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雑誌文献

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩75巻12号

2023年12月発行

雑誌目次

特集 アガサ・クリスティーと神経毒

フリーアクセス

ページ範囲:P.1283 - P.1283

2021年(芸術家),2022年(映画)に続く,クリスマス企画の第3弾。「ミステリーの女王」として名高いアガサ・クリスティー(1890-1976)は,第一次世界大戦中にボランティアの看護師として働いただけでなく,調剤師の資格を得て薬剤師の助手を務めた経験があり,その作品の多くで毒物の作用が正確に描かれている。それは実際の毒殺事件において,病理学者が作品の記述を参考にしたほどであった。本特集では,作中で扱われた神経系症状を伴う毒物に焦点を当て,その作用機序や治療法などを,薬理作用や病理に関する現代の知見も織り交ぜながら解説している(項目は原著の発表順)。今宵は不朽のミステリー作品の世界に触れながら,人間心理や神経毒への洞察を深めたい。

ストリキニーネ『スタイルズ荘の怪事件』—グリシン作動性シナプス伝達の遮断

著者: 渡辺雅彦

ページ範囲:P.1285 - P.1288

ストリキニーネは古典的ミステリーでしばしば登場する毒物であるとともに,医療やさまざまな用途で用いられてきた。その作用点はグリシン受容体と明快であり,抑制性シナプス伝達を担うグリシン伝達の阻害である。その強力な興奮作用により,経口摂取後,強直性痙攣,後弓反張,痙笑などの激しく苦悶に満ちた特徴的な症状が現れる。この症状は破傷風の病態基盤とも関係し,この薬剤は神経科学から医学医療にまで及ぶ重要なトピックである。

コカイン『戦勝記念舞踏会事件』

著者: 詫間章俊

ページ範囲:P.1289 - P.1292

『戦勝記念舞踏会事件』はコカイン使用を背景とした殺人事件を描いたもので,作中にも実際にコカイン中毒の症状などが描かれている。一方でコカインは昔,麻酔薬として目や鼻などの手術に使用され,19世紀後半には米国でコカ・コーラの成分として使用されていた。日本においても薬物汚染が問題視される中,作品の内容とともにコカイン中毒の現状や危険性,医療機関と行政の連携の必要性についても触れていきたい。

ゲルセミウム『ビッグ4』

著者: 船山信次

ページ範囲:P.1293 - P.1296

アガサ・クリスティーの『ビッグ4』には,「黄色いジャスミン」の名で,猛毒アルカロイドのゲルセミンを含む有毒植物Gelsemium sempervirensが現れるが,この植物は,わが国ではカロライナジャスミンの名前で知られる。一方,その近縁の植物として,中国南部〜東南アジアに自生する猛毒植物Gelsemium elegansもあり,その根の乾燥品は「冶葛」という生薬名で,古来,奈良の正倉院に収蔵されている。

ベロナール『エッジウェア卿の死』—鎮静と依存の両刃の剣

著者: 虫明元

ページ範囲:P.1297 - P.1300

ベロナールは20世紀初頭に登場し,当時は睡眠薬として広く使われていた。アガサ・クリスティーの小説の中でも用いられている。ベロナールや同様の作用機序を持つ他の睡眠薬には,鎮静作用のほかに,中毒や過剰摂取につながる暗い側面があることが判明している。バルビツール酸の過剰摂取による死者にはマリリン・モンローも含まれている。日本では,芥川龍之介が自殺した際に服用したことで知られている。夏目漱石はこの睡眠薬に手を出したものの,結果はまったく違った。漱石は多くの弟子に囲まれており,その弟子の一人が副作用に気づき,服用をやめるように勧めた。これは,依存症がその人を取り巻く社会的関係によっていかに左右されるかを端的に示す例である。

ニコチンと殺虫剤・たばこ『三幕の殺人』

著者: 山脇健盛

ページ範囲:P.1301 - P.1304

主人公の一人が俳優であったことより,3件の殺人事件が幕に例えられている。一見関連のないように見えた3件の事件が,最後につながってくる,アガサ・クリスティーならではの醍醐味である。本書での殺人事件では3件ともニコチンが使われている。ニコチンといえばたばこが連想されるが,当時は殺虫剤の主流がニコチンであり,容易に入手可能であった。ニコチンは体内に入ると,アセチルコリン受容体に結合して,さまざまな症状を呈する。

砒素中毒『殺人は容易だ』

著者: 神田隆

ページ範囲:P.1305 - P.1308

アガサ・クリスティーの探偵小説『殺人は容易だ』は,イギリスの片田舎で起こった連続殺人事件の犯人が実は想像もできない人物であった,想像されない限り殺人は容易なのだ,というメッセージを込めた表題を有している。砒素はこの小説でも殺人の道具として用いられており,この小論は,亜ヒ酸中毒の神経学的症候について読者の知識を深めることを目的とした。今後も亜ヒ酸を用いた犯罪行為は私たちの前に現れる可能性がある。確実な診断にはここで著した基礎的知識を持つことが大前提であるが,それと同時に,常識にとらわれない柔軟な思考も要求されることをこの小説は示している。

シアン化合物『そして誰もいなくなった』,『忘られぬ死』

著者: 唐木英明

ページ範囲:P.1309 - P.1313

『そして誰もいなくなった』と『忘られぬ死』では各2人がシアン化合物で殺される。この毒は無味,無臭だが強アルカリ性で,経口摂取では消化管に強い刺激がある。胃液の塩酸と反応してシアン化水素ガスになり,吸収されてミトコンドリアの電子伝達系を阻害し,アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate:ATP)産生を止める。そのためATP消費量が多い中枢神経系が最初に障害を受け,めまい,意識障害,昏睡,痙攣などが起こる。経口致死量は300mg程度である。

モルヒネとアポモルヒネ『杉の柩』

著者: 尾久守侑

ページ範囲:P.1315 - P.1318

アガサ・クリスティー『杉の柩』には,モルヒネとアポモルヒネを使った印象的なトリックがある。本論では,実際に自分が犯人であったらという連想をしながら本書を読み,モルヒネとアポモルヒネの作用についても考察した。

コニイン『五匹の子豚』

著者: 酒井邦嘉

ページ範囲:P.1319 - P.1323

本論では,アガサ・クリスティーによる小説『五匹の子豚』を読み解き,その作中で重要な役割を果たす神経毒「コニイン」について概観する。コニインはニコチン性アセチルコリン受容体の拮抗薬であり,末梢神経系に直接作用して遅効性の麻痺を引き起こす。この毒薬の歴史は古く,ソクラテスの刑死に使われたことが哲学書『パイドン』に描かれている。そうした背景を踏まえて,クリスティーの人間観や創造力についても議論する。

ベラドンナ(アトロピン)『ヘラクレスの冒険』

著者: 古谷博和

ページ範囲:P.1325 - P.1329

『ヘラクレスの冒険』の第7話「クレタ島の雄牛」ではアトロピンが重要な役割を果たしている。アトロピンは中枢神経系の副作用としてせん妄錯乱状態,幻視,幻覚,見当識障害,記憶障害などを容易に誘発する。この挿話では,依頼者の婚約者に自分が難治性の遺伝性神経変性疾患に罹患していると思い込ませるため,目薬から濃縮されたアトロピンによって起こされた副作用が悪用され,ポアロはその症状を見抜いて事件を解決した。

タキシン『ポケットにライ麦を』—カルシウムチャネル・ナトリウムチャネル阻害剤

著者: 古泉秀夫

ページ範囲:P.1331 - P.1333

『ポケットにライ麦を』はアガサ・クリスティーの創造したミス・マープルが活躍する長編である。殺人に使用されるタキシンはイチイの木の果肉(仮種子)以外に含まれるアルカロイド化合物で,ジテルペンが基になり,多くの骨格構造の1つに,側鎖として窒素元素が組み込まれている。タキシンはナトリウムチャネルに結合するため,筋肉の収縮が調節できず,不整脈を生じる。

トリカブト『パディントン発4時50分』—ナトリウムチャネルの持続的な活性化

著者: 小原佐衣子

ページ範囲:P.1335 - P.1338

『パディントン発4時50分』の物語で使用された毒はトリカブトであった。トリカブトは,キンポウゲ科の多年草で,世界中に約300種類が存在する。根,茎,葉,花などすべての部分にアコニチン系アルカロイドを含む。アコニチン系アルカロイドは,心筋,中枢神経,骨格筋の電位依存性ナトリウムチャネルに作用し,持続的に活性化させる。心筋細胞では自動能がトリガーされ早期興奮が誘発され,さまざまな心室性不整脈を引き起こす。

タリウム『蒼ざめた馬』—いかに診断し治療するか

著者: 下畑享良

ページ範囲:P.1339 - P.1342

『蒼ざめた馬』はアガサ・クリスティーによる推理小説で,タリウムが毒物として殺人に使用されている。タリウムは無味,無臭,かつ水溶性であるために,これまで数多くの事故や事件の原因となった。近年,タリウムの入手は困難であるが,それでもタリウムを使用した事件が発生している。しかしタリウム中毒の診断は容易ではない。本論では,いかにタリウム中毒を見抜くか,またいかに救命するか,の2点を示すことを目的としたい。

エゼリン(エセリン)『ねじれた家』,『カーテン』

著者: 髙尾昌樹

ページ範囲:P.1343 - P.1346

エゼリンはエセリンと称されることもあり,フィゾスチグミンのことでアルカロイドに分類される。コリンエステラーゼ阻害薬であり,アガサ・クリスティーの小説『ねじれた家』や『カーテン』で扱われた。臨床医学では緑内障の点眼治療薬として使用され,重症筋無力症,アルツハイマー病,遺伝性小脳失調症の治療薬としても検討された。現在は,抗コリン薬による中毒の治療薬としての役割を有している。

総説

筋萎縮性側索硬化症(ALS)のリハビリテーション医療とALSクリニック

著者: 海老原覚 ,   勝又泰紀 ,   朴依真

ページ範囲:P.1349 - P.1353

筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)の機能障害は非常に多岐にわたる。運動障害に対するリハビリテーション医療は重症度によって違い,運動療法は比較的軽症のうちに行われるべきものであり,重症度が上がるにつれて代償訓練が増えていく。HAL®(Hybrid Assistive Limb®)による運動療法は,総じてHAL®を行わない場合に比べて下肢機能は保たれるものと考えられる。その機序は廃用筋線維に対する効果であろう。ALSクリニックによる診療はALS患者の予後を改善する効果がある。

精神展開剤の過去・現在・これから

著者: 内田裕之

ページ範囲:P.1355 - P.1359

近年,精神展開剤をうつ病など複数の精神科疾患の治療に応用する動きが活発になっている。精神展開剤は1960年代に治療効果が検証されていたが,市井での乱用により1970年に麻薬に指定され,いったん臨床研究は中断した。しかし,1994年の臨床試験を皮切りに,多数の臨床試験が実施され,大きな盛り上がりを見せている。本総説では,強力な治療効果を有する精神展開剤の歴史を概観し,本分野の今後の展望を概観する。

Original Article

The Relationship between the Autistic Traits and Everyday Memory Processing in Adults with Autism Spectrum Disorder and Healthy Adults

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.1361 - P.1366

We investigated the association between everyday memory and autistic traits in adults with autism spectrum disorder (ASD, n=22) and healthy adults (n=20) by using the Rivermead Behavioral Memory Test (RBMT). A generalized linear model (GLM) was used to explore the relationships between the subjects' performance on the RBMT as the objective variable and the composite score of the Autism Spectrum Quotient (AQ) as the explanatory variable. Multiple models were created with the AQ subscales (‘Social skills,’ ‘Attention-shifting,’ ‘Attention to details,’ ‘Communication,’ ‘Imagination’), age, gender, the full-scale intelligence quotient (FSIQ), the Patient Health Questionnaire-9 (PHQ-9), and the General Anxiety Disorder-7 (GAD-7) scale added as the moderator variables. The GLM revealed that the AQ subscale ‘Social skills’ significantly predicted the RBMT-total scores with age, gender, and psychological measures scores as the moderator variables (Model 4: B=0.752, 95%CI: 0.191 to 1.313, p<0.01). Also, The GLM revealed that the AQ subscale ‘Communication’, in addition to ‘Social skills’, significantly predicted the RBMT- ‘Prospective memory’ (Model 4: B=0.298, 95%CI: 0.19 to 0.578, p<0.05). These results indicate an influence of social skills on everyday memory functioning, highlighting the weakness of memory processing in everyday life situations among individuals with ASD.

連載 医師国家試験から語る精神・神経疾患・12

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

著者: 荻野美恵子

ページ範囲:P.1367 - P.1370

64歳の男性。ろれつの回りにくさと体重減少を主訴に来院した。半年前から話しにくさを自覚しており,同僚からも声が小さくて聞き取りにくいと指摘されるようになった。2か月前から食事に時間がかかるようになり,2か月間で体重が5kg減少している。1か月前からは両手指の脱力で箸が使いづらく,階段昇降も困難になってきたため受診した。意識は清明。眼球運動に制限はなく顔面の感覚には異常を認めないが,咬筋および口輪筋の筋力低下を認め,舌に萎縮と線維束性収縮を認める。四肢は遠位部優位に軽度の筋萎縮および中等度の筋力低下を認め,前胸部,左上腕および両側大腿部に線維束性収縮を認める。腱反射は全般に亢進しており,偽性の足間代を両側性に認める。Babinski徴候は両側陽性。四肢および体幹には感覚障害を認めない。血液生化学所見:総蛋白5.8g/dL,アルブミン3.5g/dL,尿素窒素11mg/dL,クレアチニン0.4mg/dL,血糖85mg/dL,HbA1c 4.5%(基準4.6〜6.2),CK 182U/L(基準30〜140)。動脈血ガス分析(room air):pH 7.38,PaCO2 45Torr,PaO2 78Torr,HCO3 23mEq/L。呼吸機能検査:%VC 62%。末梢神経伝導検査に異常を認めない。針筋電図では僧帽筋,第1背側骨間筋および大腿四頭筋に安静時での線維自発電位と陽性鋭波,筋収縮時には高振幅電位を認める。頸椎エックス線写真および頭部単純MRIに異常を認めない。嚥下造影検査で造影剤の梨状窩への貯留と軽度の気道内流入とを認める。

この時点でまず検討すべきなのはどれか。


a 胃瘻造設

b 気管切開

c モルヒネ内服

d エダラボン静注

e リルゾール内服

(第113回A47)

書評

「病態生理と神経解剖からアプローチする—レジデントのための神経診療」—塩尻俊明【監修】,杉田陽一郎【執筆】 フリーアクセス

著者: 江原淳

ページ範囲:P.1347 - P.1347

 神経診療は難しく,苦手意識のある医師は多い。

 なぜ難しく苦手と感じるのか。一つに,神経領域の幅広さがあると思う。解剖学的にも,脳,脊髄,末梢神経,神経筋接合部,筋などと多彩であり,病態的にも血管障害,感染症,自己免疫,変性など幅が広く,その組み合わせで膨大な疾患が存在する。誰しもその疾患数や領域の広さに圧倒され,特に神経内科を専門領域とするもの以外にとってこれをすべて勉強しきることは無理だ,専門科に任せようという気持ちになるのもわからなくはない。

「多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023」—日本神経学会【監修】「多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン」作成委員会【編】 フリーアクセス

著者: 楠進

ページ範囲:P.1348 - P.1348

 多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は中枢神経障害を引き起こす代表的な自己免疫疾患であるが,その疾患概念は21世紀に入って大きく変化した。従来はMSの1つのサブタイプと考えられていた視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)が,NMO-IgGすなわちアクアポリン4(aquaporin 4:AQP4)抗体が見出されたことにより病態の異なる疾患と考えられるようになり,さらにAQP4抗体陽性症例の臨床像が多様であることから視神経脊髄炎スペクトラム障害(neuromyelitis optica spectrum disorders:NMOSD)という疾患概念が生まれた。また,中枢神経のミエリンを構成するミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(myelin oligodendrocyte glycoprotein:MOG)に対する自己抗体の関連する疾患として,MOG抗体関連疾患(MOG antibody-associated disease:MOGAD)も類縁する疾患として確立されてきた。これらの中枢神経の炎症性疾患に対する治療も,従来のステロイド,血漿交換,免疫グロブリン製剤や免疫抑制薬に加えて各種の分子標的薬が導入されるようになっている。本書はこうしたMS,NMOSD,MOGADの最新情報を中心とし,それに加えて急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis:ADEM)やバロー同心円硬化症(Baló concentric sclerosis:BCS)も対象として,日本神経学会が主体となって作成された診療ガイドラインであり,『多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017』の改訂版である。前の版の出版からこれまでの間に多くの進歩がみられたが,特に新規治療薬の導入は数多く,知識の整理が必要であり,今回の改訂はまさに時宜を得たものといえよう。

 本書は3つの章から成り立っている。第Ⅰ章は,中枢神経系炎症性脱髄疾患診療における基本情報であり,それぞれの疾患の概要から診断,治療について詳細に記載されている。この第Ⅰ章を通読するだけで,稀少疾患であるMS,NMOSD,MOGAD,ADEM,BCSについて,要領よく理解することができるであろう。また免疫性神経疾患の治療薬について,まとまった知識を得るにも最適の教材と考えられる。第Ⅰ章の最後には,医療経済学的側面および社会資源の活用として,診療において重要な検査や治療の保険適用,法律や制度,療養や就労の支援などについて述べられていて,日常診療に役立つ内容となっている。

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.1281 - P.1281

欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.1282 - P.1282

投稿論文査読者 フリーアクセス

ページ範囲:P.1373 - P.1373

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.1377 - P.1377

あとがき フリーアクセス

著者: 下畑享良

ページ範囲:P.1378 - P.1378

 2021年から始まった恒例のクリスマス特集号の第3弾として,「アガサ・クリスティーと神経毒」をお届けします。本企画が参考にした 『アガサ・クリスティーと14の毒薬』 (岩波書店)は,タイトルの通り,クリスティーが作品に使用した14の毒薬を取り上げ,それぞれの特徴やエピソードを紹介したものです。薬理学の講義で,ここで紹介されているような話も併せて聞かせてあげたら,学生もワクワクしながら勉強できるように思います。

 さてクリスティーの作品群で特徴的なことは,何と言っても毒殺が多いことで,長編66作品のうち30人以上の犠牲者が毒殺されています。ではいつ彼女が薬理学に対して理解と知識を深めたのかというと,私の原稿 「タリウム『蒼ざめた馬』」にも書いた通り,2つの大戦中に看護師と薬剤師として働いていたときだと考えられています。

基本情報

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1344-8129

印刷版ISSN 1881-6096

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