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書評
「プロメテウス 解剖学アトラス頭頸部/神経解剖 第3版」—坂井建雄,河田光博【監訳】 フリーアクセス
著者: 篠田晃1
所属機関: 1山口大学大学院医学系研究科神経解剖学
ページ範囲:P.1106 - P.1106
文献概要
今回の最新版では,特に神経解剖と歯科口腔領域で目を見張る拡充と改訂がなされている。通常,解剖学シリーズの神経解剖領域は,その構造と機能の複雑さが故に中途半端感が残り,他の神経解剖学アトラスや専門書に道を譲ることになる。今回の改訂では最新の情報が加わり,全体の構成が再編された。特に序論が充実し,全体が見わたせるようになり,複雑な中枢神経系の構造の学習への心構えができる。中枢神経系の用語集と要約の大幅な増ページもうれしい。初学者・学生諸君のみならず教師や研究者にとっても知識の整理として大変助かる。本書の神経解剖の章自体で神経解剖学の専門書・専門図譜のレベルに達している。また医学にとって盲点となりがちな口腔領域の充実した増ページも見逃せない。歯の発生と歯科診療の項が新たに追加され,X線写真と局所麻酔刺入点の写真も加わった。歯科医をめざす学生はもちろん,医学生や若手医師にとっても臨床的理解が助けられ,口腔領域の解剖が一層魅力的なものとなったであろう。神経解剖が対象とするのは中枢神経だけではない。脳を理解しようと思えば,末梢神経や感覚器や効果器,そしてそれらとの関係について学ばなければならない。頭頸部は特に顕在意識化された脳の高次機能の入出力の要である。こころを構成する認知や情動や能動について深い理解をめざすならば,この領域の詳細な有機的関係の理解が鍵を握っている。これらが一体化した本書は21世紀の脳科学・神経科学の礎を担っているといっても過言ではない。
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