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文献詳細

雑誌文献

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩71巻11号

2019年11月発行

書評

「図説 医学の歴史」—坂井建雄【著】 フリーアクセス

著者: 北村聖1

所属機関: 1地域医療研究所

ページ範囲:P.1308 - P.1308

文献概要

 同級生の坂井建雄教授が2年余りの歳月をかけて『図説 医学の歴史』という渾身の1冊を上梓した。坂井氏の本業は解剖学である。学生時代から解剖学教室に入りびたりの生粋の解剖学者である。卒業後,それぞれの道に専念し接点があまりなかったが,再度会合したのが医学史の分野であった。聞くところによると,ヴェサリウスの解剖学から歴史に興味を持ったそうであるが,私が読んだ「魯迅と藤野厳九郎博士の時代の解剖学講義」の研究は秀逸であった。2012年に坂井博士の編集による『日本医学教育史』(東北大学出版会)が出版されて以来,より親しくさせていただいている。坂井博士は恩師養老孟司先生と同様,博学であると同時に,好奇心に満ちている。自分の知りたいことを調べて書籍化していると感じる。

 さて,本書は表題が示しているとおり写真や図版が多い。特に古典の図版の引用が多いが,驚くなかれ,その多くは坂井博士自身が所有されている書籍からの引用である。2次文献ではなく,原則原典に当たるという姿勢は全編を貫く理念であり,それが読む者を圧倒する。まさしく「膨大な原典資料の解読による画期的な医学史(本書の帯)」である。また,史跡の写真も坂井博士自らが撮影したものが多く,医学史の現場にも足を運んだことがよくわかる。また,書中に「医学史上の人と場所」というコラムが挿入されており,オアシスのような味わいを出している。内容もさることながら,人選が面白く,医学史上の大家から市中の名医(荻野久作など)までが取り上げられている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1344-8129

印刷版ISSN:1881-6096

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