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特集 咳を聴きとり,咳を止める 【随伴症状と咳:診断アプローチを理解する】
むせを伴う咳を見た際には?
著者: 海老原覚1 伊豆蔵英明1 原田孝1
所属機関: 1東邦大学医療センター大森病院 リハビリテーション科
ページ範囲:P.462 - P.465
文献購入ページに移動患者:75歳,ずんぐりした体形の男性.非喫煙者.
現病歴:3年前より咳失神が出現.1年前より,1日1回以上の咳失神を起こすようになり,来院.両側肺底部に拡散する低音性連続性ラ音(scattered rhonchi)を聴取.スパイログラムは正常であったが,血液ガス分析にてPaO2 65torr,PaCO2 48torrと軽い低酸素高炭酸ガス血症を呈していた.胸部単純X線にて両肺底部にわずかな浸潤影を認めた.心電図,脳波に特記所見はなく,MRアンギオにも特記すべき所見はないものの,頭部MRIでは両側の大脳基底核に散在するラクナ梗塞を認めた.
入院後の観察により,食事時のむせを伴う咳が著明であることより,嚥下障害の存在を疑う.ビーカー50mlの水を徐々に飲んでもらったところ,途中でむせを伴う咳が出現した.
そこで誤嚥に伴う咳であると診断し,ACE阻害薬(イミダプリル5mg錠を毎日1錠食後)を開始.1週間後に咳発作は消失し,50mlの水も問題なく飲めるようになった.退院後もACE阻害薬を継続し,1年間のフォローアップ期間中においても1度も強い咳発作や咳失神を起こすことはなかった1).
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