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文献概要
特集 高齢者救急の落とし穴─紹介する時,される時 【症状別ピットフォール─atypical presentationを中心に】
外傷—初期診療で隠れた原因も探り出す
著者: 近藤英史1 今明秀1
所属機関: 1八戸市立市民病院 救命救急センター
ページ範囲:P.528 - P.531
文献購入ページに移動肺塞栓が原因で階段から転落した1例
患者:82歳,女性.
主訴:階段から転落.
現病歴:階段の最上段から転がるように転落した.転落時の健忘あり.転落後,自分で家族に連絡し,家族が救急要請.
外傷初期診療:ERでのprimary surveyでは,SpO2 90%(室内気)とB(breathing)に異常あり.secondary surveyでは,右頰部,右上腕,右大腿に打撲痕あり.背部自発痛と上部胸椎の叩打痛あり.FAST(G3)と胸部単純X線写真では,肋骨骨折,血胸,気胸などの外傷性変化なし.しかし,背部痛と低酸素血症は持続していた.階段転落前から背部痛を自覚しており,D-dimer 5.5μg/mlと高値だったため,肺塞栓を含めた血管病態を疑い,造影CTを撮影.左肺動脈末梢に肺塞栓および胸椎圧迫骨折が見つかった.今回の階段転落は肺塞栓が先行して受傷したものと判断した.抗凝固療法を第3病日より開始し,約3カ月で血栓は消失した.
診断:肺塞栓症,腰椎圧迫骨折,右上腕打撲,右大腿打撲.
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