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雑誌目次

雑誌文献

総合診療25巻8号

2015年08月発行

雑誌目次

特集 健診データで困ったら─こんな検査結果を持ってこられたら

今月のQuestion & Keyword Index

ページ範囲:P.717 - P.717

より早く,より的確に内容をとらえるために,QuestionとKeywordによるIndexをご利用ください.
それぞれ各論文の要点を示す質問とキーワードで構成されています.
Question
Q1 「臨床判断値」が存在すれば,「基準範囲」は不要? 718
Q2 病気の予防と健康増進を目的とする健康診断において,今後「遺伝子検査」は画期的な役割を果たすようになるか? 725
Q3 「拘束性換気障害」あるいは「閉塞性換気障害」をきたす疾患・病態は? 729
Q4 CT検診で指摘された「肺結節影」の評価で留意することは? 733
Q5 健診の超音波検査で「肝腫瘤」を指摘されたが,大丈夫か? 737
Q6 抗CCP抗体は特異度の高い検査とされるが,これが陽性であれば「関節リウマチ」と診断できるか? 742
Q7 健診時の腫瘍マーカー高値で注意することは? 748
Q8 脳ドックで施行された頭部MRIにおいて,点状のT2高信号域を認めることが稀ならずあるが,すべて「無症候性ラクナ梗塞」と考えてよいのか? 753
Q9 血清ペプシノゲン検査が異常と言われたら 758
Q10 心不全診断において,NT-proBNPをどのように用いるか? 762
Q11 睡眠呼吸検査で「陽性」と判定された患者さんが来院したら,どのように対応するか? 766

ONE MORE GM

ページ範囲:P.773 - P.774

Q1 呼吸機能から「肺年齢」がわかると聞いたのですが?
A1 肺年齢とは,呼吸機能検査結果を一般の人にもわかりやすく示すために,年齢に置き換えて表現したものであり,日本呼吸器学会が独自に考案した指標である.1秒量の測定値を用いて,性別ごとに算出される.同性・同世代と比較して自分の呼吸機能がどの程度であるかを確認でき,肺の健康意識を高めることで,COPDなどの呼吸器疾患の早期発見・早期治療に活用されることが期待されている.詳細は,肺年齢普及推進事務局ホームページ「肺年齢.net(http://www.hainenrei.net/)」を参照されたい.

【総論】

1.健康人の「基準範囲」と「臨床判断値」

著者: 市原清志

ページ範囲:P.718 - P.724

 最近,日本人間ドック学会(Japan Society of Ningen Dock;JSND)では,150万人の健診検査データを最新の統計処理技術を使って分析し,検査項目の性別・年代別の「基準範囲」を新たに設定した1).しかし,その設定値と臨床ガイドラインに示された「臨床判断値」との差異について,議論が起こっている.そこで,両者の概念と設定法を対比して解説し,臨床の現場でその混同を避けてどのように使い分けるべきかを述べる.

2.健康診断と遺伝子検査—予防医療の時代に向けて

著者: 河津晶子

ページ範囲:P.725 - P.728

 2013年5月,乳癌と卵巣癌の発症リスクに関わる遺伝子検査(乳癌感受性遺伝子1;BRCA1)の結果を受けて,ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが予防目的で両乳腺切除を行った.その報道を契機に,日本国内でも「遺伝子検査」への注目が集まるようになり,“遺伝子ドック”などの名称で予防医療サービスに加える施設や,インターネットなどで直接消費者に遺伝子検査サービスを提供する企業も増えてきている.しかし,「遺伝情報」は検査を受けた個人だけのものではないため,結果を伝える際の倫理的配慮や情報の管理,また検査精度の問題など多くの課題があり,慎重に取り扱われなければならない.
 本稿では,遺伝子検査の紹介と医療者が取り扱う際の注意点を概説し,健康診断・予防医療における遺伝子検査の今後の課題について考察したい.

【各論】

1.呼吸機能に異常が見つかったら

著者: 佐藤匡 ,   瀬山邦明

ページ範囲:P.729 - P.732

Case
健康診断の結果,「禁煙」を決意した65歳・男性
患者:65歳,男性.20歳から現在まで,1日約20本の喫煙を続けている.
既往歴:63歳時より高血圧症.
現病歴:半年ほど前から痰が絡むことが多くなり,階段を昇る時やゴルフの時などに軽度の息切れを自覚するようになっていた.会社の健康診断で呼吸機能異常を指摘され,近医を受診した.
 呼吸機能検査の結果は,肺活量4.3l(対標準値107%),1秒量2.3l(対標準値71.5%),1秒率56.2%であった.胸部X線では肺野の過膨張所見など認めなかったが,胸部CTで上葉を中心に気腫性変化が確認された.慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)と診断され,バレニクリン(チャンピックス)による禁煙治療,および気管支拡張薬(吸入抗コリン薬)の吸入が開始された.

2.胸部CTの異常と経過観察の仕方

著者: 古堅誠 ,   藤田次郎

ページ範囲:P.733 - P.736

Case
「胸部CT検診で肺結節影を指摘されたのですが……」
患者:76歳,男性.
既往歴:高血圧・不整脈で近医通院中.
喫煙歴:20〜40歳,20本/日.
職業歴:元教師.アスベスト曝露歴・粉塵吸入歴なし.
主訴:検診異常.胸部CT検診にて,右肺上葉に肺結節影(右肺上葉に,径13mm大で内部均一な,すりガラス状結節影)(図1A)を指摘され,外来を受診した.呼吸器自覚症状は乏しく,全身状態良好である.肺結節影をどのように判定し,今後の方針を立てたらよいであろうか?

3.腹部エコーに異常所見があったら

著者: 小川眞広

ページ範囲:P.737 - P.741

Case
健診の超音波検査で発見された高分化型肝細胞癌の1例
症例:61歳,男性.
家族歴:特記事項なし.
現病歴:これまで勤め先の健診では,γ-GTP(GGT)の軽度上昇の他は,大きな異常は指摘されていなかった.飲酒家でもあり年々増加しているわけでもないので,精密検査は行っていなかった.
 今年,定年後のため人間ドックを受診し,初めて超音波検査を施行したところ,10mmの高エコー腫瘤を指摘され,精査目的で紹介となった.造影CTなどでは明らかな腫瘍濃染像を呈さなかったが,精密検査の結果「C型慢性肝炎」および「肝細胞癌」の診断となる.手術を施行したところ,高分化型の肝細胞癌であった.その後,抗ウイルス療法を施行し,C型肝炎ウイルスも陰性化となり,現在に至っている.

4.リウマトイド因子(RF)または抗CCP抗体,抗核抗体が陽性だったら

著者: 大島久二 ,   牛窪真理 ,   泉啓介 ,   秋谷久美子

ページ範囲:P.742 - P.747

 リウマトイド因子(rheumatoid factor;RF)や抗CCP抗体(anti-cyclic citrullinated peptide antibody),抗核抗体は,リウマチ・膠原病の診断の一助として用いられる.しかし,これらの検査は,単独では疾患に直接結びつくものではない.一方,血液検査の一般化と健康診断の普及により,無症状あるいは類似の症状のみにもかかわらず,これらの検査結果が陽性であった,ということで病院を受診することも多い.
 本稿では,これらの検査の意味するところを概説し,日常診療に役立つよう概説する.

5.腫瘍マーカーが高かったら

著者: 末廣寛 ,   松本俊彦 ,   山﨑隆弘

ページ範囲:P.748 - P.751

Case
CA125一過性異常高値を示した1例
患者:30歳台,女性.
経過:健診でCA125が1,000U/μl以上を示したため,入院のうえ精査となった.生来健康で,特に自覚症状はないとのことであった.悪性腫瘍を疑い,さまざまな検査を行ったが何も異常はなく,原因を突き止めることができなかった.CA125の推移をみるため再検査したところ,基準値内であった.結局,「異常なし」ということで退院となった.
 初回検査時の高値はいったい何だったのだろうと,20数年前の出来事ではあるが,今でも不思議に思う.腫瘍マーカーは1回だけの検査で判定するのではなく,必ず推移を追っていく必要があるものと痛感した症例であった.また,初回検査時の“検体間違い”の可能性も考慮して,検査センターに問い合わせるべきであったと今でも思う.

6.脳ドック(頭部MRI)で所見を指摘されたら

著者: 髙橋哲也 ,   松本昌泰

ページ範囲:P.753 - P.757

Case
脳ドック検診結果に不安を抱いた中年男性
患者:50歳台,男性.
経過:脳ドックの検査結果を持って来院した.頭部MRIの所見として,❶白質のラクナ梗塞様所見の多発,❷CMBsの所見なし,❸VSRAD Z-score=0.8,❹脳底動脈の単一の動脈瘤(3mm大)の記載があり,総合判定欄には「要精密検査」と記されていた.その他の検査項目で指摘されたものはなく,既往歴・自覚症状ともないが,初めての脳ドックの結果に不安を抱いている.

7.血清ペプシノゲン検査が異常と言われたら

著者: 一瀬雅夫 ,   前北隆雄 ,   加藤順

ページ範囲:P.758 - P.761

Case
健康診断で血清PG陽性の56歳男性
患者:56歳,男性.  自覚症状:なし.
家族歴:母親が72歳時に胃癌で死亡.
現病歴:最近,高血圧傾向を指摘されているほかは,著患は認めず.服薬なし.
 5年前,勤め先の健康診断で,血清ペプシノゲン陽性(PGⅠ 5ng/ml,PGⅡ7ng/ml,PGⅠ/Ⅱ比0.7)を指摘されて以来,紹介先の診療所で毎年胃内視鏡検査を受けているが,特に異常を指摘されずに経過している.今年も胃内視鏡検査を受けるように通知が来たが,つらい検査を毎年受ける必要があるのかと意見を求めている.
 血清PG値は,胃癌の存在を示す腫瘍マーカーではない.胃癌リスクの指標である.判定基準では,強陽性(PGⅠ値≦30μg/lかつPGⅠ/Ⅱ比≦2.0)に該当し,「高度萎縮性胃炎」の存在が示唆される.胃癌発生年率約0.4%の“胃癌ハイリスク”に相当することを説明,胃内視鏡による精密検査を毎年受けることが望ましいとご理解いただいた.

8.NT-proBNPが異常値だったら

著者: 小林泰士 ,   佐藤幸人

ページ範囲:P.762 - P.765

Case
腎血管性高血圧症による急性心不全の1例
患者:87歳,女性.  既往歴:高血圧
現病歴:夜間入眠中に突然の呼吸困難を訴え,当院へ救急搬送となった.起座呼吸を呈し,血圧242/140mmHg,心拍数120回/分,呼吸数32回/分,SpO2 88%(酸素10l/分投与下・リザーバーマスク)であった.酸素投与下の血液動脈ガス分析では呼吸性アシデミアを認め,採血検査では心筋逸脱酵素の上昇は認めなかったものの,BNP 1,024.5pg/ml,NT-proBNP 13,674pg/mlと著明な上昇を認めた.胸部X線ではbutterfly shadowを認めたが,心電図でも心エコーでも虚血性変化は認めなかった.
経過:クリニカルシナリオ11)の急性心不全と診断し,血管拡張薬を用いて降圧を開始,さらに非侵襲的陽圧換気(NIPPV)を用いて呼吸状態を改善させた.各種精査の結果から右腎動脈狭窄を認め,カテーテル治療を行って血圧は安定化した.BNP 58.7pg/ml,NT-proBNP 784pg/mlまで改善し,独歩退院となった.

9.睡眠呼吸検査が陽性だったら

著者: 小野啓資

ページ範囲:P.766 - P.771

Case
鼾と日中眠気を訴え,睡眠時無呼吸症候群(SAS)検診で要精査と判定された1例
症例:60歳,男性.
主訴:日中眠気,鼾.
現病歴:20年前から鼾を指摘されており,ここ1年前から日中の眠気も訴えるようになった.201X年8月の人間ドックの夜間SpO2モニターと質問紙によるSAS検診にて,G判定(要精査)と判定され,同月,当科を受診された.
既往歴:10年前から高血圧.3年前からアレルギー性鼻炎.
喫煙歴:40本/日,20〜40歳.
アルコール:ビール350ml/日×週2回.
検査所見:身長165cm,体重71kg,BMI 26.1.
エプワース睡眠尺度 日本語版(JESS)14点,ODI 3% 25.
入院後経過:検診結果よりSASが疑われたが,重症度判定・治療方針決定のために,同年10月に入院にてPSGを施行したところAHI 48で,無呼吸は閉塞性優位であったため,重症の閉塞型SAS(OSAS)と診断され,治療としてCPAP療法(オートCPAP,4〜15cm H2O)を開始した.その結果,鼾と日中眠気の症状は改善し,CPAPに記録されたAHIは2〜3に改善した.

Editorial

治療の標準化と診断の尖端化

著者: 伊藤澄信

ページ範囲:P.709 - P.709

 ICT(Information and Communication Technology)の進歩で,巷にはさまざまな情報があふれている.ブログやSNSなど,消費者が作成した医療情報が爆発的に増えている.それらの情報は必ずしも科学的根拠に基づくとは限らないが,患者さんの気持ちを揺り動かす.公益財団法人日本病院機能評価機構が厚生労働省の委託事業として公開しているMindsガイドラインセンターには,AGREEⅡで評価され,質が担保された141の診療ガイドラインが掲載されている.診療ガイドライン作成には,❶作成プロセスの不偏性(偏りのない判断の保障,特にCOI),❷エビデンス総体の評価(システマティックレビューに評価と統合),❸益と害のバランスが重要とされ,診療ガイドラインを作成する学会はMindsの作成ワークショップに参加して作成過程を標準化し,質は担保されてきた.
 しかしながら,100を超える診療ガイドラインの内容をすべて把握することなど困難なだけでなく,診療ガイドラインそのものもユーザーフレンドリーとは限らない.診療ガイドラインの多くはクリニカルクエスチョン(CQ)単位で構成されているが,CQ単位で診療ガイドラインの横断的検索を可能とし,モバイル端末で利用できるMindsモバイルが8月に公開される.診療ガイドラインに記載されていることを目の前の患者に適応できるかどうかを判断するのは,総合診療医のアート(技術)である.科学的根拠を味方に診療への自信を強化するツールになってほしい.

What's your diagnosis?[152]

どこから来たの?

著者: 片山順平 ,   金森真紀 ,   酒見英太

ページ範囲:P.712 - P.716

病歴
患者:50代,女性.介護職.
主訴:発熱,全身筋肉痛.
現病歴:40日前に39℃の発熱とその後1週間続く微熱があったが,病院は受診せずロキソプロフェンを内服し,自然改善した.10日前に発熱と全身筋肉痛があり,自宅にあったレボフロキサシンとロキソプロフェンを内服したが,良くなった感じがしないため,翌日当院救急室(ER)を受診した.
 身体所見で両側腋窩に1個ずつ1.5cm大,右後頸部に2cm大の弾性軟な圧痛を伴わないリンパ節腫脹と,左腓腹に刺し口が認められた.検尿では膿尿・細菌尿は認められず,採血ではWBC 9,800/μl,Eo 26.9%(2,600/μl)と好酸球増多が認められた.ERでは原因がはっきりせず,アセトアミノフェンを処方され,外来フォローを指示された.発熱はER受診翌日に改善し,自覚症状はなかったが,5日前の採血ではWBC 7,800/μl,Eo 34.0%(2,700/μl)と,依然として好酸球増多は続いていた.2日前に再度全身筋肉痛を伴って39.4℃の発熱が出現し,アセトアミノフェン内服で経過を見ていたが,改善に乏しいため,当科外来を受診した.
 悪寒戦慄,頭痛,鼻汁,咽頭痛,咳・痰,呼吸苦,胸痛,背部痛,悪心・嘔吐,腹痛,下痢,頻尿・残尿感,異常帯下,関節痛,浮腫,皮疹,しびれ,筋力低下,食欲不振,体重変化はいずれもなかった.
既往歴:膀胱炎(若い時に2〜3回),冠攣縮性狭心症の疑い(1年前).
アレルギー:なし.
薬剤歴:アセトアミノフェン屯用, ロキソプロフェン屯用.
喫煙歴:1年半前にいったんやめたが,数カ月前から数日に1回吸っている.
飲酒歴:なし.
曝露歴:約25日前にハイキングで虫に左下腿を刺され出血した.
飼育歴:4〜5年前から猫1匹を飼っている.犬も飼っていたが半年前に病死.
生食歴:2カ月前に焼肉屋で牛の生レバーを食べた.
渡航歴:海外旅行歴なし.

Dr.徳田と学ぶ 病歴と診察によるエビデンス内科診断・12

腰痛─感染? 腫瘍? あるいは椎間板ヘルニア?

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.776 - P.779

徳田:みなさん,こんにちは.この連載では「臨床疫学」を用いた診断ロジックを学びます.症例に基づきながら,レジデントのみなさんとの対話形式で進めていきます.
 今回は,「腰痛」を主訴とする患者さんです.腰痛には,「レッドフラッグ」という警告症状リストがありましたね(表1).このレッドフラッグは,日本腰痛学会のガイドラインにも掲載されるようになりました.
 では,今回の症例をみてみましょう.

Dr.山中のダイナマイト・レクチャー・10

問題15

著者: 山中克郎 ,   寺西智史

ページ範囲:P.780 - P.781

問題15 高エネルギー外傷(バイク単独事故)の次の患者への外傷初期診療として,適切なのは❶〜❹のどれか?
 21歳,女性.バイクの単独事故で搬送された.救急隊によると「電柱にぶつかり,患者はバイクから10m以上離れたところで発見された」.右季肋部に打撲痕あり.不穏,体温35.9℃,心拍数102回/分,血圧121/76mmHg,SpO2 91%(酸素10l/分・リザーバーマスク),呼吸数22回/分.
 救急隊により,全脊柱固定のうえ10l/分の酸素投与を受けながら搬入されてきた.次にとるべき行動は?
 ❶診察できないので鎮静薬投与.
 ❷気道→呼吸→循環と順番に診察.
 ❸胸腔ドレーンの挿入.
 ❹すぐに頭部CT.

血液内科学が得意科目になるシリーズ・17

Oncological Emergency!(腫瘍学的緊急症)

著者: 萩原將太郎

ページ範囲:P.782 - P.786

 悪性腫瘍は,しばしば致命的な合併症をきたします.なかでも血液悪性腫瘍では,「救急処置」を要する合併症の頻度が高く,迅速かつ的確な対応が求められます.今回は,Oncological Emergency(腫瘍学的緊急症)について考えてみましょう.

みるトレ

Case 91

著者: 忽那賢志

ページ範囲:P.789 - P.791

Case 91
患者:40代,男性.
主訴:発熱,耳の下が腫れてきた.
現病歴:3日前より左耳の下が腫れていることを自覚していた.2日前には右耳の下部も同様に腫れてきて,発熱も伴うようになった.その後も症状が改善しないため当院耳鼻咽喉科を受診し,感染症が疑われたため感染症内科に紹介となった.現在は軽い頭痛と,食欲不振があるという.
既往歴:特記事項なし.ムンプスの既往なし.
予防接種歴:定期接種はすべて接種済み.ムンプスの予防接種は不明.
sick contact:病人との接触はないとのこと.小児との接触歴もない.
身体所見:血圧122/74mmHg,脈拍102回/分,体温38.7℃,呼吸数16回/分.
両耳下腺の腫脹を認める(図1).

レジデントCase Conference

呂律難を訴え搬送された大柄な50代男性

著者: 仲里信彦 ,   淺井友美子 ,   永田恵蔵

ページ範囲:P.792 - P.796

◆オッカムの剃刀か,ヒッカムの格言か? 入院時に“おかしい”と感じたことは,解決しておこう!

憧れのジェネラリストが語る「努力はこうして実を結ぶ!」・8

ずっと続けていること

著者: 忽那賢志

ページ範囲:P.797 - P.797

 国立国際医療研究センターの忽那と申します.感染症を専門にしております.
●1つだけありました
 「ずっと続けていること(努力はこうして実を結ぶ!)を書いてほしい」との編集部からの要望ですが,私がずっと続けていることは,実は“ない”ことに気づきました.初期研修医の時にやっていた,DJや動画編集は今はやっていませんし,今やっているダニ採集は,初期研修医の時には考えられなかった趣味です.基本的に熱しやすく冷めやすい人間なのであります.
 しかし,1つだけ“ずっと続けていること”を挙げるとすると,それは「お寺巡り」です.これは初期研修医1年目から今日に至るまで続いている趣味です.

GM Library 私の読んだ本

中山 明子・西村 真紀(編)『お母さんを診よう—プライマリ・ケアのためのエビデンスと経験に基づいた女性診療』

著者: 松村理司

ページ範囲:P.799 - P.799

 家庭医が産婦人科医と協力して,「お母さんをどう診るか」について,この方面に不慣れなプライマリ・ケア医用に書きあげられた書物である.「内診台などがないセッティングで,プライマリ・ケア医がどう女性を支えていくかという視点」ということが,本書の「はじめに」に記されている.
 私は,医師生活40年余のうち,最近の30年間を病院総合医として暮らしてきたので,プライマリ・ケア医や家庭医にはかなりの親近感を覚える.ところが,今回書評のために本書を通読したところ,新しい知識や事実を教えられることがあまりに多く,読み終わって付箋を数えると65カ所にも及んでいた.「女性をみたら妊娠を疑え」は,病院内診断推論の鍵の1つだと,研修医に口を酸っぱくして語っていたが,プライマリ・ケアの場での実践は,たしかに一層の広がりが必要である(67頁,岡田唯男先生).

シネマ解題 映画は楽しい考える糧[98]

「ツォツィ」

著者: 浅井篤

ページ範囲:P.800 - P.800

南アフリカが舞台の名作
 南アフリカを舞台にした,2006年アカデミー賞外国語映画賞受賞作品です.主人公は幼い頃に家出をして,今や少年ギャングになっている中学生くらいの若者.皆から“ツォツィ”と呼ばれています.ツォツィは「不良,チンピラ」の意.学校にも行かなければ仕事もありません.ある日,仲間の1人が殺人を犯してしまったのをきっかけに仲間割れ.ツォツィは車強盗を単独で行い,運転していた女性を撃ってしまいます.ところが盗んだBMWには生後数カ月の乳飲み子が乗っていました.
 ツォツィは後先考えず赤ん坊を連れて帰りますが,扱いあぐねて途方に暮れてしまいます.そこで授乳中のミリアムという若い母親に銃を突きつけて授乳させます.ツォツィは赤ん坊に,少しずつですが着実に愛着を感じるようになっていきました.しかし,彼に乳飲み子を育てられるわけはありません.ミリアムにも「両親に赤ちゃんを返すように」言われます.ツォツィは一大決心をして,赤ん坊の両親の家を訪ねるのでした.

バックナンバー

ページ範囲:P.803 - P.803

次号予告

ページ範囲:P.804 - P.804

基本情報

総合診療

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 2188-806X

印刷版ISSN 2188-8051

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30巻11号(2020年11月発行)

特集 診断に役立つ! 教育で使える! フィジカル・エポニム!—身体所見に名を残すレジェンドたちの技と思考

30巻10号(2020年10月発行)

特集 —ポリファーマシーを回避する—エビデンスに基づく非薬物療法のススメ

30巻9号(2020年9月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【感染症・内分泌・整形外科 編】

30巻8号(2020年8月発行)

特集 マイナーエマージェンシー門外放出—知っておくと役立つ! テクニック集

30巻7号(2020年7月発行)

特集 その倦怠感、単なる「疲れ」じゃないですよ!—筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群とミミック

30巻6号(2020年6月発行)

特集 下降期慢性疾患患者の“具合”をよくする—ジェネラリストだからできること!

30巻5号(2020年5月発行)

特集 誌上Journal Club—私を変えた激アツ論文

30巻4号(2020年4月発行)

特集 大便強ドリル—便秘・下痢・腹痛・消化器疾患に強くなる41問!

30巻3号(2020年3月発行)

特集 これではアカンで!こどもの診療—ハマりがちな11のピットフォール

30巻2号(2020年2月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【循環器・消化器・神経疾患編】

30巻1号(2020年1月発行)

特集 総合診療医の“若手ロールモデル”を紹介します!—私たちはどう生きるか

27巻12号(2017年12月発行)

特集 小児診療“苦手”克服!!—劇的Before & After

27巻11号(2017年11月発行)

特集 今そこにある、ファミリー・バイオレンス|Violence and Health

27巻10号(2017年10月発行)

特集 めまいがするんです!─特別付録Web動画付

27巻9号(2017年9月発行)

特集 うつより多い「不安」の診かた—患者も医師も安らぎたい

27巻8号(2017年8月発行)

特集 見逃しやすい内分泌疾患─このキーワード、この所見で診断する!

27巻7号(2017年7月発行)

特集 感染症を病歴と診察だけで診断する!Part 3 カリスマ編

27巻6号(2017年6月発行)

特集 「地域を診る医者」最強の養成法!

27巻5号(2017年5月発行)

特集 コミュニケーションを処方する—ユマニチュードもオープンダイアローグも入ってます!

27巻4号(2017年4月発行)

特集 病歴と診察で診断できない発熱!—その謎の賢い解き方を伝授します。

27巻3号(2017年3月発行)

特集 これがホントに必要な薬40—総合診療医の外来自家薬籠

27巻2号(2017年2月発行)

特集 The総合診療ベーシックス—白熱!「総合診療フェスin OKINAWA」ライブ・レクチャー! 一挙公開 フィジカル動画付!

27巻1号(2017年1月発行)

特集 総合診療の“夜明け”—キーマンが語り尽くした「来し方、行く末」

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