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特集 咳を聴きとり,咳を止める 【咳の原因の全体像を捉える】 ●病態生理を理解する
咳の機序
著者: 塩谷隆信1
所属機関: 1秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻理学療法学講座
ページ範囲:P.427 - P.431
文献購入ページに移動はじめに
咳嗽は,喀痰や気道内の異物を喀出するための重要な生体防御反射である1〜3).咳嗽の機序は非常に複雑であり,すべては解明されているわけではないが,近年の分子生物学的研究の進歩に伴い,咳嗽の末梢受容体から脳幹部の咳中枢までの反射経路について,その病態生理が次々に明らかにされてきている3).
咳嗽反射を生理学的にみると,短い吸気に(吸息相)引き続いて声門の閉鎖が起こり,胸腔内圧が上昇し(加圧相),続いて声門が開いて強い空気の流れとともに気道内容が押し出される(呼息相)の3つの位相から構成される(図1)4).
長引く咳嗽を訴える患者の診療にあたっては,咳嗽の病態生理に関する理解が不可欠である.咳嗽の機序の解明は,咳嗽診療においてその診断の向上のみならず,その治療方法の進歩にもつながると考えられる.今後,咳嗽の機序に基づいた咳嗽診療における新しい展開が大いに期待される3).
咳嗽は,喀痰や気道内の異物を喀出するための重要な生体防御反射である1〜3).咳嗽の機序は非常に複雑であり,すべては解明されているわけではないが,近年の分子生物学的研究の進歩に伴い,咳嗽の末梢受容体から脳幹部の咳中枢までの反射経路について,その病態生理が次々に明らかにされてきている3).
咳嗽反射を生理学的にみると,短い吸気に(吸息相)引き続いて声門の閉鎖が起こり,胸腔内圧が上昇し(加圧相),続いて声門が開いて強い空気の流れとともに気道内容が押し出される(呼息相)の3つの位相から構成される(図1)4).
長引く咳嗽を訴える患者の診療にあたっては,咳嗽の病態生理に関する理解が不可欠である.咳嗽の機序の解明は,咳嗽診療においてその診断の向上のみならず,その治療方法の進歩にもつながると考えられる.今後,咳嗽の機序に基づいた咳嗽診療における新しい展開が大いに期待される3).
参考文献
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2)日本呼吸器学会;咳嗽に関するガイドライン第2版作成委員会編集:咳嗽に関するガイドライン第2版.メジカルレビュー社,2012.
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4)Bianco S, et al eds : Cough. pp29-36, New York, Raven Press, 1989.
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6)Widdicombe J : Neuroregulation of cough ; implication for drug therapy. Curr Opin Pharmacol 2 : 256-263, 2002.
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11)Groneberg DA, et al : Increased expression of transient receptor potential vanilloid-1 in airway nerves of chronic cough. Am J Respir Crit Care Med 170(12) : 1276-1280, 2004.
12)Abdullah H, et al : Rhinovirus upregulates transient receptor potential channels in a human neuronal cell line ; implications for respiratory virus-induced cough reflex sensitivity. Thorax 69 : 46-54, 2014.
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