路(ubiquitin-proteasome system:UPS)とオートファジー(autophagy)経路が知られている。前者はユビキチンによって標識された蛋白質をプロテアソームによって分解するものであり,基本的に選択的な分解経路である。一方で後者はバルクオートファジーという言葉に代表されるように,どちらかというと非選択的な分解経路であると思われてきた。しかしながら,近年は選択的なオートファジー経路(selective autophagy)の研究が進んで,その役割が非常に注目されてきている1)。選択的オートファジーとして,例えば酵母のアミノペプチターゼI(Ape1)とαマンノシダーゼ(Ams1)を液胞に移行するcytosol to vacuole targetting(CVT)経路,ペルオキシソームを選択的に分解するペキソファジー,細胞内に侵入した細菌を分解するゼノファジー,そしてミトコンドリアを選択的に分解するマイトファジーなどが知られている。オートファジーが生体内のあらゆる局面で必須の役割を担っていることは今更述べるまでもないが,最近,脳神経系におけるオートファジー,特にマイトファジーの役割が注目されつつある。そこで,本総説では最近急激に研究が進展している“パーキンソン病とマイトファジーの関係”について紹介していきたい。

脳腫瘍全国集計調査報告に基づく脳腫瘍統計の現状と動向

著者: 渋井壮一郎

ページ範囲:P.286 - P.290

はじめに

 CT,MRIなどの非侵襲的検査が普及し,以前に比べ脳腫瘍の診断は,より安全で容易になったといえる。これらすべての脳腫瘍を登録し,国内におけるデータベースを構築することは容易ではないが,国内での発生頻度,予後などを把握するうえでは,是非とも実施しなければならない作業といえる。1970年代から実施されている脳腫瘍全国集計調査は,その一端を担っており,貴重なデータとなっている。本稿では,米国で行われている調査報告結果と対比し,国内での脳腫瘍の現状について概括する。

書評

「高次脳機能障害Q&A症候編」―昭和大学神経内科教授 河村 満●編著 フリーアクセス

著者: 吉良潤一

ページ範囲:P.291 - P.291

 一味違った高次脳機能障害の書籍が上梓された。赤い表紙の症候編と緑表紙の基礎編が対となった高次脳機能障害Q&Aである。編著者は河村 満昭和大学神経内科教授。神経心理学の,日本は言うに及ばず世界のトップリーダーである。

 高次脳機能障害の書物というと,一般臨床家にとっても神経内科医にとっても敷居が高い。聞き慣れない用語,定義がわかりにくい学術用語のオンパレードで読み通すのが難しく,手に取りにくい。読み始めても,理解のあまりの大変さに途中で投げ出す諸子も少なくないと思う。

「アクチュアル 脳・神経疾患の臨床 識る 診る 治す 頭痛のすべて」―慶應義塾大学医学部神経内科教授 鈴木則宏●専門編集 東京大学大学院医学系研究科神経内科学教授 辻 省次●総編集 フリーアクセス

著者: 岩田誠

ページ範囲:P.293 - P.293

 日常診療の中で,頭痛は誰にでも生ずる最もありふれた自覚症状の1つであるから,どのような診療科の医師であっても,自分が診ている患者が頭痛を訴える機会に出会うことがあるはずである。そのようなときに,自分は頭痛のことはよくわからないからといって,ろくに話を聞くこともせず頭痛専門医に紹介するというのも悪いことではないが,患者側からみれば,頭痛ごときでわざわざ専門医を受診するなんて,と受け取る人は少なくないだろう。一方では,頭痛を訴えて受診すると,すぐに頭のCTスキャンやMRI,MRAを撮り,何も異常はありませんといわれ,適切な解決策をみつけてくれる医者にめぐり合うまで,痛む頭を抱えて次々と医者廻りをする患者も少なくない。日常診療の場で今もなお繰り返されているこのような浪費的医療の根源にあるのは,一般の医師たちの,頭痛診療の重要性に対する認識不足と,頭痛診療に対する勉強不足であるが,そのような事態をきたしたそもそもの原因は,頭痛のメカニズムに対する科学的な教育と,頭痛の診断と治療に関する実践教育が不十分であったことである。

症例報告

大脳基底核部slowly progressive expanding hematomaの3例報告と文献的考察

著者: 冨士井睦 ,   高田義章 ,   大野喜久郎 ,   穂苅充彦 ,   新井俊成

ページ範囲:P.295 - P.302

はじめに

 再出血のない被殼出血は,通常発症3日目以降は神経学的に改善しはじめ,14日目以降は画像所見上の脳浮腫も改善する経過をとるといわれている1)。したがって,14日目以降も出血腔が増大したり,脳浮腫が増悪して症状が改善しない症例には注意を要する。

 緩徐に進行する脳内血腫は,1978年にYashonらによってchronic expanding intracerebral hematomaとしてはじめて提唱された2)。その後,chronic encapsulated intracerebral hematomaや,chronic expanding intracerebral hematomaとして緩徐な発症形式の脳内血腫は相次いで報告された3,4)。これらの大部分は大脳皮質下に存在し,大脳基底核部に発生するのは5%未満といわれている5)。今回われわれは,突然に発症し入院時は通常の高血圧性被殼出血と考えられたが,緩徐進行性に血腫が増大した症例を3例経験した。同様の基底核部の脳内出血は過去に5例,chronic intracerebral hematomaとして報告されてきたが6-8),皮質下発症のchronic expanding hematoma(CEH)と比べて出血の増大時期が発症2~4週間ごろとより早期であるため,slowly progressive expanding hematoma(SPEH)の呼称のほうが適切であろうと考える。したがって,本稿ではこの名称を使用し,3自験例をもとに文献上の検討を行い,併せて血腫増大の機序について考察する。

外傷後2次性全般化発作,うつ症状に対する多剤投与患者へのレベチラセタムの使用経験

著者: 林拓郎 ,   井上幸治 ,   篠田純

ページ範囲:P.303 - P.307

はじめに

 10余年にわたり欧米諸国にて使用されてきたレベチラセタムが,本邦でも2010年9月に上市された1,2)。脳のシナプス小胞蛋白(synaptic vesicle protein)2A(SV2A)に結合するという既存の抗てんかん薬とは異なる作用機序から,今後の日本のてんかん医療においても注目されている2-8)。今回われわれは,外傷を契機とした脳挫傷後,難治性てんかんとこれを誘因としたうつ症状に対して,多数の抗てんかん薬・向精神薬が投与されていた患者を加療した。レベチラセタムを併用することによっててんかんとうつ症状が軽快し,投薬量も大幅に減じることができた症例を経験したので報告する。

連載 神経学を作った100冊(63)

ガワーズ『神経系疾患の手引書』(1886,1888)

著者: 作田学

ページ範囲:P.308 - P.309

 41歳のガワーズ(William Richard Gowers;1845-1915)は,それまでの神経学史上初めてすべての神経学分野を網羅する百科事典的な書物を出版した。それが『神経系疾患の手引書第1巻 症候学,脊髄疾患,末梢神経疾患,筋疾患』(xv+463頁)の出版であり1),これは2年後に『第2巻 脳疾患』(viii+975頁)をもって完結する2)

 これに先立つこと10年,1876年にドイツのエルプ(Wilhelm Heinrich Erb;1840-1921)も末梢神経や脊髄についての百科事典的な神経学書を出版していたが,神経疾患を網羅しているとはいえなかった。

お知らせ

第46・47回筋病理セミナー フリーアクセス

ページ範囲:P.244 - P.244

共  催 (独)国立精神・神経医療研究センター,精神・神経科学振興財団

趣  旨 2012年度の筋病理セミナーを下記の要領で開催します。本セミナーでは,講義と実習を通して筋病理学の基本と代表的な筋疾患の概要を学ぶことができます。

日  時 第46回 2012年7月23日(月)~7月27日(金)

     第47回 2012年8月27日(月)~8月31日(金)

場  所 (独)国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター(TMC)棟

第37回日本睡眠学会定期学術集会 フリーアクセス

ページ範囲:P.254 - P.254

会  期 2012年6月28日(木)~30日(土)

会  場 パシフィコ横浜 会議センター 〒220-0012 横浜市西区みなとみらい1-1-1

     TEL:045-221-2122 ホームページ:http://www.pacifico.co.jp/

第9回日本うつ病学会総会 フリーアクセス

ページ範囲:P.262 - P.262

会  期 2012年7月27日(金)~28日(土)

会  場 京王プラザホテル 〒160-8330 東京都新宿区西新宿2-2-1 TEL:03-3344-0111(代表)

第22回日本臨床精神神経薬理学会・第42回日本神経精神薬理学会合同年会 フリーアクセス

ページ範囲:P.262 - P.262

会  期 2012年10月18日(木)・19日(金)・20日(土)

会  場 ①栃木県総合文化センター 〒320-8530 栃木県宇都宮市本町1-8

     TEL:028-643-1000 ホームページ:http://www.sobun-tochigi.jp/

     ②宇都宮東武ホテルグランデ 〒320-8530 栃木県宇都宮市本町5-12

     TEL:028-627-0111 ホームページ:http://www.tobuhotel.co.jp/utsunomiya/

Asia Pacific Stroke Conference 2012(APSC2012)演題募集 フリーアクセス

ページ範囲:P.307 - P.307

会 期 2012年9月10日(月)~12日(水)

会 場 京王プラザホテル(東京都新宿区)

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次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.272 - P.272

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.310 - P.311

あとがき フリーアクセス

著者: 酒井邦嘉

ページ範囲:P.312 - P.312

 今年は,デンマークの建築家フィン・ユール(Finn Juhl;1912-1989)の生誕100周年にあたる。フィン・ユールは,国連本部会議場やスカンジナビア航空機の内装をはじめ,家具などのデザイナーとしても世界的に有名で,機能主義の伝統に群れることなく,あくまで独自の「機能美」を追究した孤高の天才であった。彼の誕生日である1月30日あたりから,100周年記念の催しが始まっている。フィン・ユールが自ら設計した自邸は美術館の一部として公開されており,その調度品の全体がみごとに調和している。

 フィン・ユールがデザインした家具といえば,100種を超える椅子が中心である。中でも「フィン・ユールの45番」と年号で呼ばれるイージー・チェア(安楽椅子)は,彼が初めて独立して建築事務所を開いた年にデザインしたもので,「世界で最も美しいひじ掛けを持つ椅子」と称賛されてきた究極の椅子である。私は「椅子のストラディヴァリ」と呼んで愛用している。あらゆる部分が流麗な曲線でデザインされており,革新的な構造上の工夫を随所に施すことで,座と背が一体となってひじ掛けのフレームから離れ,空中に浮遊しているかのようにみえる。この浮遊感を与える軽やかさが,「座り心地」という意識に直接響くのであろう。「フィン・ユールの53番」では,斬新な凹みがひじ掛けに掘り込まれており,安定してひじを支えるようにデザインされている。これらの椅子の設計図面は水彩で丹念に描かれていて,ため息が出るほど美しい。

基本情報

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1344-8129

印刷版ISSN 1881-6096

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