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文献詳細

雑誌文献

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩74巻7号

2022年07月発行

連載 臨床神経学プロムナード—60余年を顧みて・17

「脊髄性間歇性跛行」をめぐって:本邦初報告から久しく絶えた(1929〜1967)意外な理由

著者: 平山惠造12

所属機関: 1千葉大学(神経学講座) 2日本神経治療学会

ページ範囲:P.942 - P.943

文献概要

 筆者が医学生の時代に(1950年代),「間歇性跛行」を外科の講義で聴いた。下肢動脈の閉塞性障害(Bürger病)によるもので,ビュルガーというと教わった。太平洋戦争終戦(1945年,昭和20年)以前の日本におけるドイツ医学教育の名残りであった。その後,BürgerはBuerger(バージャー)であり,戦前にはドイツにいたが,その後,米国に移ったと折に触れて聞いた。

 「間歇性跛行」の歴史は古く,Charcot(1858)1)の記述に遡るが,それはさておき「脊髄性」間歇性跛行はDejerine(1906,1911)2,3)が,彼の門下生のSottas(1894)の学位論文4)に初めて記述させたものである。筆者が臨床神経学の道に進んで以来(1956〜),日本でこれを聞く機会はなかった。その後,Garcin教授のもとに留学して(1962〜1964),Salpêtrière病院での先生の毎日の廻診や外来でのconsultationの中で2回,これを耳にした。講義ではなく,consultationの中なので断片的であるが,1回目は「脊髄性間歇性跛行」がmyélomalacie(脊髄軟化症)の前駆症状を呈することがあること,2回目はCharcotの「有痛性」間歇性跛行1)と異なり痛みを生じることなく,脱力により歩けなくなること,が留学ノートに記されている。

参考文献

1)Charcot J-M (1858): Sur la claudication intermittente observée dans un cas d'oblitération complète de l'une des artères iliaques primitives. Compt Rend Mém Soc Biol 12: 225-238.
2)Dejerine J (1906): Sur la claudication intermittente de la moelle épinière. Rev Neurol 14: 341-350.
3)Dejerine J (1911): La claudication intermittente de la moelle épinière. Presse Méd 19: 981-984.
4)Sottas J (1894): Contribution à l'étude anatomique et clinique des paralysies spinales syphylitiques. Thèse (Paris).
5)平山惠造, 安芸基雄, 宮崎元滋, 福田真二, 冲中重雄(1967): 脊髄血管形成異常における脊髄性間歇性跛行とその随伴神経症状—症候論上の新たな問題と機序に対する考察. 臨床神経7: 715-726.
6)平山惠造(1970, 1971): 亜急性壊死性脊髄炎(Foix-Alajouanine病)-1926年-解説: 全訳. 神経進歩14: 208-225, 14: 218-230.
7)平山惠造(2010): 神経症候学, 改訂第2版, Ⅱ巻. 文光堂, 東京, p281, 444(図).
8)高谷 淳, 中田敏哉(1929): 小児期脊髄性間歇性跛行症の一例. 診断と治療16: 913-919.
9)武谷 廣(1928): 三浦謹之助(監修): 三浦神経學, 巻壱. 克誠堂, 東京, p372.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1344-8129

印刷版ISSN:1881-6096

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