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文献詳細

雑誌文献

総合診療25巻8号

2015年08月発行

文献概要

What's your diagnosis?[152]

どこから来たの?

著者: 片山順平1 金森真紀1 酒見英太1

所属機関: 1洛和会音羽病院総合診療科

ページ範囲:P.712 - P.716

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病歴
患者:50代,女性.介護職.
主訴:発熱,全身筋肉痛.
現病歴:40日前に39℃の発熱とその後1週間続く微熱があったが,病院は受診せずロキソプロフェンを内服し,自然改善した.10日前に発熱と全身筋肉痛があり,自宅にあったレボフロキサシンとロキソプロフェンを内服したが,良くなった感じがしないため,翌日当院救急室(ER)を受診した.
 身体所見で両側腋窩に1個ずつ1.5cm大,右後頸部に2cm大の弾性軟な圧痛を伴わないリンパ節腫脹と,左腓腹に刺し口が認められた.検尿では膿尿・細菌尿は認められず,採血ではWBC 9,800/μl,Eo 26.9%(2,600/μl)と好酸球増多が認められた.ERでは原因がはっきりせず,アセトアミノフェンを処方され,外来フォローを指示された.発熱はER受診翌日に改善し,自覚症状はなかったが,5日前の採血ではWBC 7,800/μl,Eo 34.0%(2,700/μl)と,依然として好酸球増多は続いていた.2日前に再度全身筋肉痛を伴って39.4℃の発熱が出現し,アセトアミノフェン内服で経過を見ていたが,改善に乏しいため,当科外来を受診した.
 悪寒戦慄,頭痛,鼻汁,咽頭痛,咳・痰,呼吸苦,胸痛,背部痛,悪心・嘔吐,腹痛,下痢,頻尿・残尿感,異常帯下,関節痛,浮腫,皮疹,しびれ,筋力低下,食欲不振,体重変化はいずれもなかった.
既往歴:膀胱炎(若い時に2〜3回),冠攣縮性狭心症の疑い(1年前).
アレルギー:なし.
薬剤歴:アセトアミノフェン屯用, ロキソプロフェン屯用.
喫煙歴:1年半前にいったんやめたが,数カ月前から数日に1回吸っている.
飲酒歴:なし.
曝露歴:約25日前にハイキングで虫に左下腿を刺され出血した.
飼育歴:4〜5年前から猫1匹を飼っている.犬も飼っていたが半年前に病死.
生食歴:2カ月前に焼肉屋で牛の生レバーを食べた.
渡航歴:海外旅行歴なし.

参考文献

1)Despommier D : Toxocariasis ; Clinical aspects, epidemiology, medical ecology, and molecular aspects. Clin Microbiol Rev 16 : 265-272, 2003.
2)Wiśniewska-Ligier M, et al : Analysis of the course and treatment of toxocariasis in children-a long-term observation. Parasitol Res 110 : 2363-2371, 2012.
3)丸山治彦,他:感染症とその検査法 食品由来寄生虫症.検査と技術 24 : 192-196, 1996.
4)西村和子,他:抗寄生虫IgG抗体スクリーニング検査の臨床応用と問題点.ホルモンと臨床 50 : 901-909, 2002.
5)Stürchler D, et al : Thiabendazole vs albendazole in treatment of toxocariasis ; a clinical trial. Ann Trop Med Parasitol 83 : 473-478, 1989.
6)丸山治彦,他:寄生虫症薬物治療の手引き2014. 熱帯病治療薬研究班,pp1-88, 2014.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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