icon fsr

文献詳細

雑誌文献

総合診療25巻6号

2015年06月発行

文献概要

特集 高齢者救急の落とし穴─紹介する時,される時 【症状別ピットフォール─atypical presentationを中心に】

外傷—初期診療で隠れた原因も探り出す

著者: 近藤英史1 今明秀1

所属機関: 1八戸市立市民病院 救命救急センター

ページ範囲:P.528 - P.531

文献購入ページに移動
Case
肺塞栓が原因で階段から転落した1例
患者:82歳,女性.
主訴:階段から転落.
現病歴:階段の最上段から転がるように転落した.転落時の健忘あり.転落後,自分で家族に連絡し,家族が救急要請.
外傷初期診療:ERでのprimary surveyでは,SpO2 90%(室内気)とB(breathing)に異常あり.secondary surveyでは,右頰部,右上腕,右大腿に打撲痕あり.背部自発痛と上部胸椎の叩打痛あり.FAST(G3)と胸部単純X線写真では,肋骨骨折,血胸,気胸などの外傷性変化なし.しかし,背部痛と低酸素血症は持続していた.階段転落前から背部痛を自覚しており,D-dimer 5.5μg/mlと高値だったため,肺塞栓を含めた血管病態を疑い,造影CTを撮影.左肺動脈末梢に肺塞栓および胸椎圧迫骨折が見つかった.今回の階段転落は肺塞栓が先行して受傷したものと判断した.抗凝固療法を第3病日より開始し,約3カ月で血栓は消失した.
診断:肺塞栓症,腰椎圧迫骨折,右上腕打撲,右大腿打撲.

参考文献

1)Watts HF, et al : Evaluation of the revised trauma and injury severity scores in elderly trauma patients. J Emerg Trauma Shock 5(2) : 131-134, 2012.
2)鈴木隆雄:転倒の疫学,日老医誌 40(2) : 85-94, 2003.
3)Gupta M, et al : Presenting complaint among patients with myocardial infarction who present to an urban, public hospital emergency department. Ann Emerg Med 40(2) : 180-186, 2002.
4)日本外傷学会・日本救急医学会:外傷初期診療ガイドライン 改訂第3版.へるす出版,2008.
5)箕輪良行,他:Primary-care Trauma Life Support──元気になる外傷ケア.シービーアール,2013. <外傷初期診療に携わる臨床医が知るべき情報がつまっている>
6)Longo DL, et al(著),福井次夫,他(監):ハリソン内科学 第4版.478-503,メディカルサイエンスインターナショナル,2013. <天下のハリソン内科学にも加齢医学について書かれている>
7)Evans DC, et al : Comorbidity-polypharmacy scoring facilitates outcome prediction in older trauma patients. J Am Geriater Soc 60(8) : 1465-1470, 2012. <既往症と内服薬の数から,死亡率・自宅退院の割合を予想している>

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?