文献詳細
特集 高齢者救急の落とし穴─紹介する時,される時
【症状別ピットフォール─atypical presentationを中心に】
様子がおかしい,せん妄,意識障害—認知症と鑑別し,原因病態の診断・治療を
著者: 太田凡1
所属機関: 1京都府立医科大学 救急医療学教室
ページ範囲:P.550 - P.552
文献概要
「認知症が進んだ」ではなかった見当識障害
患者:89歳,男性.
現病歴:軽度の物忘れはあるが,生活は自立している.前夜,瘙痒を伴う膨疹が出現したため救急外来を受診し,蕁麻疹の診断で抗ヒスタミン薬(マレイン酸クロルフェニラミン)の処方を受けた.抗ヒスタミン薬の内服により皮膚症状は軽快したが,夜間不眠と徘徊が出現したため,本日,かかりつけ医を受診し,睡眠導入薬ブロチゾラムの処方を受けた.夜になり睡眠導入薬を服用するも入眠せず,「虫がみえる」「財布をとられた」と言うようになったため,「急に呆けた」と心配した妻に付き添われ再度の救急受診となった.
身体所見:バイタルサイン正常.自発開眼し指示に従うが,やや朦朧としており見当識障害が著明で注意力低下あり.顔面四肢に運動感覚障害を認めず.
検査:血液検査・髄液検査とも正常.頭部単純CTでは脳萎縮を認めるのみ.
診断・治療経過:以上の経過より,症状は認知症の進行ではなく薬剤性せん妄を疑った.抗ヒスタミン薬と睡眠導入薬を中止したところ,見当識障害は改善し,幻視症状は消失した.
参考文献
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