文献詳細
特集 高齢者救急の落とし穴─紹介する時,される時
【症状別ピットフォール─atypical presentationを中心に】
腰背部痛—数多い対象からいかにリスクのある症例をピックアップするか
著者: 小林裕幸1
所属機関: 1筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター・水戸協同病院 総合診療科
ページ範囲:P.544 - P.546
文献概要
頸部の背部痛と四肢脱力を呈した70代男性
患者:70代,男性.糖尿病・高血圧・脳梗塞の既往あり.ADLは自立.
主訴:日曜大工を連日行っていたところ,起床時に両肩・頸部の背部痛を認め,四肢の脱力と歩行困難があり,救急外来を受診.
診察:筋力低下(下肢>上肢),感覚障害あり.脳CT異常なし.血圧左右差なし.低カリウムおよび低血糖なし.発熱なし.自然軽快し,歩行可能となり,周期性四肢麻痺の診断で帰宅の判断となったが…….
転帰:脳梗塞でアスピリンを内服中であるが,脳の病変だけでは全部の症状を説明できない.軽快はしているが,四肢の病変があることから,大動脈解離,低カリウム性周期性麻痺,脊髄硬膜外血腫や膿瘍などの頸髄病変が疑われる.
この症例では,頸部CTでは,異常を認めず,頸部MRIにて広範な脊髄硬膜外血腫を認め,後に膀胱直腸障害を呈した.抗血小板薬が誘因になっていたと考えられる.注意すべき所見(Red flag)としては,安静時痛,新たに生じた筋力低下があてはまる症例である.
参考文献
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