文献詳細
増大特集 神経疾患の診断における落とし穴—誤診を避けるために
文献概要
本邦における医療訴訟が実際の臨床現場に及ぼす事実上の影響が存在することは否定できず,トラブル予防のために医療訴訟を検討することは有益である。神経疾患ではくも膜下出血や血栓溶解療法が広く施行されるようになった脳梗塞,治療可能だが治療が遅れると致死的となり得る脳炎などの医療訴訟が散見される。さらにその他の疾患でも医療トラブルから訴訟に発展した事例が存在している。
参考文献
1)Localio AR, Lawthers AG, Brennan TA, Laird NM, Hebert LE, et al: Relation between malpractice claims and adverse events due to negligence. Results of the Harvard Medical Practice Study Ⅲ. N Engl J Med 325: 245-251, 1991
2)高橋茂樹: 陣痛促進剤の投与と経過観察義務違反. 宇都木 伸, 町野 朔, 平林勝政, 甲斐克則(編): 医事法判例百選, 有斐閣, 東京, 2006
3)大平雅之: 救急における訴訟. Clinical Neuroscience 27: 870-873, 2009
4)平成18年2月10日大阪地方裁判所判決.
5)平成30年3月22日神戸地方裁判所判決.
6)拘置所に勾留中の者が脳こうそくを発症し重大な後遺症が残った場合について速やかに外部の医療機関へ転送されていたならば重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性の存在が証明されたとはいえないとして国家賠償責任が認められなかった事例. 判例タイムズ1202: 249-259, 2006
7)1 一過性脳虚血性発作(TIA)を看過し適切な処置を講じなかったことについて, 開業医の注意義務違反が認められた事例 2 上記の注意義務違反と後遺障害との間の因果関係を否定したが, 後遺障害が残らなかった相当程度の可能性の侵害があったとして, 慰謝料が認められた事例. 判例タイムズ1410: 287-295, 2015
8)日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会(編): 脳卒中治療ガイドライン2015〔追補2019対応〕. 協和企画, 東京, 2019
9)1 医師が末梢血幹細胞移植のドナーになる者に対して同細胞の採取等に関するガイドラインの内容に沿った説明等をしなかった点に説明義務違反があるとされた事例 2 ガイドラインを作成している学会について, 医療機関がガイドラインを遵守しているかどうかを監視する義務が否定された事例. 判例タイムズ1262: 299-310, 2008
10)蒔田 覚: 肺塞栓症と医療訴訟—医療者側弁護士の立場より. 心臓43: 1051-1052, 2011
11)大平雅之, 桑原博道, 小原克久: 脳卒中診療が争点となった医療訴訟における診療ガイドラインの取扱い. 脳卒中36: 10-15, 2014
12)ヘルペス脳炎を発症していた患者を診察した医師において, 十分な問診・鑑別診断をしなかった過失があり, これによりヘルペス脳炎の発見が遅れたため患者に高次脳機能障害の後遺症が残ったとされた事例. 判例タイムズ1261: 236-248, 2008
13)平成5年12月20日広島高等裁判所判決.
14)平成13年10月25日京都地方裁判所判決 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/774/006774_hanrei.pdf(最終閲覧日2020年2月26日)
15)大学付属病院の医師が脊髄腫瘍を筋萎縮性側索硬化症と誤診したことにつき, 診療契約上の債務不履行があったとして, 患者からの慰謝料請求が認められた事例. 判例タイムズ995: 214-232, 1999
16)平成12年9月26日仙台地方裁判所判決
17)平成17年2月14日横浜地方裁判所判決
18)平成18年10月27日東京地方裁判所判決 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/771/033771_hanrei.pdf(最終閲覧日2020年2月26日)
19)平成23年6月16日水戸地方裁判所判決.
20)終末期の患者について延命措置を拒否した家族及び延命措置を実施しなかった病院の損害賠償責任が否定された事例. 判例タイムズ1441: 233-245, 2017
21)厚生労働省: 終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン. 2007
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