文献詳細
特集 Common diseaseは神経学の主戦場である―現状と展望
文献概要
Ⅰ.認知症の疫学
認知症というのは,大脳の病変によってもたらされる症候群をさすのであり,認知症という疾患が存在するのではない。認知症をきたした大脳疾患という意味で,包括的に「認知症」と称すことは,認知症という疾患があるかのような誤解を引き起こすことにもなりかねず好ましいとは思えない。しかし地域住民を対象とした疫学調査では原因疾患までの検討は難しく,「認知症」の有病率(正確には有症率)が検討されている。
『認知症疾患治療ガイドライン 20101)』では,わが国の65歳以上の高齢者における認知症有病率は3.8~11.0%である(グレードB)とされている。しかし厚生労働省研究班による2009~2012年度に全国8市町で行われた疫学調査の最新の報告2)では,65歳以上の高齢者のうち認知症の人は推計15%(95%信頼区間12~17%)と報告されている。2012年時点の65歳以上人口3,079万人に当てはめて計算すると,約462万人に上ると推定される。有病率は,74歳までは10%以下だが,85歳以上で40%超となる。この調査で示された有病率は,前回(1985年)の全国調査に基づいた2010年時点における推計の2倍,介護保険のデータに基づき厚生労働省が昨年発表した推計の1.5倍であった。これに加え,軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)の高齢者も13%,2012年時点で約400万人いると推計される。
認知症というのは,大脳の病変によってもたらされる症候群をさすのであり,認知症という疾患が存在するのではない。認知症をきたした大脳疾患という意味で,包括的に「認知症」と称すことは,認知症という疾患があるかのような誤解を引き起こすことにもなりかねず好ましいとは思えない。しかし地域住民を対象とした疫学調査では原因疾患までの検討は難しく,「認知症」の有病率(正確には有症率)が検討されている。
『認知症疾患治療ガイドライン 20101)』では,わが国の65歳以上の高齢者における認知症有病率は3.8~11.0%である(グレードB)とされている。しかし厚生労働省研究班による2009~2012年度に全国8市町で行われた疫学調査の最新の報告2)では,65歳以上の高齢者のうち認知症の人は推計15%(95%信頼区間12~17%)と報告されている。2012年時点の65歳以上人口3,079万人に当てはめて計算すると,約462万人に上ると推定される。有病率は,74歳までは10%以下だが,85歳以上で40%超となる。この調査で示された有病率は,前回(1985年)の全国調査に基づいた2010年時点における推計の2倍,介護保険のデータに基づき厚生労働省が昨年発表した推計の1.5倍であった。これに加え,軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)の高齢者も13%,2012年時点で約400万人いると推計される。
参考文献
1) 「認知症疾患治療ガイドライン」作成合同委員会(編), 日本神経学会(監): 認知症疾患治療ガイドライン 2010.医学書院, 東京, 2010
2) 社会保障審議会介護保険部会(第45回)資料6.認知症有病率等調査について. 都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応(厚生労働科学研究 筑波大学朝田教授). 厚生労働省ホームページ, 2013.6.6(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000033t43-att/2r98520000033t9m.pdf)
3) Yamada M, Mimori Y, Kasagi F, Miyachi T, Ohshita T, et al: Incidence of dementia, Alzheimer disease, and vascular dementia in a Japanese population: Radiation Effects Research Foundation adult health study. Neuroepidemiology 30: 152-160, 2008
4) 認知症施策検討プロジェクトチーム(主査: 藤田厚生労働大臣政務官): 今後の認知症施策の方向性について. 厚生労働省ホームページ, 2012.6.18(http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dementia/dl/houkousei-02.pdf)
5) United Council for Neurologic Subspecialties(UCNS)ホームページ(http://www.ucns.org/go/subspecialty/behavioral/accreditation)
6) 山崎 學: 平成24年6月18日厚生労働省認知症施策検討プロジェクトチーム(主査: 藤田一枝厚生労働政務官)の取りまとめ「今後の認知症施策の方向性について」の反論. 公益社団法人日本精神科病院協会ホームページ, 2012.7.26(http://www.nisseikyo.or.jp/opinion/teigen/547.html)
7) 厚生労働省老健局高齢者支援課認知症・虐待防止対策推進室: 認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)(平成25年度から29年度までの計画). 厚生労働省ホームページ, 2012.6.18(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002j8dh-att/2r9852000002j8ey.pdf)
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