文献詳細
メンタルクリニック便り・32
文献概要
この3回は広汎性発達障害(主にアスペルガー症候群)のために本人やそのパートナーが「うつ」になったケースをご紹介してきました.広汎性発達障害に関しては書籍も数多く出版され,一般にも知られるようになってきていますが,実際にどんな感じなのかは何人か診療してみないとピンとこないかもしれません.私自身は「ちょっと常識から外れたこだわりの強さ」を感じた際に疑います.たとえば連載第30回でご紹介した症例5の男性の「社内で不正があることがわかって退職した」という話.正義感が強いといえばそれまでかもしれませんが,「でも普通は,だからといって辞めることまではしないはず」と違和感をもつことが手がかりになります(この例では,本人から申告されるまで私は気づかなかったのですが).ほかに「マンションを売却したけれど,仲介した不動産屋のつくった書類に瑕疵がたくさんあるので,もし問題になったら訴えてやる」と話した男性も,それまでパーソナリティ障害なのか何なのかよくわからなかったのですが,この話から発達障害を疑ってAQ(自閉症スペクトラム指数)をとってみたところ,30点とカットオフ値には届かないものの,その可能性がある程度確かめられたというケースもありました.
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