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文献詳細

雑誌文献

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩73巻10号

2021年10月発行

連載 臨床神経学プロムナード—60余年を顧みて・8

上位運動ニューロンは錐体路のみではない—皮質脊髄路,皮質核路(迷行線維)の理解を深める

著者: 平山惠造12

所属機関: 1千葉大学(神経学講座) 2日本神経治療学会

ページ範囲:P.1170 - P.1171

文献概要

 先ず,大綱から述べよう。(1)錐体路pyramidal tractとは延髄の錐体pyramisをまとまって通る神経線維群を指す。(2)皮質脊髄路cortico-spinal tractとは大脳運動皮質から脊髄前角へ向う運動神経系の線維集団で,中心前回の上・中部と中心傍小葉前部(即ち四肢運動領域)から脊髄へ下行する運動神経線維群である。(3)皮質核路cortico-nuclear tractの核とは脳神経核を意味するもので(但しⅠ,Ⅱ脳神経核は特異で,これを除く),Ⅲ以下の脳神経核に向う(即ち脊髄に向わない)神経線維群の総合名称である。しかし,脳神経核は脳幹のそれぞれの部位に分れて存在するため,各脳神経核に向う神経線維は(全体として纏まらず)それぞれの経路をとる。そのためこれらを一括して迷行線維と総称する。迷行線維とはDejerine(1901)1)がfibres aberrantes〈F〉と呼称したのに始まるが,英語圏でもaberrant fiberとして用いられている。筆者が「迷行線維」と訳したもので,aberranteとは常軌(普通)ではないの意味で,医学的には異常と訳されることがあるが,ここでは妥当ではない。皮質脊髄路から見ればあちこちへ走行することになるので(迷走神経を避けて)迷行とした。大略は脳脚(中脳)の高さで皮質脊髄路から分離して,それぞれ中脳,橋,延髄の被蓋部を経て,各脳神経核に達する。本稿では図示出来ないので,拙著2)の図,図説を参照されたい。

参考文献

1)Dejerine J (1901): Fibres aberrantes. Anatomie des centres nerveux. TomeⅡ. Rueff, Paris, pp543-550, 617-618.
2)平山惠造(2006): 神経症候学, 改訂第2版. 文光堂, 東京, Ⅰ巻, 図9-Ⅱ-4(脳幹), 5(迷行線維), pp364-367 2bis)ibid. Ⅱ巻. 図30-Ⅱ-8(迷行線維), pp1091-1093
3)Lassek A.M (1954): The pyramidal tract. C. C. Thomas, Springfield.
4)Phillips C.G, Porter R (1977): Cortico-spinal neurons. Academic Press, London.
5)金光 晟(1979): 錐体路の解剖. 鈴木良平(編): 脳性麻痺研究〔Ⅱ〕. 協同出版, 東京, pp3-24.
6)Brodal A (1981): Neurological anatomy in relation to clinical medicine, 3rd edtion. Oxford University press, New York.
7)岩坪 威, 金光 晟(1993): ヒトの錐体路. 脳神経45: 21-37.
8)山本 徹(1995): Aberrant pyramidal tract. 神経内科43: 306-312.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1344-8129

印刷版ISSN:1881-6096

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