文献詳細
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今月の表紙 フリーアクセス
著者: 河村満1 岡本保2 菊池雷太3
所属機関: 1昭和大学病院附属東病院 2富坂診療所 3汐田総合病院神経内科
ページ範囲:P.870 - P.871
文献概要
今月の表紙の写真は,Destarac3)の論文にあるものです。29歳の男性で,家族歴に異常はありません。9歳より書痙に罹患し,18歳で攣縮性斜頸を発症しました。20歳を過ぎると,下位筋の攣縮(spasm)が出現し,進行性に歩行障害がみられました。29歳の初診時,Destaracは彼の歩行をチェコの操り人形の様である,と述べました(Fig. 1左)。歩行時にみられる,下肢の異常運動と体幹の前弯がその理由です。左手を左頬に当てると,途端に姿勢が正されます(Fig. 1右)。この論文で,Destaracはもう1例を記載していますが,それは1901年に報告した17歳の女性4)の再掲です。斜頸・斜め骨盤(tortipelvis)(Fig. 2左),書痙,足攣縮(foot cramp)がみられ,左手を顎に,右手を骨盤稜に当てると姿勢が改善し(Fig. 2右),運動により増悪します。矯正手技の効果を示す2症例が同時に現れたということだと思います。Destaracの示したこれらの症例は,時にジストニー/ジストニア研究のマイルストーンと呼ばれることがあります5)。ブリソー,メージュらの精神性機序説に反対する人々によって,その典型例として位置づけられたのです。
参考文献
掲載誌情報