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雑誌目次

雑誌文献

総合診療25巻5号

2015年05月発行

雑誌目次

特集 咳を聴きとり,咳を止める

今月のQuestion & Keyword Index

ページ範囲:P.421 - P.421

より早く,より的確に内容をとらえるために,QuestionとKeywordによるIndexをご利用ください.それぞれ各論文の要点を示す質問とキーワードで構成されています.
Question
Q1 遷延性・慢性咳嗽の鑑別診断の基本方針を教えてください. 422
Q2 咳の機序はどこまで明らかになっていますか? 427
Q3 線毛運動の観点から,呼吸管理上,加湿・加温は必要ですか? 432
Q4 感染性咳嗽の診断に有用な鼻咽腔ぬぐい液を利用した迅速抗原検出キットは? 435
Q5 2週間以上持続する咳嗽患者を問診するうえでの留意事項は? 439
Q6 S3(三音)の由来を鑑別する方法は? 443
Q7 急性気管支炎の起炎菌で考慮される病原菌とその治療は? 447
Q8 3週間以上の咳をみていくうえで留意することは? 452
Q9 感染性咳嗽を疑う4つの所見は? 458
Q10 むせを伴う咳の原因検索は? 462
Q11 胸部X線で異常をきたさない慢性・遷延性咳嗽で留意することは? 467
Q12 喘息や気管支炎などの下気道疾患がない咳嗽の診断のポイントは? 472
Q13 胸やけを伴う咳で考えられるものは何ですか? 476

ONE MORE GM

ページ範囲:P.479 - P.480

Q1 咳喘息と感染後咳嗽を鑑別する病歴,検査のポイントを教えてください.
A1 咳喘息はしばしば上気道炎を契機に発症あるいは悪化するので,遷延性(8週)以内の咳では感染後咳嗽との鑑別が問題となる.感染後咳嗽は徐々にでも自然に改善し最終的には消失することが病歴のポイントである.一方,毎年同じ季節に咳が出たり咳が悪化する明らかな季節性や,夜間〜早朝の悪化は,咳喘息に特徴的で,夜間眠れないような咳が続いていればまず咳喘息を疑う.スパイロメトリーが施行可能なら,末梢気道閉塞を反映するフローボリューム曲線で下降脚が下に凸になる所見や,喀痰好酸球増多や呼気中NO濃度高値さらには末梢血好酸球増多も,好酸球性炎症を間接的に反映する指標として咳喘息の補助診断に有用な場合がある.

【咳の原因の全体像を捉える】 ●ガイドラインの要点を非専門医が読み解くには

咳嗽ガイドライン(第2版)のエッセンス

著者: 新実彰男

ページ範囲:P.422 - P.426

ガイドラインの概要と特徴
 咳嗽の診療ガイドラインとして,2005年に日本呼吸器学会から『咳嗽に関するガイドライン』,翌年に同じ内容の英語版,そして2012年に『咳嗽に関するガイドライン第2版』が刊行された(英語版準備中).本ガイドラインでは,3 週未満の急性咳嗽,3 週以上8 週未満の遷延性咳嗽,8 週以上の慢性咳嗽に分類している.急性咳嗽の多くは急性上気道炎や上気道炎後に咳だけが残る感染後咳嗽であり,持続期間が長くなるほど感染症に伴う咳の比率は低くなる.遷延性咳嗽でも感染後咳嗽が最多の疾患であるが,慢性ではその頻度は低く,咳喘息,胃食道逆流症(GERD),副鼻腔気管支症候群など,多彩な疾患が原因となる(図1).
 初版と異なる第2版の主な特徴は,以下の2点である.

●病態生理を理解する

咳の機序

著者: 塩谷隆信

ページ範囲:P.427 - P.431

はじめに
 咳嗽は,喀痰や気道内の異物を喀出するための重要な生体防御反射である1〜3).咳嗽の機序は非常に複雑であり,すべては解明されているわけではないが,近年の分子生物学的研究の進歩に伴い,咳嗽の末梢受容体から脳幹部の咳中枢までの反射経路について,その病態生理が次々に明らかにされてきている3)
 咳嗽反射を生理学的にみると,短い吸気に(吸息相)引き続いて声門の閉鎖が起こり,胸腔内圧が上昇し(加圧相),続いて声門が開いて強い空気の流れとともに気道内容が押し出される(呼息相)の3つの位相から構成される(図1)4)
 長引く咳嗽を訴える患者の診療にあたっては,咳嗽の病態生理に関する理解が不可欠である.咳嗽の機序の解明は,咳嗽診療においてその診断の向上のみならず,その治療方法の進歩にもつながると考えられる.今後,咳嗽の機序に基づいた咳嗽診療における新しい展開が大いに期待される3)

線毛運動の視点から見た咳

著者: 澤祥幸

ページ範囲:P.432 - P.434

はじめに
 気道には種々の生体防御機構があり,特に下気道においては,①咳反射,②粘液線毛輸送系,③肺胞マクロファージが相互に機能し,気道クリアランスを構成している.咳は乾性咳嗽と湿性咳嗽に分けられるが,湿性咳嗽は気道に侵入した外的異物(細菌や粒子)および気道粘膜分泌物の排出のための生理的反応であり,線毛運動(G1)の機能と障害の理解が重要である.

咳を主訴とする呼吸器感染症の病原体診断

著者: 金城武士 ,   藤田次郎

ページ範囲:P.435 - P.438

はじめに
 咳嗽はほとんどの呼吸器感染症において認められる一般的な症状である.感染性咳嗽の原因として最も頻度が多いのは,ウイルスによる上気道炎であるが,咳嗽が遷延する場合には,マイコプラズマや肺炎クラミジア,百日咳などを鑑別する必要がある.感染症の診断方法は大きく分けて,病原微生物そのものを検出する方法と,病原微生物に対する生体反応をみる方法の2つがあるが,一般的に感染の直接証拠を検出する前者のほうが後者よりも診断的価値が高いことが多い.上述した病原体のうち,病原微生物そのものを検出する方法が保険適用を取得しているのは,呼吸器ウイルスの一部とマイコプラズマのみである.
 本稿では,呼吸器ウイルス,マイコプラズマ,肺炎クラミジア,百日咳の診断について,現在用いられている方法の有用性と問題点などを述べながら解説したい.

【咳へのアプローチ:問診と身体所見を極めよう】

どう問診していくか?

著者: 喜舎場朝雄

ページ範囲:P.439 - P.442

Case
患者:46歳,男性.
家族歴:特になし.
職業:建築業.
現病歴:日頃から湿性咳嗽があるが,2週間程前から乾性咳嗽になり,普段よりも咳嗽の回数が多くなってきた.5日程前から徐々に倦怠感と食欲の低下があった.これらの症状が改善せず救急室受診.
経過:バイタルサインで微熱があり,呼吸不全はなかった.身体所見では腋窩の軽度の乾燥があり,呼吸音は正常であった.胸部単純X線写真では左上肺野に空洞性病変があった.2日連続で喀痰を提出し,2回目の喀痰でガフキー3号の結果が得られ,肺結核を考え,専門病院に転院になった.

どう身体所見をとるか?

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.443 - P.446

 一般に,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の診断は遅れていると言われている.40パック年以上の大量長期喫煙歴のある患者で常に,COPDの可能性を考慮して診察を行うべきである.では,下記のケースを見てみよう.

【ジェネラリストのための咳の診断と治療】

急性咳嗽(初期3週間以内)の咳の治療戦略

著者: 亀井雅 ,   坂東修二

ページ範囲:P.447 - P.451

Case
非定型肺炎が喘息症状を起こした1例
患者: 51歳,女性.
現病歴:10日前より持続する夜間に強い乾性咳嗽にて初診となる.2年前にも3週間以上続く咳嗽があった.初診時,胸部単純X線写真で異常なくWBC 3,800/μl,CRP 0.3mg/dl,肺機能異常もなかった.喘鳴はなかったがICS+LABA合剤を処方し,咳嗽は著明に減少した.
 その後再度咳嗽増強し,37.5℃の発熱を認めた.またその際喘鳴を伴い,夜間喘息発作を起こした.発作後咳嗽が持続したため来院した.WBC 2,900/μl,CRP 1.1mg/dlにて単純X線写真では異常を認めなかったが,咳嗽が強く胸部CTを施行し,非定型肺炎を認めた.過去に長引く咳嗽の病歴からアレルギー性の咳嗽を疑ったが,同一患者でも異なった原因により咳嗽を認めることがあり,胸部単純X線写真では軽度の非定型肺炎を見逃す可能性があることに注意を要すると思われた.

3週間以上の咳の治療戦略

著者: 亀井三博

ページ範囲:P.452 - P.457

はじめに
 げに悩ましきもの,それは長引く咳である.お年寄りはもちろん,屈強な若者たちも,さすがに咳が3週間以上も続くと,疲れ果てて医療機関を受診される.そしてそれは筆者をはじめとする医療者をも悩ませてやまない.多くの患者さんたちは読者の元に到達するまで,さまざまな医療機関を受診され,あるいは市販薬を試されて来院される.ここで咳に翻弄されている生活を立て直して差し上げないといけない,ゲートキーパーたるプライマリ・ケア医の腕が試される.病歴,身体診察などを通じてさまざまな情報を収集し,パズルの最後のピースがはまり診断にたどり着き,長く悩ませていた咳が消えた時,患者さんと医師の共同作業は完結し,互いに喜びを分かち合う.パズルのピースをはめる場所を見つけるその方法を述べていこう.

【随伴症状と咳:診断アプローチを理解する】

発熱を伴う咳を見た際には?

著者: 宮下修行

ページ範囲:P.458 - P.461

はじめに
 発熱を伴う咳嗽の原因の多くは感染性咳嗽である1〜3).感染性咳嗽は非特異的上気道炎症状を伴うことを特徴とし,周囲に同様の咳嗽患者がいる頻度が高い.ただし症状のみから咳嗽の原因微生物を推定することは困難で,百日咳,マイコプラズマ,肺炎クラミジアなどは咳嗽の原因となる多くの疾患と鑑別困難な微生物とされている1〜3)

むせを伴う咳を見た際には?

著者: 海老原覚 ,   伊豆蔵英明 ,   原田孝

ページ範囲:P.462 - P.465

Case
患者:75歳,ずんぐりした体形の男性.非喫煙者.
現病歴:3年前より咳失神が出現.1年前より,1日1回以上の咳失神を起こすようになり,来院.両側肺底部に拡散する低音性連続性ラ音(scattered rhonchi)を聴取.スパイログラムは正常であったが,血液ガス分析にてPaO2 65torr,PaCO2 48torrと軽い低酸素高炭酸ガス血症を呈していた.胸部単純X線にて両肺底部にわずかな浸潤影を認めた.心電図,脳波に特記所見はなく,MRアンギオにも特記すべき所見はないものの,頭部MRIでは両側の大脳基底核に散在するラクナ梗塞を認めた.
 入院後の観察により,食事時のむせを伴う咳が著明であることより,嚥下障害の存在を疑う.ビーカー50mlの水を徐々に飲んでもらったところ,途中でむせを伴う咳が出現した.
 そこで誤嚥に伴う咳であると診断し,ACE阻害薬(イミダプリル5mg錠を毎日1錠食後)を開始.1週間後に咳発作は消失し,50mlの水も問題なく飲めるようになった.退院後もACE阻害薬を継続し,1年間のフォローアップ期間中においても1度も強い咳発作や咳失神を起こすことはなかった1)

アレルギー性疾患が疑われる咳を見た際には?

著者: 相良博典

ページ範囲:P.467 - P.470

 遷延性・慢性咳嗽の中で多い疾患は咳喘息で,次いで喘息である(図1)1).遷延性・慢性咳嗽を診断していく上では,咳の持続期間および乾性咳嗽か湿性咳嗽かを見極めることが診断のアプローチとしてきわめて重要である.胸部X線上で異常陰影を示さない原因がよくわからない時は,まず喀痰の有無でその方向性を定める.乾性咳嗽が主体の場合には,頻度の高い疾患の診断を示唆する症状および所見から診断を進めるとよい.
 まず典型的な症例を提示する.

後鼻漏を伴う咳を見た際には?

著者: 黒野祐一

ページ範囲:P.472 - P.475

Case
慢性副鼻腔炎により湿性咳嗽を生じた1例
患 者:62歳,女性.
現病歴:3カ月前から咳嗽が続くため近医内科を受診したが,喘息等の下気道疾患はないと言われた.鼻汁がのどに流れる感じがあるため,耳鼻咽喉科受診を勧められ来診した.鼻閉があり,前鼻鏡検査で鼻茸を認めた.中咽頭の視診で咽頭後壁に粘稠な分泌物の付着があるため,鼻咽腔電子内視鏡検査を行ったところ,粘膿性の後鼻漏を認めた(図1).副鼻腔X線およびCTで両側上顎洞に陰影があり(図2),慢性副鼻腔炎と診断し,マクロライドと消炎酵素剤を投与したところ,2週間で咳嗽が軽快し,後鼻漏も消失した.しかし,鼻茸を伴い再燃の可能性があるため手術を勧めた.

胸やけを伴う咳を見た際には?

著者: 外間昭 ,   藤田次郎

ページ範囲:P.476 - P.478

Case
プロトンポンプ阻害薬によって軽快した慢性咳嗽の1例
患者:55歳,男性.
現病歴:1年前から乾性咳嗽を認めていた.咳嗽は,起床時や食後によく生じた.方々の医院を受診するも胸部聴診所見,胸部X線および血液検査に異常なく,鎮咳剤を処方されたが改善しなかった.2カ月前から起床時に胸やけと呑酸が生じたため,総合病院を受診して上部消化管内視鏡検査を受けた.逆流性食道炎と食道裂孔ヘルニアと診断され(図1),プロトンポンプ阻害薬(PPI)を投薬された.数日で胸やけは軽快し,3週間後には咳嗽も消失した.

Editorial

「咳を聴きとり,咳を止める」ことは,総合診療医の腕の見せ所

著者: 藤田次郎

ページ範囲:P.413 - P.413

 咳は日常診療の中で,頻度の高い主訴である.また外来患者の訴える主訴の中で最も多いものである.このため本特集のテーマである「咳を聴きとり,咳を止める」を学ぶことは,総合診療医にとって必須であり,同時に総合診療医の腕の見せ所でもある.
 器質的な呼吸器疾患のみならず,感染症,アレルギー疾患,鼻疾患,胃食道逆流など,さまざまな要因により咳が惹起される.もちろん患者さんの希望は咳を止めてほしいのであるから,咳の原因を明らかにすることは重要な課題である.咳を有する患者さんを診察する際には,咳の持続期間を考慮することが重要である.まず急性の咳は,3週間以内の咳と定義する.亜急性の咳は3週から8週間続く咳である.慢性の咳は8週間以上続く咳である.当然のことながら,長い期間咳が続けば続くほど,感染症の可能性は低くなる.

What's your diagnosis?[149]

腹部の診察でもinching !

著者: 大江将史 ,   林靖大 ,   浜田禅 ,   藤本卓司

ページ範囲:P.416 - P.419

病歴
患者:43歳,男性.
主訴:右下腹部痛.
現病歴:会社の健康診断で2年前からメタボリック症候群の予備群と指摘されていたが,それ以外に病気を指摘されたことはない.入院前日の昼,横になってテレビを見ていたところ,徐々に右下腹部に痛みが出現した.翌日,我慢して仕事をしていたが,夕方同僚に受診を勧められて当院救急外来を独歩で受診した.腹痛は安静時持続痛で体幹後屈や回旋により2/10から8/10に増悪する.痛みの移動はなし.
ROS(-):発熱,悪寒・戦慄,食欲低下,体重減少,頭痛,嘔気,嘔吐,腹部膨満感,便秘,下痢,下血,血尿,胸痛,腰背部痛.
既往歴:なし.
内服薬:なし.
飲酒:缶ビール1本/日.
喫煙:current smoker 30本/日×13年間.

高齢者エマージェンシー—プライマリ・ケア医のためのスキルアップ大作戦・5

救急に送った後の高齢者マネジメント─帰りたくても帰れない

著者: 松村真司

ページ範囲:P.482 - P.486

はじめに
 皆さん,こんにちは.松村医院の松村と申します.前回,藤沼先生が高齢者の救急搬送をいかに防ぐかというお話をしてくださいましたが,私のほうは逆に,救急に送った後のマネジメントを,地域で働く診療所医師,プライマリ・ケア医の立場からお話しさせていただきます.
 簡単に自己紹介をしますと,私は東京都世田谷区という都会の住宅地で働いている診療所医師です.近くには複数の大学病院をはじめ比較的多くの医療機関があり,日頃からこれらの医療機関とはさまざまな連携をとっています.緊急搬送をお願いすることもありますし,逆にこれらの医療機関から退院する患者について,継続診療を依頼されることもあります.以前から当院に通院していた患者を継続診療するのはもちろん,この時点で初めて紹介されることも稀ではありません.本日は,そのような時にしばしば経験する問題について,診療所医師の視点から取り上げてみたいと思います.

みるトレ

Case 88

著者: 佐田竜一

ページ範囲:P.487 - P.489

Case 88
患者:21歳,女性.メイクアップアーティスト.
主訴:腹痛.
現病歴:昨朝から下腹部のずきずきした痛みが出現.本日から38℃台の発熱と頭痛・嘔気が出現したため母親とともに来院.
既往歴・内服歴:特記事項なし.
生活歴:飲酒歴なし.喫煙歴(12本/日×5年).
社会歴:最終性交は6カ月前,今は彼氏がいない.最終月経は2週間前,いつもと同じ.
身体所見:体温38.0℃,血圧93/69mmHg,脈拍58回/分,呼吸数20回/分.
頭頸部・胸部に異常なし,下腹部(恥骨上)に叩打痛・腹壁緊張あり.
検査所見:疾患の鑑別目的で施行した腹骨盤部造影CTを示す(図1).

Dr.徳田と学ぶ 病歴と診察によるエビデンス内科診断・9

胸痛─急性冠症候群? 大動脈解離?

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.490 - P.494

徳田:皆さん,こんにちは.この連載では,臨床疫学を用いた診断過程を学んでいきます.症例に基づきながら,レジデントの皆さんとの対話形式で進めていきます.
 今回は胸痛を主訴とする患者の症例です.胸痛は頻度の高い症状であり,重篤度と緊急度の高い疾患も含まれています.これらはキラー胸痛(killer chest pains)とも呼ばれています(表1).肺塞栓症は呼吸困難のケース(「総合診療」25巻2号)で取り上げたので,今回は緊張性気胸と食道破裂に比べて,比較的頻度の高い急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS,急性心筋梗塞と不安定狭心症を含む)と急性大動脈解離(acute aortic dissection:AAD)についてみていきましょう.
 では,今回のケースの病歴と身体所見をみてみましょう.病歴と診察に加えて,臨床予測スコアの診断の正確度も検証していきます.

憧れのジェネラリストが語る「努力はこうして実を結ぶ!」・5

初学者にもできる,“まとめ”作成のススメ

著者: 綿貫聡

ページ範囲:P.495 - P.495

●“まとめ”の効用
 自分が実益を兼ねて続けている勉強法の一つに,各種勉強会の“まとめ”を作成していることが挙げられます.一般社会でよく言われる,“議事録作成は新人の仕事”というものを地で行く作業だと考えています.
 これを始めた一番のきっかけは,仕事が始まった当初に,院外・院内の勉強会で内容が分からなかったり,ついていけなかったりすることが多くあったことです.例えば,現在須藤博先生(大船中央病院内科)が主催されている「大船GIMカンファレンス」には研修医の頃から参加していますが,ディスカッションについていけず,非常に悔しい思いをしたことがあります.それ以降,まず自分の言葉でカンファレンスのまとめを自主的に作り,抜けてしまったことを人に聴いたり調べたりしながら,まとめをできるだけ即日中にメーリングリストなどにアップすることを目標にしてきました.内容は自分の独創的な内容である必要はなく,あくまで記録ですので,比較的気軽にアウトプットすることができます.

Dr.山中のダイナマイト・レクチャー・7

問題11・12

著者: 山中克郎 ,   寺西智史

ページ範囲:P.496 - P.497

問題11 ショックの分類を4つ挙げて,その4分類の代表的な疾患を述べよ.

血液内科学が得意科目になるシリーズ・14

粘り気のある血液(前編)

著者: 萩原將太郎

ページ範囲:P.498 - P.501

 普段,見逃しがちな血液疾患の一つに形質細胞性疾患があります.貧血など血液異常のみでなく,神経症状,腎機能障害,心機能障害,骨病変など多臓器にわたる症状をきたすことがあります.なかなか診断にたどりつかないことも多く,重症化して初めて診断されることも少なくありません.
 今回は,見逃してはならない形質細胞性疾患について,症例を通じて考えてみましょう.

臨床の勘と画像診断力を鍛える コレクション呼吸器疾患[41]

約2カ月間続く激しい乾性咳嗽を呈した70歳男性

著者: 藤田次郎 ,   宮城征四郎

ページ範囲:P.502 - P.509

本連載では,沖縄県臨床呼吸器同好会の症例検討会をもとに,実況中継形式で読者のみなさんに呼吸器内科疾患を診る際のポイントとアプローチ方法を伝授したいと思います.宮城征四郎先生の豊富な臨床経験に基づいたコメントに注目しながら読み進めてください.画像診断のポイントと文献学的考察も押さえています.それでは早速始めましょう.今月のテーマは,約2カ月間続く激しい乾性咳嗽を呈した70歳男性に対するアプローチです.

シネマ解題 映画は楽しい考える糧[95]

「十戒」

著者: 浅井篤

ページ範囲:P.510 - P.510

改めて『十戒』に想う
 イスラエルの民をエジプトから脱出させたモーゼの生涯を,223分で余すところなく描いたスペクタクル巨編.世界史の勉強にもなりますが,ハリウッド映画のパワーを知ることもできるでしょう.人間と宗教の関わり方についての洞察も得ることができます.中学2年生の時に初めて観賞して,非常に感銘を受けたことを鮮明に憶えています.数人の同級生にも勧めて一緒に2回目を観に行ったことを思い出しました.
 シナイ山でモーゼが神から二枚の石版で授かった戒律には,ユダヤの信仰に関すること以外に,「父母を敬え」「殺すなかれ」「盗むなかれ」「嘘を付くなかれ」「姦淫するなかれ」「隣人のものを貪るなかれ」などが含まれています.今よりもずっとものを知らなかった中学生の頃は,十戒を書き出して自室の壁に貼っていました.これら人間関係における倫理的ルールに純粋に賛同していたのです.その点についてはもちろん今も変わるところはありませんが,今回改めて何回目かの観賞をして,いろいろと新たな思いを抱いたので書き出してみましょう.

総合診療病棟

入院患者における「不穏」を考える—精神科医からのメッセージ

著者: 加藤温

ページ範囲:P.511 - P.513

はじめに─「不穏」といわれたら─
 「不穏」という用語は,科を問わず日常診療においてよく使われる.入院時の指示出しの一環として,不穏時指示を出すことも少なくないであろう.しかしこの「不穏」,その定義を改めて問われると,答えに窮する方が多いのではないだろうか.精神科においても明確な定義があるわけではない.文字通り「穏やかではない」くらいの意味でしかないのであるが,ここにはさまざまな原因や病態が含まれている.
 看護師から「患者が不穏です」と報告を受けた場合,どのような視点が必要になるであろうか.もちろん患者やスタッフの安全確保が第一ではあるが,決して焦ることなく状況を確認し,その原因がどこにあるかという観点が重要である.決して不穏時薬を投与して終わりにしてはいけない.原因を考えることでその後の対応も違ってくる.

掲示板

LPC国際プレフォーラム2015 A Full-day Narrative Medicine Workshop in Tokyo 〜リタ・シャロン教授を迎えて〜ナラティブ・メディスン実践ワークショップ

ページ範囲:P.426 - P.426

日時:2015年6月21日(日)10:00〜17:00
会場:聖路加国際大学301教室(逐語通訳あり)

第18回日本医学会公開フォーラム「前立腺がん」

ページ範囲:P.494 - P.494

日時:平成27年7月4日(土)13:00〜16:00
場所:日本医師会館大講堂(〒113-8621 東京都文京区本駒込2-28-16)TEL:03-3946-2121(代)

読者のみなさんへのお知らせ

『総合診療』誌名変更記念セミナー 「Dr.山中×Dr.徳田 秘伝!フィジカル実演レクチャー 〜カラスが鳴かない日はあっても,診察を愉しまない日はない♪〜」

ページ範囲:P.434 - P.434

今年1月号から総合診療誌『JIM』が『総合診療』に誌名変更したことを記念して,弊社主催によるセミナーを開催します.
講師は,日本のトップジェネラリストとして名高く,また『総合診療』編集委員でもある山中克郎先生(諏訪中央病院内科)と徳田安春先生(地域医療機能推進機構(JCHO)本部).日々なかなか教わることの少ない身体診察の技を実演で伝授してくださいます.明日からの診察がますます楽しくなる,お2人の絶妙なフィジカル技コラボレーション,この機会に皆さま奮ってご参加ください.詳細は,医学書院ホームページをご参照下さい.
日時:2015年6月21日(日)13:00〜16:30
会場:医学書院(東京都文京区本郷1-28-23)

GM Library 私の読んだ本

馬場 元毅(著)『脳神経症候イラストブック』

著者: 寺本明

ページ範囲:P.470 - P.470

 世の中には優れた臨床家,優れた外科医は数多い.一方,世の中には絵の好きな人,上手な人もたくさんいる.しかし,この両者を兼ね備えた人,つまり絵心を持った外科のエキスパートとなると,かなり限られてくる.さらには,教育熱心で,その絵の才能を臨床教育に生かしてあげようとする人となると,ごく一握りである.筆者の知る限り,そういう人はわが国の脳神経外科医の中には数人しかいない.その一人が本書の著者である馬場元毅先生である.
 馬場先生は,大学病院や市中病院で45年にわたる臨床経験を積んでこられた.その経験をもとに,これまでもイラストをふんだんに取り入れた神経学や,その解剖の教科書を数冊出版してこられた実績がある.それらを踏まえて,この度,学研メディカル秀潤社から『脳神経症候イラストブック』を上梓された.

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バックナンバー

ページ範囲:P.514 - P.514

寄稿ガイド

ページ範囲:P.515 - P.515

次号予告

ページ範囲:P.516 - P.516

基本情報

総合診療

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 2188-806X

印刷版ISSN 2188-8051

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32巻3号(2022年3月発行)

特集 AI時代の医師のクリニカル・スキル—君は生き延びることができるか?

32巻2号(2022年2月発行)

特集 —withコロナ—かぜ診療の心得アップデート

32巻1号(2022年1月発行)

特集 実地医家が楽しく学ぶ 「熱」「炎症」、そして「免疫」—街場の免疫学・炎症学

31巻12号(2021年12月発行)

特集 “血が出た!”ときのリアル・アプローチ—そんな判断しちゃダメよ!

31巻11号(2021年11月発行)

特集 Q&Aで深める「むくみ診断」—正攻法も!一発診断も!外来も!病棟も!

31巻10号(2021年10月発行)

特集 医師の働き方改革—システムとマインドセットを変えよう!

31巻9号(2021年9月発行)

特集 「検査」のニューノーマル2021—この検査はもう古い? あの新検査はやるべき?

31巻8号(2021年8月発行)

特集 メンタルヘルス時代の総合診療外来—精神科医にぶっちゃけ相談してみました。

31巻7号(2021年7月発行)

特集 新時代の「在宅医療」—先進的プラクティスと最新テクノロジー

31巻6号(2021年6月発行)

特集 この診断で決まり!High Yieldな症候たち—見逃すな!キラリと光るその病歴&所見

31巻5号(2021年5月発行)

特集 臨床医のための 進化するアウトプット—学術論文からオンライン勉強会、SNSまで

31巻4号(2021年4月発行)

特集 消化器診療“虎の巻”—あなたの切実なギモンにズバリ答えます!

31巻3号(2021年3月発行)

特集 ライフステージでみる女性診療at a glance!—よくあるプロブレムを網羅しピンポイントで答えます。

31巻2号(2021年2月発行)

特集 肺炎診療のピットフォール—COVID-19から肺炎ミミックまで

31巻1号(2021年1月発行)

特別増大特集 新型コロナウイルス・パンデミック—今こそ知っておきたいこと、そして考えるべき未来

30巻12号(2020年12月発行)

特集 “ヤブ化”を防ぐ!—外来診療 基本の(き) Part 2

30巻11号(2020年11月発行)

特集 診断に役立つ! 教育で使える! フィジカル・エポニム!—身体所見に名を残すレジェンドたちの技と思考

30巻10号(2020年10月発行)

特集 —ポリファーマシーを回避する—エビデンスに基づく非薬物療法のススメ

30巻9号(2020年9月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【感染症・内分泌・整形外科 編】

30巻8号(2020年8月発行)

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30巻7号(2020年7月発行)

特集 その倦怠感、単なる「疲れ」じゃないですよ!—筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群とミミック

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特集 下降期慢性疾患患者の“具合”をよくする—ジェネラリストだからできること!

30巻5号(2020年5月発行)

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30巻4号(2020年4月発行)

特集 大便強ドリル—便秘・下痢・腹痛・消化器疾患に強くなる41問!

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特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【循環器・消化器・神経疾患編】

30巻1号(2020年1月発行)

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27巻12号(2017年12月発行)

特集 小児診療“苦手”克服!!—劇的Before & After

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