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文献詳細

雑誌文献

総合診療25巻6号

2015年06月発行

特集 高齢者救急の落とし穴─紹介する時,される時

【症状別ピットフォール─atypical presentationを中心に】

様子がおかしい,せん妄,意識障害—認知症と鑑別し,原因病態の診断・治療を

著者: 太田凡1

所属機関: 1京都府立医科大学 救急医療学教室

ページ範囲:P.550 - P.552

文献概要

Case
「認知症が進んだ」ではなかった見当識障害
患者:89歳,男性.
現病歴:軽度の物忘れはあるが,生活は自立している.前夜,瘙痒を伴う膨疹が出現したため救急外来を受診し,蕁麻疹の診断で抗ヒスタミン薬(マレイン酸クロルフェニラミン)の処方を受けた.抗ヒスタミン薬の内服により皮膚症状は軽快したが,夜間不眠と徘徊が出現したため,本日,かかりつけ医を受診し,睡眠導入薬ブロチゾラムの処方を受けた.夜になり睡眠導入薬を服用するも入眠せず,「虫がみえる」「財布をとられた」と言うようになったため,「急に呆けた」と心配した妻に付き添われ再度の救急受診となった.
身体所見:バイタルサイン正常.自発開眼し指示に従うが,やや朦朧としており見当識障害が著明で注意力低下あり.顔面四肢に運動感覚障害を認めず.
検査:血液検査・髄液検査とも正常.頭部単純CTでは脳萎縮を認めるのみ.
診断・治療経過:以上の経過より,症状は認知症の進行ではなく薬剤性せん妄を疑った.抗ヒスタミン薬と睡眠導入薬を中止したところ,見当識障害は改善し,幻視症状は消失した.

参考文献

1)Inouye SK, et al:Delirium in elderly people. Lancet 383(9920): 911-922, 2014. <せん妄スケールのCAM-ICUを作成した高齢者のせん妄を専門とする著者の最新のレビュー>
2)植西憲達:高齢者に多い内因性救急 意識変容.救急医学 35(6): 678-684, 2011. <高齢者の意識変容につき,多くの海外文献を参考に網羅的にまとめられている>
3)岩田充永:Case3 「急にわけがわからないことを言います.認知症でしょうか?」.高齢者救急──急変予防&対応ガイドマップ(JJNスペシャル),88 : 42-47, 医学書院,2010. <長く高齢者救急に取り組んできた著者が,症例をベースにわかりやすく解説している>

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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