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雑誌目次

雑誌文献

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩64巻9号

2012年09月発行

雑誌目次

特集 高次脳機能イメージングの脳科学への新展開

フリーアクセス

ページ範囲:P.977 - P.977

特集の意図

 現在のイメージングによる高次脳機能研究では,他の医学の発展形式とは逆の流れがみられる。つまり,基礎研究が花開いて臨床応用につながるのではなく,臨床技術の応用によって,高次脳機能の解明が進んでいる。本特集では,その流れに注目し,てんかん外科手術の術前検査として行われている,侵襲性の高い高次脳機能イメージングを応用した手法を中心に,最近の高次脳機能イメージング研究の新展開を紹介する。最後に,非侵襲的な脳機能イメージングの中でも目が離せないNIRSによる新しい知見も取り上げた。

皮質-皮質間誘発電位を用いたヒト大脳皮質間結合の探索

著者: 松本理器 ,   國枝武治 ,   池田昭夫

ページ範囲:P.979 - P.991

はじめに

 皮質間ネットワークは,てんかん焦点からの発作発射の脳葉内・間の投射の理解に重要であると同時に,システムとしての高次脳機能の発現に深く関わる。システムとしての脳機能の解明には,各々の大脳皮質領野の皮質機能に加え皮質領野間のネットワークの理解が必須となる。ヒトの脳については21世紀に入るまでは,19世紀末にマクロの病理所見から得られた長・短の連合・交連線維の存在がその知見の中核をなしてきた。近年,拡散強調画像の進歩により,大脳白質の水分子の拡散異方性を応用した白質線維追跡法(diffusion tensor tractography:DTT)が考案され,連合・交連線維を生体脳で可視化(“in vivo dissection”)することが可能となり,機能的脳神経外科の錐体路・弓状束の術前評価などに臨床応用されつつある1,2)。これはサルで用いられる侵襲的なトレーサーの手法によって得られる情報に匹敵する可能性を示す。

 しかしこの方法では,皮質直下では線維が細くなり信号雑音比が低下するため,“tract”として同定された線維束を特定の皮質にまで追跡するのは困難であり,焦点皮質からのてんかん性放電の伝播様式や高次脳機能を担う皮質間ネットワークといった,特定の皮質領野間における皮質間結合の探索への応用には限界がある。筆者らは,てんかん外科の術前評価のために留置した硬膜下電極からの単発皮質電気刺激を用いて,皮質-皮質間伝播(cortico-cortical propagation)と判断される短潜時の誘発電位(皮質-皮質間誘発電位cortico-cortical evoked potential:CCEP)を隣接・遠隔皮質から記録することにより,皮質領野間のネットワークを機能的にin vivoで調べる手法を報告し,臨床応用してきた3,4)。単発皮質電気刺激は皮質間結合の同定法としてだけではなく,英国のAlarconら5)を中心にてんかん原性の評価にも応用が開始され,この10年の新たな侵襲的神経生理学的検査として注目されている。

 本総説では,CCEPの方法,本手法による脳機能ネットワークの同定,てんかん焦点の興奮性の変容につき概説する。

皮質電気刺激―言語野の同定

著者: 鈴木匡子

ページ範囲:P.993 - P.999

はじめに

 皮質電気刺激による脳機能マッピングの歴史は長い。19世紀末に,難治性てんかんに対する手術においてヒトでの皮質電気刺激が始まった1)。言語機能に関しては,1935年にJefferson2)が角回の電気刺激により失語症状が誘発されたと記載しているのが最初と考えられる。その後,Penfieldら3)は,術中の皮質電気刺激により誘発される症状を多くの症例で詳細に記述し,その手法を広めた。

 現在では皮質電気刺激による脳機能マッピングは,個々人における機能野を同定する最も信頼し得る方法の1つとして臨床的に使われている。この手法が安全に行えるようになった結果,以前は術後の機能障害のため切除不能と考えられていた部位を手術することが可能となってきた。術後の機能障害を最小限にするため,各国で皮質電気刺激による機能マッピングが行われている。最近,わが国でも覚醒下手術における皮質電気刺激を用いた機能マッピングのガイドライン4)が発表された。

 一方,言語機能の神経基盤に関しても,皮質電気刺激によるマッピングはさまざまな知見をもたらしてきた。言語ネットワークの個体による多様性は,皮質電気刺激による個々人のマッピングで明瞭に示された5)。また,白質の電気刺激により言語領野を結ぶ神経線維束の働きが直接的に確認されるようになってきた6-11)

脳皮質電位と機能的MRIによる言語・記憶機能ダイナミクス

著者: 鎌田恭輔 ,   國井尚人 ,   広島覚 ,   太田貴裕 ,   川合謙介 ,   斉藤延人

ページ範囲:P.1001 - P.1012

はじめに

 ヒト高次脳機能は,複数の脳領域活動が複雑に連動しているものと考えられている。脳は機能ダイナミクスが複雑であるため,生物の単一臓器として唯一,“脳-科学(neuroscience)”という探求すべき科学分野として注目されている。そこには臨床医,基礎医学者,さらに工学系などの異なるバックグランドを持つ科学研究者が集い,さまざまな手法を用いて脳機能解析に挑んでいる。

 そのアプローチ法は侵襲的手法と非侵襲的手法に分かれるが,特にヒト脳機能局在方法としては,主に患者を対象とするため,臨床的目的で確実なマッピング法である侵襲的手法がゴールドスタンダードとなっている。この侵襲的手法は開頭して直接脳皮質を電気刺激する脳皮質電気刺激法(electrocortical stimulation:ECS)が代表的である。また,難治性てんかん患者において焦点同定のために硬膜下電極を留置して,異常脳発射源の同定,ECSによる機能マッピングを行う試み,さらに近年ではさまざまな認知課題を行いながら脳皮質電位(electrocorticography:ECoG)を計測する認知ECoG研究が報告されている。ECoGは従来の脳波とは異なり脳深部の電位や60Hz以上の高周波成分の検出も可能になった1-4)。その一方で,侵襲的手法から非侵襲的手法の代表である機能的MRI(functional magnetic resonance imaging:fMRI)とECSとの比較検討も散見されるようになりつつあるが5,6),いまだ十分な結論は得られていない。臨床研究で培われた検証手法を,基礎科学に応用できるようにより侵襲の少ないものにし両者の橋渡しを目指すことは,neuroscienceの今後の発展に寄与するものと考えられる。

 ECSによる脳機能マッピングの代表的な仕事は1954年にPenfieldとJasperらにより行われ,一次運動・感覚野における詳細な機能局在は大脳皮質小人間像(cortical homunculus)として広く知られている7)。その一方で本手法は開頭術が必要であり,また電気刺激は常に痙攣発作誘発のリスクがあるため,いまだに適応は極めて限られている。また,電気刺激強度,認知課題の選択,検査時間の制限なども本手法をより困難なものにしている。

 近年は硬膜下電極より計測したECoGから,さまざまな脳信号抽出法が試みられている。Croneら1),Towleら8)は10例ほどの患者の限定した脳領域において,文字読み課題ECoGで80Hz程度の高周波成分(γ帯域)変動の報告をした1,8)。彼らはγ成分増加領域にECSを行うことによって発語停止を誘発することで,γ帯域の臨床的重要性を示唆した。しかし,いまだに非侵襲的脳機能画像との比較はほとんどなく,ECoG計測,ECSにおいて,言語,記憶などの複数の高次認知課題は用いていないため高次脳機能ネットワークの解明には言及していない。

 臨床用1.5T装置で行うことができるfMRIは,比較的簡便に,かつ高い信号・雑音比を有する信号を得ることができる。これにより単純な運動,視覚などの一次脳機能に加え,言語など高次脳機能の局在研究に応用されるようになった9)。fMRIは主に脳組織内血流の変化に伴う酸化ヘモグロビン/還元型ヘモグロビン比(blood oxygenation level dependent:BOLD)を捉えているため,電気的な脳活動を直接反映しているわけではない。PET,NIRSもfMRIとは感度や時間分解能の違いはあるが,原理的には脳血流変化に基づいた信号を捉えている。

 本稿では頭蓋内電極留置下の患者にさまざまな課題を行うことで,運動,言語関連,記憶関連機能の画像化を試みた例を紹介する。個々の患者において行った課題,提示刺激で誘発されたECoGの時間的・空間的広がりのパターン化を行った。特に記憶関連ECoGの有無と手術による記憶障害出現程度について比較した。また,電極留置前に行った認知関連課題fMRIとECSの結果との比較により,その精度,信頼性に関する検討も行った。

 さらに複数の自動判別関数を用いて課題別ECoG反応のクラス分けに応用し,より効率的な脳信号の抽出を試みた。また,患者間で留置電極位置にばらつきがあるため,標準脳にECoG電極位置座標を変換・重畳した。これにより標準脳上に高解像度のECoGの時間的変化過程を描画した。これらを組み合わせることにより,言語,記憶機能野の同定,および典型的な認知ECoG反応ダイナミクスを解析する方法を開発したので報告する。

てんかん外科治療における高次脳機能イメージングの役割

著者: 川合謙介

ページ範囲:P.1013 - P.1022

はじめに

 脳科学研究の目的は,ヒトの脳がいかに機能するかを解明し,さらに得られた知見を脳神経疾患の治療に役立てることである。高次脳機能イメージングも,脳科学研究に用いられるのみでなく,神経疾患の臨床においても欠くことのできない存在となっている。

 てんかんは,患者の年齢が生下時から高齢までと幅広く,患者数の多い神経疾患である。てんかんの診断治療と脳科学との関わりには長い歴史があるが,最近の高次脳機能イメージングは,てんかんの診断治療の中でも特に外科治療の術前検査における意義が大きい。

 本稿では,実際の症例を提示して,てんかん術前検査における高次脳機能イメージングの意義を検討したうえで,各検査について概説する。

近赤外分光脳機能計測の現状と展望―臨床応用研究,認知神経科学からの知見

著者: 皆川泰代

ページ範囲:P.1023 - P.1032

はじめに

 今世紀に入って現在までの10年ほどの間に多チャンネルの近赤外分光法(near-infrared spectroscopy:NIRS)は,高次脳機能研究においてその特徴を活かした新しい研究を展開してきた。その内容は認知神経科学をはじめとして脳神経医学,精神医学,リハビリテーション医学,薬理学と多岐にわたる。本稿ではそれらNIRSの特性を活用した研究の潮流,それらの新しい研究が提供してきた知見,臨床における活用法について概説する。研究の中で浮かび上がってきた問題,今後取り組むべき課題についても適宜触れる。

 紙幅が限られているため,すべての領域について詳述はできないが,本稿ではとりたてて本特集のトピックに相応しいヒトの高次脳機能の最たる例,「言語脳機能」に着目し,言語機能を支える脳内基盤の発達について得られた最新の知見を中心に述べる。具体的には,乳児を対象にしたNIRS研究が示してきた生後1~2年内の音声処理機能についての大脳半球の側性化の過程,そして乳児の安静時の脳結合,音声言語処理に関わる脳機能結合の研究を紹介する。ヒト発達初期における言語の脳機能や側性化に関する知見は,成人の言語脳機能の先駆体としての脳内機構ばかりでなく,最も神経細胞やシナプスが豊富な時期の柔軟な脳の可塑的変化をも示し,ヒトの大脳に秘められた大いなる潜在能力を改めて認識させてくれる。

特別鼎談

ウィルソン病100年

著者: 神田隆 ,   児玉浩子 ,   廣瀬源二郎

ページ範囲:P.1035 - P.1046

本年は,ウィルソン(Samuel Alexander Kinnier Wilson;1878-1937)が後にウィルソン病と呼ばれることになる進行性レンズ核変性症を『Brain』誌に発表してから,ちょうど100年にあたる。ウィルソン病の発見は,錐体外路疾患という概念の発見であるとも考えられ,1つの疾患が定義された以上の意味を持つ。そこで本誌はこの100年間の流れを総括すべく鼎談を企画した。ウィルソンの人物像から,ウィルソン病および錐体外路疾患の歴史,現在,ウィルソン病に対する治療がどこまで進んでいるのかまでお話しいただいた。

総説

混合型認知症の診断と治療

著者: 羽生春夫

ページ範囲:P.1047 - P.1055

はじめに

 アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)と血管性認知症(vascular dementia:VaD)は老年期の代表的な2大認知症であるが,前者は変性疾患として後者は脳の循環障害として臨床病理学的には対極に位置し,典型例に限れば鑑別は難しくない。ところが,日常の臨床では,脳血管障害を伴うADは稀ではなく,一方VaDと診断されても背景にAD病変が潜在し,臨床像や経過を修飾している症例は少なくない。特に,高齢者では純粋なADやVaDはむしろ少なく,このような合併例または混合型といわざるを得ない症例が多いのが実情といえる。しかし実際に,その臨床診断は難しく,少なくとも臨床所見や経過だけから正しく診断することは困難である。また,混合型認知症の治療や対応については必ずしもコンセンサスが得られているわけではない。

 そこで本稿では,混合型認知症の診断と治療を中心に現状の問題点を含めて概説する。

7テスラMRIによる脳神経画像診断の新しい展開

著者: 佐々木真理 ,   工藤與亮 ,   上野育子 ,   椛沢宏之 ,   松田豪

ページ範囲:P.1057 - P.1062

はじめに

 MRIの進歩はとどまるところを知らず,超高磁場7テスラ(T)MRI(1Hの共鳴周波数:300MHz)の時代がいよいよ始まろうとしている。ヒト用7T MRIは世界で約40台が稼働しており,本学にも国内で2台目の7T装置(MR950,GE Healthcare)が導入され,2011年4月より稼動を開始した。本稿では7T MRIの特徴と今後の可能性について,われわれの初期経験を交えて概説する。

症例報告

89歳高齢発症の単純ヘルペス脳炎―アシクロビル投与で寛解したが,2カ月後再発し死亡した1例

著者: 鈴木馨 ,   庄司紘史 ,   本藤良

ページ範囲:P.1063 - P.1068

はじめに

 単純ヘルペス脳炎(herpes simplex encephalitis:HSE)高齢発症例の報告が増加傾向にある。筆者らは脳梗塞後左半身麻痺,寝たきり状態の89歳女性で,調べ得た範囲において国内最高齢のHSE例を経験した。アシクロビル(acyclovir:ACV)点滴でいったん寛解したが,治療終了2カ月後に再発し,再発時もACVを投与したが改善なく死亡した。その経過について報告し,若干の考察を加える。

痙攣重積後に一側大脳皮質の広範な萎縮と選択的神経細胞壊死を呈したレヴィ小体型認知症の1剖検例

著者: 岩崎靖 ,   森恵子 ,   伊藤益美 ,   三室マヤ ,   吉田眞理

ページ範囲:P.1069 - P.1074

はじめに

 痙攣重積後に大脳皮質の広範な神経細胞脱落とグリオーシスを呈する病態は選択的神経細胞壊死(selective neuronal necrosis)と呼ばれ,低酸素脳症による大脳皮質の層状壊死(laminar necrosis)や脳循環不全による汎壊死(pan-necrosis)とは病理学的に区別される1,2)。臨床所見や画像所見に関する報告は多いが3,4),発症機序については不明な部分も多い。

 筆者らは痙攣重積後に一側大脳皮質の広範な萎縮と変性像,対側小脳半球皮質に斑状の変性像を呈し,選択的神経細胞壊死の慢性期変性像と考えられたレヴィ小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)の1剖検例を経験したので,臨床経過や病理学的所見を対比検討し,文献的考察を加えて報告する。

ポートレイト

サロモン・ハキム―正常圧水頭症への功績

著者: 稲富雄一郎

ページ範囲:P.1075 - P.1078

はじめに

 多くの水頭症では頭蓋内圧が上昇している。しかし水頭症の中に,頭蓋内圧が正常である一群が存在する。そのような一群,すなわち正常圧水頭症(normal pressure hydrocephalus:NPH)は,いわゆる三徴と称される歩行障害,認知症,排尿障害をきたし,画像上脳室の拡大を呈する症候群である。

 しかし本症候群が認知され,その患者にシャント手術という福音がもたらされるためには,一人の傑出した医師の登場が不可欠であった。本稿ではこの正常圧水頭症の病態解明,さらにその最も重要な治療法であるシャント術の開発に多大な功績を残した脳神経外科医,サロモン・ハキム(Salomón Hakim)の生涯を紹介する。

 なお,本稿は文献1)に挙げたWallensteinの論文に負うところが大である。同論文引用(本稿ではその箇所の提示は割愛する),および拙著出版に際しては,出版社Wolters Kluwer社と筆頭著者Matthew B. Wallensteinの承諾を得た。このWallenstein論文はハキムをはじめ主要な関係者へのインタビューも含め,実に痛快この上ない内容であり,是非一読をお勧めする。

学会印象記

16th International Congress of Parkinson's Disease and Movement Disorders(2012年6月17~21日,ダブリン)

著者: 宇川義一

ページ範囲:P.1080 - P.1081

 MDS(The Movement Disorder Society)の学会に出席していつもまず感じるのは,時間の経過である。この学会の前身となるヨーロッパでの学会の第1回大会は,ローザンヌで開催された。今は亡き故マースデン教授が音頭をとって始まった。そのとき,私はロンドンへの留学の交渉でマースデン教授と話をすることになっていた。学会の重鎮である教授と話す機会を持つことが難しかった記憶がある。25年以上前のことである。この間の運動異常に関する研究の進歩はめざましいもので,本学会でも疾患の病態,分子生物学に基づく機序や新しい治療に関する講演が数多く見かけられる。これに対して,生理学に関する講演がめっきり減った感じがあり,生理を専門にする筆者にとっては複雑な心境であるとともに,気が引き締まる思いである。ローザンヌの大会ではジーパン姿で,振戦の生理の話をしていたロスウェル教授が学会の執行部になり,日本の梶(龍兒)先生と一緒に運動障害への感覚系の関与という生理に関する講演をしていた。

 今回の学会はダブリンで開催された。ダブリンには一度他の学会で訪れたことがあり,特に準備もなく,ホテルの位置・学会場の位置など確認せずに訪問したが,行きの飛行機の中で場所を確かめて,愕然とした。学会場は市の中心部から少し離れたところであり,『地球の歩き方』の地図には記載されていなかった。また,予約したホテルも学会場のそばであるが,案の定地図に出ていなかった。方向感覚のなさに自信のある私は一人旅であり一気に不安になった。結局,同じ飛行機に横地先生ご夫妻がおられ,頼れる相手を見つけて安心した次第である。

連載 神経学を作った100冊(69)

フルニエ『梅毒に起因する脊髄癆』(1882)

著者: 作田学

ページ範囲:P.1082 - P.1083

 フルニエ(Jean-Alfred Fournier;1832-1914)は1832年3月12日にパリで生まれた(Fig.1)。1852年にパリの大学を卒業し,オピタル・デュ・ミディでリコール(Philippe Ricord;1800-1889)のもとアンテルヌとして働き始めた。リコールは梅毒と淋疾が異なること,梅毒の期別の進行様式を明らかにしたことで知られている。1867年に学位を取り,オテル・デューのグリソール(Augustin Grisolle;1811-1869)のもとで働いた。1876年にサン・ルイ病院で最初はシェフ・ドゥ・セルビス(部長)として,やがて1879年に皮膚病と梅毒の教授に選ばれた。また,Société française de prophylaxie sanitaire et morale(公衆衛生・道徳予防医学会)の設立にもあずかった。彼の努力によってサン・ルイ病院はフランスにおける性病研究の中心となり,多数の症例をもとに次々と業績を発表していった。

 1879年に『脳の梅毒』1),1882年には本書『梅毒に起因する脊髄癆』2),1885年に『梅毒に起因する脊髄癆の前失調期』3),1890年には『梅毒と結婚』第2版を著した4)。このほかにも『梅毒の治療』,『遺伝性遅発性梅毒』,『梅毒概論』の著作がある。

お知らせ

第6回レビー小体型認知症研究会(レビー小体発見100周年記念大会) フリーアクセス

ページ範囲:P.999 - P.999

日 時 2012年11月10日(土)

会 場 新横浜プリンスホテル(横浜市港北区新横浜3-4 Tel:045-411-1111)

Neurorehabilitation in Okayama, 2013 フリーアクセス

ページ範囲:P.1032 - P.1032

会 期 2013年2月16日(土) 第2回日韓ニューロリハビリテーションカンファランス(2nd Japan-Korea NeuroRehabilitation Conference)

    2013年2月17日(日) 第4回日本ニューロリハビリテーション学術集会

会 場 岡山コンベンションセンター ママカリフォーラム(岡山市北区駅元町)

STROKE2013 フリーアクセス

ページ範囲:P.1055 - P.1055

会 期 2013年3月21日(木)~3月23日(土)

会 場 グランドプリンスホテル新高輪〔東京都港区高輪3-13-1 Tel:03-3442-1111〕

書評

「てんかん学ハンドブック 第3版」―兼本浩祐●著 フリーアクセス

著者: 中里信和

ページ範囲:P.1034 - P.1034

 本書の著者,兼本浩祐先生にはファンが多い。患者や同僚たちのほか,彼の講演を聞いた聴衆たちが次々とファンになるのである。著者の豊富な知識と経験だけではなく,人間的な魅力に惚れていくのである。直感的とも感じられる鋭い洞察力,患者に対する優しさ,そして軽妙な語り口。同じ理由で本書『てんかん学ハンドブック』は,前版から多くのファンを抱えていた。簡潔・明瞭で,かつ楽しい教科書というものは,そうあるものではない。

 てんかんは有病率約1%の「ありふれた病」であるが,けっして安易に診療できる疾患ではない。日本の患者の約8割は,てんかん診療の専門的トレーニングを受けていない医師によって治療されているといわれる。したがって,一部の専門医のためだけの教科書よりは,非専門医や医学生,あるいは患者が手に取ってみたくなるような教科書が必要とされていた。

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次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1068 - P.1068

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.1084 - P.1085

あとがき フリーアクセス

著者: 酒井邦嘉

ページ範囲:P.1086 - P.1086

 いわゆる運動の類いには無縁の生活を送ってきた私だが,最近ただ1つ,のめり込んでしまったスポーツがある。それはロードバイクという自転車でのサイクリングだ。実際にオホーツク沿岸212kmのロングライドに参加したところ,実に楽しくて,つらいと思うところがまったくなかったのである。このように,どんな苦労も楽しく思えてしまえるような心の持ち方は,研究などの仕事に共通して必要な精神力なのかもしれない。サイクリングのお陰で,生まれて初めてスポーツという自己鍛錬の喜びを知ったのだから,我ながら人は変われば変わるものである。

 ヨーロッパでサッカーに次ぐ人気のスポーツといえば,自転車のロードレースであろう。中でも,3週間におよぶツール・ド・フランスは,名実ともに世界最高峰のイベントであり,今年で99回目を迎えた。日本人ではただ1人,新城幸也選手が3度目のツール完走を果たし,その力走ぶりは特に印象的であった。自転車のロードレースでは,各チーム中の1人のエースを勝たせるために残りのメンバーが献身的にアシストする。そして,他チームで起きたパンクやメカトラブルに乗じて勝ちに行くのは紳士協定に反する,といった暗黙の美学もあって面白い。

基本情報

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1344-8129

印刷版ISSN 1881-6096

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