icon fsr

文献詳細

雑誌文献

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩74巻5号

2022年05月発行

--------------------

あとがき フリーアクセス

著者: 酒井邦嘉

ページ範囲:P.730 - P.730

文献概要

 将棋の対局中継を衛星放送(CS),ケーブルテレビやインターネットで観戦できるようになって久しい。近頃はAI(人工知能)による形勢判断や候補手予測が画面に出るようになった。対局者は自分の頭脳だけが頼りで,むろんAIの判断は見えていない。それゆえ,一手一手が試験問題の答合せのようで心が痛む。しかしそうであればこそ,棋士が長考の末に妙手を選択したときには喝采を送りたくなる。AIと違って人間は,勝負のプレッシャーや時間の制限などで失敗をするものだ。たとえ失敗したとしても,次に挽回したり,ミスを認めたうえで最善を尽くしたりするところに,棋士の人間性が現れる。

 「『分かりそうだけれど分からない』ことが,将棋の楽しさであり,深く考える入り口に立つ飛躍の機会でもあるのです」と羽生善治九段が述べていた(『羽生善治の将棋「次の一手」150題』成美堂出版)。藤井聡太五冠は,数々の最年少記録だけでなく,時に「AI超え」とも評される妙手で話題を呼んでいる。既に棋史に残るとの呼び声が高い「後手6二銀」や「先手4一銀」(『藤井聡太の鬼手』日本将棋連盟)といった奥深い指し手は,人間の英知に対して新たな可能性を感じさせてくれる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1344-8129

印刷版ISSN:1881-6096

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら