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文献詳細

雑誌文献

BRAIN and NERVE-神経研究の進歩75巻12号

2023年12月発行

特集 アガサ・クリスティーと神経毒

ベロナール『エッジウェア卿の死』—鎮静と依存の両刃の剣

著者: 虫明元1

所属機関: 1東北大学大学院医学研究科生体システム生理学

ページ範囲:P.1297 - P.1300

文献概要

ベロナールは20世紀初頭に登場し,当時は睡眠薬として広く使われていた。アガサ・クリスティーの小説の中でも用いられている。ベロナールや同様の作用機序を持つ他の睡眠薬には,鎮静作用のほかに,中毒や過剰摂取につながる暗い側面があることが判明している。バルビツール酸の過剰摂取による死者にはマリリン・モンローも含まれている。日本では,芥川龍之介が自殺した際に服用したことで知られている。夏目漱石はこの睡眠薬に手を出したものの,結果はまったく違った。漱石は多くの弟子に囲まれており,その弟子の一人が副作用に気づき,服用をやめるように勧めた。これは,依存症がその人を取り巻く社会的関係によっていかに左右されるかを端的に示す例である。

参考文献

1)アガサ・クリスティー(著), 福島正実(訳): エッジウェア卿の死. 早川書房, 東京, 2004
2)キャサリン・ハーカップ(著), 長野きよみ(訳): アガサ・クリスティーと14の毒薬. 岩波書店, 東京, 2016
3)アガサ・クリスティー(著), 羽田詩津子(訳): アクロイド殺し. 早川書房, 東京, 2003
4)アガサ・クリスティー(著), 山本やよい(訳): オリエント急行の殺人. 早川書房, 東京, 2011年
5)エドワード・ショーター(著), 木村 定(訳): 精神医学の歴史: 隔離の時代から薬物治療の時代まで. 青土社, 東京, 1999, pp242-249
6)林原耕三: 漱石山房の人々. 講談社, 東京, 1971
receptor channels. Annu Rev Neurosci 17: 569-602, 1994
8)Leonzino M, Busnelli M, Antonucci F, Verderio C, Mazzanti M, et al: The timing of the excitatory-to-inhibitory GABA switch is regulated by the oxytocin receptor via KCC2. Cell Rep 15: 96-103, 2016
9)Tan KR, Brown M, Labouèbe G, Yvon C, Creton C, et al: Neural bases for addictive properties of benzodiazepines. Nature 463: 769-774, 2010
receptor subtypes and addiction. Trends Neurosci 34: 188-197, 2011
11)ベンゾジアゼピン情報センター: ベンゾジアゼピン薬の離脱方法: 減薬方法と離脱症状体験談, 医学文献の紹介.https://benzoinfojapan.org/(最終閲覧日: 2023年9月6日)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1344-8129

印刷版ISSN:1881-6096

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