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雑誌目次

雑誌文献

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩65巻12号

2013年12月発行

雑誌目次

特集 プロテイノパチーの神経病理学

フリーアクセス

ページ範囲:P.1423 - P.1423

特集の意図

 長らく原因不明であった神経変性疾患の多くが,いくつかの種類の蛋白の機能異常に基づく代謝疾患であることが明らかになり,神経症候や神経病理学的所見によって分類されてきたこれらの疾患が新たな局面を迎えている。しかし,この生化学・分子生物学の勝利で神経変性疾患のすべてが語りうるのだろうか。この異常蛋白はどこから来て,どこに凝集し,なぜこのような形をしているのか,この蛋白を消し去る方法はあるのかなど,神経変性疾患の克服に向けて今後解決すべき問題は山積みである。生化学的知見が明らかになった今こそ,病理形態学からの新たなアプローチがより重要なものになるとわれわれは考える。本特集では,神経変性疾患の鍵となる代表的な4つの蛋白に焦点を当て,このテーマに迫りたい。

―鼎談―カタチと蛋白―前編

著者: 中野今治 ,   髙尾昌樹 ,   神田隆

ページ範囲:P.1425 - P.1431

はじめに

神田 本号の特集は,「プロテイノパチーの神経病理学」というタイトルです。長い間,原因不明の神経変性疾患と呼ばれてきた疾患群の多くが,ここ20年余りの間に特定の蛋白の代謝異常症であるということが,明らかになってきました。しかも,その蛋白の種類は決して多くはなく,数多くの神経変性疾患が十に満たない数の原因蛋白に収斂してしまう可能性があります。

 このプロテイノパチーという言葉はいろいろなところで聞く機会が多くなり,悪く言えば安易に使われるようになってきたのではないかと思いますが,私が疑問に思っているのは,シンプルに,神経変性疾患をプロテイノパチーと呼んであたかも結論が出たようにしてしまっていいのかということです。疾患の多様性だとか,治療へのヒントに関して,形態学にはまだまだやるべきことがあるのではないかと思い,この特集と鼎談を企画いたしました。これからの神経病理学に何が求められるかについてもご意見を伺うことができたらと思います。

βアミロイドの神経病理―「脳への沈着」と「脳からの排出」

著者: 若林孝一 ,   三木康生

ページ範囲:P.1433 - P.1444

はじめに

 アミロイドとは,コンゴーレッド染色で橙赤色に染まり,偏光顕微鏡で緑色の複屈折を示し,電子顕微鏡で8~15nmの枝分かれのない線維の集積としてみられる物質の総称である。βアミロイド(amyloid β-protein:Aβ)はGlennerら1)により脳血管アミロイドから分子量4kDaの新規蛋白質として1984年に同定された。その翌年,Mastersら2)は老人斑(senile plaque)も同じ蛋白質からなることを蛋白化学的に証明した。大脳皮質におけるAβの広範な蓄積はアルツハイマー病の病理診断には必須の所見であり,これを欠くものはアルツハイマー病とはいえない。

 老人斑を構成するAβの主体は細胞外に集積したアミロイド線維であるが,近年,Aβの蓄積は細胞外だけでなく細胞内にも起こり,さらに不溶性のアミロイド線維よりも可溶性のアミロイド(Aβオリゴマー)が注目されている。本稿では神経病理学的観点からAβが沈着する病態について概説し,Aβと神経細胞死の関係,グリア細胞や脳血管系によるAβの除去,さらにAβを標的とするアルツハイマー病治療の可能性について述べてみたい。

タウオパチーの神経病理学

著者: 吉田眞理

ページ範囲:P.1445 - P.1458

はじめに

 神経細胞を含む真核細胞の主要な細胞骨格には,アクチンフィラメント,中間径フィラメント,微小管の3種類がある。細胞骨格は,必要に応じて短時間の間に形成されたり,壊れたりするダイナミックな構造であり,適当な大きさの単位蛋白分子が重合と脱重合を繰り返す。微小管は,α型とβ型のチュブリンが1個ずつ結合したヘテロダイマー(heterodimer)と呼ばれる二量体が重合して形成される。生体内で微小管に結合して,その安定性や形状を制御する役割を果たしているのが微小管結合蛋白(microtubule associated protein:MAP)であり,タウ蛋白質は,分子量約5万のチュブリン結合蛋白(tubulin associated unit:tau)として同定された1)

 神経細胞の胞体内や軸索内には微小管やニューロフィラメントの網目構造が張り巡らされているが,タウは微小管をつなぐ架橋構造を形成する蛋白の一種である。タウは微小管に結合して重合を促進し,細胞骨格の形成と維持に重要な役割を果たす2)。微小管は,胞体内や軸索で細胞小器官や小胞,分子などを運ぶ分子輸送のレールとして働き,タウは軸索輸送のレールである微小管を安定化させる。タウは生理的には可溶性に富み,正常なリン酸化は神経突起伸長や軸索輸送などの微小管の動態を調節している。タウは主として軸索に多く局在するが,細胞体や樹状突起,アストロサイトやオリゴデンドログリアにも存在する3,4)。最近,タウは神経細胞や非神経細胞の核内にも存在し,酸化ストレスや熱ストレスが神経細胞の核内に非リン酸化タウを誘導することが報告されている5)。本稿ではタウオパチーの代表的疾患の病理像を概説する。

αシヌクレイン病変のはじまりとひろがり―パーキンソン病を中心に

著者: 内原俊記

ページ範囲:P.1459 - P.1475

はじめに

 シナプスに豊富に存在するαシヌクレインは神経細胞に沈着し,パーキンソン病やレヴィ小体型認知症に特徴的なレヴィ小体(Lewy body)を形成する。疾患関連蛋白がこうして特徴的病変をつくる過程と細胞死の関連を中心にプロテイノパチーの概念は展開されてきた。しかし同様にαシヌクレインが沈着する多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)の病態はパーキンソン病とは異なり,疾患関連蛋白から両者の病態を区別するのは困難である。

 本稿では細胞体のレヴィ小体形成に先行して起こる軸索末端(前終末)の機能,形態の早期変化がパーキンソン病を特徴づける病態であることに注目する。レヴィ小体が好発する神経細胞は分岐の豊富な長い軸索を持つという背景構造が共通しており,その遠位末端になるほど及ぶ影響がいっそう強調される。シナプス機能の脱落,軸索内のαシヌクレイン沈着が相互に関連しながらパーキンソン病早期に起こり,臨床症状の発現につながることが推測される。関与する神経伝達物質は異なっても,豊富な軸索分岐に対応する系が障害されるパーキンソン病の臨床症状は局在性に乏しく,影響も全体的な点で共通する。この病態を念頭にシナプス前終末の早期変化を捉えて診断できれば,細胞死が起こる前の治療介入も可能になる。

TDP-43プロテイノパチーの神経病理

著者: 秋山治彦 ,   長谷川成人

ページ範囲:P.1477 - P.1489

はじめに

 TDP-43は前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration:FTLD)と筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)を病理学的に特徴づける分子である。本稿ではまずFTLDという,ややわかりにくい疾患群の歴史的背景を説明し,次いでTDP-43異常蓄積の発見とその後の病理学的研究の展開について述べる。後半では,さまざまな遺伝子や蛋白の異常,実験室モデルなどからみたTDP-43プロテイノパチーの病態解析の現状について解説を試みる。FTLDやALSにおけるTDP-43異常蓄積の発見は,神経変性疾患に関わる新たな研究領域の出現をもたらすことになった。

―鼎談―カタチと蛋白―後編

著者: 中野今治 ,   髙尾昌樹 ,   神田隆

ページ範囲:P.1491 - P.1495

TDP-43のインパクト

神田 本特集でもTDP-43には1項を割いています。TDP-43の発見というのは,神経病理学に非常に大きなインパクトを与えたと思うんですけれども,髙尾先生,いかがですか。
髙尾 筋萎縮性側索硬化症(ALS)に出現する封入体がTDP-43から構成されているということだけではなく,ALSがほかの疾患をかなり包含するという考え方につながりましたよね。前頭側頭葉変性症(FTLD)も包含して,非常に多くの病気の,おそらくは一番の原因になっているだろうということもわかった。脊髄小脳失調症(SCA)の一部でも出てくるし,私が最近経験したSCA31でも出てくるし,加齢に伴う海馬崩壊でも認めます。そういう意味ではタウに続くぐらいのインパクトのあるプロテインという印象があります。

総説

アストロサイトとニューロンの代謝コンパートメントからみたパーキンソン病の病態と治療

著者: 髙橋愼一 ,   関守信 ,   鈴木則宏

ページ範囲:P.1497 - P.1508

はじめに

 パーキンソン病(Parkinson disease:PD)は,黒質緻密層のドパミンニューロンの変性・脱落に伴って生じる線条体ドパミン量低下に伴う運動症状を中核とする変性疾患である1)。黒質ドパミンニューロンの変性が,いかにして惹起されるかについて完全に明らかとなったわけではないが,ミトコンドリア機能障害が関与する証左が集積されている2-4)。特発性PDにおけるミトコンドリア機能異常は,1989年,Schapiraら5)によって,PD患者の剖検脳において呼吸鎖複合体Ⅰの機能低下として生化学的手法から明らかにされ,同年,わが国のMizunoら6)も呼吸鎖複合体Ⅰの免疫ブロッティング低下から同様の結論を導いている。実験的PDモデルに用いられるMPTP(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydro-pyridine)は,代謝後にMPP+として選択的な複合体Ⅰ阻害作用を呈し,MPTP全身投与は黒質ドパミンニューロンの選択的障害とともにパーキンソン症状を惹起する7)

 特発性PDの病理学的な疾患ホールマークと考えられるレヴィ小体,その構成成分であるαシヌクレインとミトコンドリア機能異常の密接な関連についても知見が集積しつつある8-11)。また,家族性PDにおいてもミトコンドリア機能異常が示唆されており12-13),現在までに同定された変異遺伝子(座)(Table:PARK1~18)およびその産物の機能解析から,少なくともparkin(PARK2)14),PINK1(PARK6)15),DJ-1(PARK7)16),LRRK2(PARK8)17),Omi/HtrA2(PARK13)18)でミトコンドリア機能異常との関連が示されている。

 ミトコンドリア機能障害と活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)は正常者の老化とも密接に関連し19,20),加齢を最大のリスクファクターとする特発性PD21,22)のみならず,若年者にも発症しうる家族性PDの双方においてミトコンドリア機能異常が重要な役割を果たすと推論することは理に適っている。ミトコンドリアはATP産生の場であり,脳はもともと高いエネルギー代謝を持つ臓器であるため,グルコースを基質としたエネルギー代謝に伴うROSによる酸化ストレスを受けやすい23-25)。脳は,酸化ストレスへの生得的な内因性保護機構を有すると考えられるが,特発性PD,家族性PDともにその破綻の結果とも解釈できる。

 本稿では,ニューロンにおけるグルコース代謝のサポートと酸化ストレスへの保護機構の中核をなすアストロサイトの生理機能に注目し,PDのミトコンドリア機能障害仮説と治療戦略を,ニューロンとアストロサイトからなる代謝コンパートメントからまとめる。

症例報告

肺動静脈瘻を介した奇異性脳塞栓症によりspectacular shrinking deficitを呈した1例

著者: 伊藤愛 ,   伊井裕一郎 ,   東川貴俊 ,   村嶋秀市 ,   冨本秀和

ページ範囲:P.1509 - P.1513

はじめに

 肺動静脈瘻は右左シャントを形成し,稀ではあるがヴァルサルヴァ負荷に関わらない奇異性脳塞栓症の原因となる1).脳塞栓症では,内頸動脈や中大脳動脈を閉塞した塞栓子が自然に溶解して末梢へ移動することにより,症状が劇的に回復する場合があり,spectacular shrinking deficit(SSD)と呼ばれ,心原性脳塞栓症によるものが多いと報告されている2-4).今回,筆者らは肺動静脈瘻を介した奇異性脳塞栓症によりSSDを呈した稀な1例を経験したので報告する.

術前腫瘍塞栓術と腫瘍摘出術により視野障害が段階的に改善した胞巣状軟部肉腫の後頭葉内脳転移の1例

著者: 五十棲孝裕 ,   木戸岡実 ,   李英彦 ,   深尾繁治 ,   伊藤清佳 ,   南川哲寛

ページ範囲:P.1515 - P.1520

はじめに

 胞巣状軟部肉腫(alveolar soft part sarcoma:ASPS)は脳転移しやすい悪性軟部腫瘍であるが,胞巣状軟部肉腫の発生頻度が稀であるため,実際に胞巣状軟部肉腫の脳転移病巣を治療する機会は多くない。一方,転移性脳腫瘍に対する塞栓術の報告は少なく,転移性脳腫瘍への塞栓術の評価は確定していない。

 胞巣状軟部肉腫は腫瘍内血管が極めて発達している腫瘍であることから,筆者らはこの腫瘍の後頭葉内脳転移病巣を持つ症例に対して,腫瘍摘出術の術前処置として,脳血管内治療による腫瘍塞栓術を施行した。その結果,腫瘍摘出術に際しての出血制御が容易となったことに加え,腫瘍塞栓術後および腫瘍摘出術後に段階的に視野障害の改善を得た。この症例につき文献的考察を加えて報告する。

1枚のスライド

小阪憲司

著者: 神田隆

ページ範囲:P.1521 - P.1527

こさか・けんじ。1939年生まれ。横浜市立大学名誉教授。メディカルケアコートクリニック院長。1965年金沢大学医学部卒,1966年名古屋大学医学部精神医学教室に入局。1975年東京都精神医学総合研究所副参事研究員,1977年ドイツマックス・プランク精神医学研究所特別研究員,1985年東京都精神医学研究所神経病理研究室主任。1991年横浜市立大学医学部精神医学講座教授。2003年同 名誉教授。

学会印象記

The 29th Congress of the European Committee for Research and Treatment in Multiple Sclerosis(2013年10月2~5日,コペンハーゲン)

著者: 新野正明

ページ範囲:P.1528 - P.1529

 多発性硬化症(MS)の学会は世界各地域に存在していることが特徴の1つで,日本が所属するアジアオセアニア地区にもThe Pan Asian Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis(PACTRIMS)があります。そのほか,北米(The Americas Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis:ACTRIMS)や中南米(The Latin American Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis:LACTRIMS)にもそれぞれ存在しますが,その中で最大の学会が,今回出席したヨーロッパの学会,The European Committee for Research and Treatment in Multiple Sclerosis(ECTRIMS)です。今年のECTRIMSは,デンマーク王国の首都コペンハーゲンで2013年10月2~5日の会期で開催されました(写真1)。

 MSおよびその類縁疾患だけの学会なのですが,例年多数参加し,今年もヨーロッパはもとより世界各地から参加者が集まりました。最近の参加者数は7,000人前後で推移していましたが,今年は93の国・地域から7,600名以上が参加したとのことで,過去最大の参加者数と思われます。これだけ大規模な学会ですので,開催する地域もそれなりの“おもてなし”を考えます。今年の学会のplenary sessionではデンマーク女王マルグレーテII世がご挨拶され,MSの克服への期待をお話しになり,この学会に対する国を挙げての意気込みが伝わってきました。コペンハーゲンは札幌よりも10度以上高緯度にあるため,札幌よりもやや肌寒く,日照時間が短い印象でしたが,学会場は多くの参加者で熱気にあふれていました。

書評

「今日の神経疾患治療指針 第2版」―水澤英洋,鈴木則宏,梶 龍兒,吉良潤一,神田 隆,齊藤延人●編 フリーアクセス

著者: 柳澤信夫

ページ範囲:P.1530 - P.1530

 このたび『今日の神経疾患治療指針第2版』が上梓された。これは1994年に出版された第1版の続編の形をとっているが,その内容はまったく一新され,過去十数年にわたる神経疾患診療の進歩をそのまま現した内容となっている。第1版では,現在の神経内科の診療領域に限らず,精神科,脳神経外科,リハビリテーション科など関連領域のテーマについても,幅広く,各々の専門家によって執筆された。

 このたび全面改訂された第2版では,過去十数年に大きく発展した頻度の高い疾患から希少疾患までの最新の治療が,基本的なガイドラインに沿ってていねいに,かつわかりやすく記述されている。本書の編集者は日本神経学会代表理事の東京医科歯科大学大学院水澤英洋教授を筆頭に,異なる専門分野の神経内科教授5名,脳神経外科教授1名からなり,①頻度の高い症候の病態と鑑別,②各種治療法の特徴と副作用,③個別疾患の治療法に分けて,各々の疾患,病態の専門家によって記述されている。

特別対談

1913―茂吉・プルースト・ヤスパース

著者: 岩田誠 ,   河村満 ,   菊池雷太

ページ範囲:P.1531 - P.1540

はじめに

河村 いまから100年前の1913年は,歌人で精神科医でもある斎藤茂吉(1882-1953)が最初の歌集『赤光』を出版した年です。同時に,フランスではマルセル・プルースト(Marcel Proust;1871-1922)が『失われた時を求めて』を出版しています。『失われた~』は,匂いが記憶を呼び覚ますという神経学的な背景を持った文学作品です。このように1913年は文学が,神経学または精神医学とかなり接近していた時代だったともいえると思います。

 また,同じ年に,カール・ヤスパース(Karl Theodor Jaspers;1883-1969)が『精神病理学原論』を書いています。この本は,岩田先生から教えていただいたのですが,のちの精神医学,神経学に大変な影響を与えた本です。本対談はこの辺りをテーマにすれば,岩田先生から楽しいお話が伺えるのではないかと思い,企画しました。どうぞ,よろしくお願いいたします。

連載 神経疾患の疫学トピックス・3

人差し指が短いのは筋萎縮性側索硬化症の発症リスクである。

著者: 桑原聡 ,   佐藤泰憲

ページ範囲:P.1542 - P.1543

今回は筋萎縮性側索硬化症における手指の長さ(2指と4指の比)を正常対照と比較した疫学研究を紹介する。2指と4指の長さ比は,胎生期におけるテストステロン暴露量と相関するといわれている。統計手法についてはladder of powers modelについて概説する。

神経学を作った100冊(84)

ヘイメイカー,ウッドホール『末梢神経外傷―診断の理論』(1945)

著者: 作田学

ページ範囲:P.1544 - P.1545

 ヘイメイカー(Webb Edward Haymaker;1902-1984)は,米国の神経学者である。南カロライナ州のクレムゾン大学とチャールストン大学で学び,次いで南カロライナ医科大学から1928年にM.D.の学位を受けた。しかしながら,残念なことに現在の南カロライナ医科大学のウェブサイトにはヘイメイカーの足跡は残っていない。1934年にマギル大学教授のペンフィールド(Wilder Graves Penfield;1891-1976)が新たに創設したモントリオール神経学研究所にフェローとして招かれた。ここで1年を過ごし,マギル大学から修士号を得た。その後カリフォルニア大学のサンフランシスコ校とバークレイ校で6年間神経解剖学の教鞭を執った1)。第二次世界大戦が勃発したため1942年に陸軍中尉として,ワシントンD.C.の陸軍病理学研究所に勤務することとなった。その後20年間をここで過ごし,陸軍中佐にまで昇格した。

 この間,今回紹介する末梢神経外傷についての書物を脳神経外科医のウッドホール(Barnes W. Woodhall;1905-1985)と共著で出版した2)。のちにデューク医科大学脳神経外科教授になったウッドホールは,多くの医師の協力を得て3,656例の神経損傷の回復過程について671頁ものモノグラフを出版している3)

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次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1513 - P.1513

投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.1546 - P.1547

投稿論文査読者 フリーアクセス

ページ範囲:P.1547 - P.1547

あとがき フリーアクセス

著者: 酒井邦嘉

ページ範囲:P.1548 - P.1548

 日照時間が短くなると,部屋の照明を使う時間が増える。筆者は昨年引っ越しをしたため,家のすべての照明を一から見直す機会を得た。身近にある照明だが,よく考えてみると盲点がいろいろあることがわかってきた。

 欧米の住居やホテルでは,リビングルームの天井に照明がついていないのがむしろ普通で,フロアランプとデスクランプが主たる照明である。それに,たいていは白熱電球が使われる。一方,日本では一般家庭用の白熱電球の生産が既に中止され,オフィスはもちろん家庭でも,蛍光灯の使用率が極めて高い。雰囲気を重視して明るさを抑えた飲食店などがある一方,蛍光灯を過剰に使用した大型店舗が目に付く。省エネで長寿命のLED電球も普及してきたが,白熱電球に比べると演色性(「電球色」であっても)や配光性に劣ることは,あまり知られていない。また,白熱灯なら部屋の広さから必要なワット数が割り出せるが,LED電球は白熱電球との換算が曖昧で,実際に取り付けてみないとわからない。近年の照明の変化には電力消費を抑えるという切実な事情があるのも確かだが,なぜ海外と日本で照明の使い方にこれほどの差があるのだろうか。

KEY WORD INDEX フリーアクセス

ページ範囲:P. - P.

基本情報

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1344-8129

印刷版ISSN 1881-6096

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