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文献詳細

雑誌文献

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩73巻5号

2021年05月発行

連載 臨床神経学プロムナード—60余年を顧みて・3

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の学位研究をめぐって①—Charcotの原著(1880)を繙く

著者: 平山惠造12

所属機関: 1千葉大学(神経学講座) 2日本神経治療学会

ページ範囲:P.648 - P.649

文献概要

 冲中重雄教授(東京大学第3内科)から学位研究テーマとして与えられたのがALSで,入局2年後の1957年であった。研究についての具体的御指示はなかった。本症はCharcotとJoffroyの最初の剖検報告(1869)1)から既に一世紀近い歳月を経て,この間に夥しい数の研究報告が広く世界で発表されており,何を研究すべきか皆目見当がつかなかった。当時の内外の神経学書(教科書)から何ら示唆を得られなかった。

 先ずは本症をよく識ることと考えて,Charcotが詳細に講義したSalpêtrière病院での講義録(1880)2)を読むことにした。2章(第12〜13章。訳文では課)に亘り極めて詳しく記述されていて,第12章では脊髄の発生から説き,本症の脊髄病変(側索硬化)に注目し,これが脳病変による二次的なものでなく,原発性であることを論じ,それが延髄の高さへと続く事を述べている。次いで脊髄白質,灰白質から神経根の病変を記し,前根および脊髄神経の病変が前角病変の続発性であることを説いている。最後は萎縮筋の病変の状態,色の変化にまで言及している。

参考文献

1)Charcot J.M, Joffroy A (1869): Deux cas d'atrophie musclaire progressive avec lésions de la substance grise et des faisceaux antérolatéraux de la moelle épinière. Arch. de physiol. normale et pathologique. pp354-367, 629-649, 744-769.〔註〕第1例の日本語訳が,若干の解説を付して,「平山惠造(1993): シャルコーと筋萎縮性側索硬化症. Brain Medical 5: 133-138」に収載されている.
2)Charcot J.M (1880): Leçons sur les maladies du système nerveux faîtes à la Salpêtrière. TomeⅡ. Progrès Médical, Paris, pp213-226(12章), 227-242(13章).(シャルコーの金曜講義と言われるもの:本シリーズ第4回参照).〔平山惠造(解説・全訳)(1961): Jean-Martin-Charcot. 筋萎縮性側索硬化症(1). 内科8: 178-186. 同(2). 内科8: 373-383〕
3)Charcot J.M (1892): Leçons du mardi à la Salpêtrière. Policliniques (1887-1888). Progrès médical, Paris.(シャルコーの火曜講義と言われる学生用の講義録:本シリーズ第4回参照).
4)平山惠造(1959): 筋萎縮性側索硬化症ならびにその近接疾患に関する臨床病理学的研究知見補遺. 精神経誌61: 2111-2132.
5)平山惠造: Motor Neuron Disease—臨床と病理の二三の問題〔シンポジアムMotor neuron disease〕. 精神経誌64: 112-126, 1962.
6)Norris FH, Kurland LT (eds) (1968): Motor neuron diseases: Research on amyotrophic lateral sclerosis and related disorders. Grune & Stratton, New York.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1344-8129

印刷版ISSN:1881-6096

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