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文献詳細

雑誌文献

総合診療25巻10号

2015年10月発行

特集 感染症を病歴と診察だけで診断する!Part 2

【System 2─理詰めで追い詰める感染症編❺】

「先生! 患者さんの顔がピクピクしています!」

著者: 吉田常恭1 長田薫2

所属機関: 1洛和会音羽病院 総合診療科 2武蔵野赤十字病院 総合診療科

ページ範囲:P.949 - P.955

文献概要

Case
急性腎盂腎炎で入院中に意識障害を起こした一例
患者:73歳,女性.
既往歴:糖尿病,慢性腎臓病ステージ3b.
現病歴:急性発症した発熱と尿路感染症状を主訴に,救急外来を受診された.右CVA叩打痛あり,尿グラム染色にて小型のグラム陰性桿菌を認め,「急性腎盂腎炎」と診断され入院となった.直近の入院歴があったため緑膿菌までカバーが必要と判断し,入院時よりセフェピム1g/24時間ごとで治療した.第2病日より解熱し,症状・尿所見の改善を認めた.
 ところが,第5病日に担当看護師より顔面のミオクローヌスの報告を受け,訪室すると意識レベルの低下(GCS:E1V3M5)を認めた.身体所見では眼振・痙攣は認めず,頭部CTおよびMRI検査でも,異常所見は認めなかった.腰椎穿刺は困難であった.脳波検査にて全般性徐波と三相波を認め,セフェピム脳症(NCSE)を疑い,抗痙攣薬を使用するも著明な改善なく,血液透析を施行したところ,翌日より速やかに意識レベルが改善した.

参考文献

1)永山正雄:非痙攣性てんかん状態重積状態.今日の臨床サポート,エルゼビア・ジャパン,2015. https://clinicalsup.jp/contentlist/104.html(2015年9月7日現在)
2)夏目里恵,他:興奮毒性におけるNMDA型受容体の関与.新潟医会誌 119(12):730-734, 2005.
3)Grill MF, et al:Neurotoxic effects associated with antibiotic use;management considerations.Br J Clin Pharmacol 72(3):381-393, 2011. <抗菌薬関連神経障害についてのレビュー.機序などについて簡潔にまとめてあるため,一読の価値あり>
4)Dakdouki GK, et al : Cefepime-induced encephalopathy. Int J Infect Dis 8(1): 59-61, 2004. <letterではあるが,セフェピム脳症の発症までの日数,中止後の症状改善までの日数がかかれており,多くの論文に引用されている>
5)Okamoto MP, et al : Cefepime Clinical Pharmacokinetics. Clin Pharmacokinet 25(2): 88-102, 1993. <セフェピムの薬物動態について書かれている>
6)Garcés EO, et al : Renal failure is a risk factor for cefepime-induced encephalopathy. J Nephrol 21(4): 526-534, 2008. <腎機能障害とセフェピムによる神経障害の発生についてのコホート研究.比較的読みやすい>
7)Sanford JP(著),Gilbert DN,et al(編),菊池賢,他(訳):サンフォード感染症治療ガイド2014(熱病).ライフ・サイエンス社,2014.
8)Thabet F, et al:Cefepime-induced nonconvulsive status epilepticus;case report and review. Neurocritical Care 10(3) : 347-351, 2009.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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