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文献詳細

雑誌文献

総合診療25巻9号

2015年09月発行

文献概要

特集 診断ピットフォール10選─こんな疾患,見逃していませんか? 【各論❷】

ダメだ,自分の名前が書けない

著者: 土肥栄祐1

所属機関: 1県立広島病院 脳神経内科

ページ範囲:P.821 - P.825

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Case : 診断は何か?
患者:71歳,男性,一人暮らし.娘に連れられて受診.
現病歴:2カ月前までは普通に生活することができていた.15年前から肝臓が少し悪く,消化器内科へ通院中であった.しかし2カ月前頃から,娘との待ち合わせなど約束したことを忘れることが目立つようになった.また,書類に名前を書いてもらう際に「ダメだ,書けない」と自分の名前が書けず,しかし休んだ翌日には書けるようになることもあった.このため,物忘れを心配され,神経内科へ紹介となった.
 娘に話を聞くと,週に1回ほど様子を見に行くが,以前よりも部屋に物が散らかっていることが,この2カ月で4〜5回あったとのこと.
 本人も「最近は物忘れが増えたと感じ,調子が悪い」と思っている.
内服薬:プロトンポンプインヒビター,ベンゾジアゼピン系睡眠薬(不眠時),ウルソデオキシコール酸など多種類.
 診察では,意識は清明,バイタルサインは正常,身体所見,神経学的所見とも異常なし.改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R) 25/30と軽度低下しているのみであった.

参考文献

1)Ghosh S, et al : New-onset epilepsy in the erderly ; challengies for the internist. Cleve Clin J Med 81(8): 490-498, 2014. <高齢者てんかんについて診断,治療,背景疾患までよくまとまったレビュー>
2)Tanaka A, et al : Clinical characteristics and treatment responses in new-onset epilepsy in the elderly. Seizure 22(9): 772-775, 2013. <日本の高齢者てんかんにおける臨床的特徴と治療反応性.66%が側頭葉てんかん,14%が前頭葉てんかん.47%が二次性全般化のない複雑部分発作,40%が二次性全般化.77%が単剤で加療可>
3)土肥栄祐:すんなりわかる実践!脳から疾患をみる.治療 95(12): 2072-2077, 2013. <認知症に間違われそうになった,高齢者てんかん例について>
4)Martin RC, et al : Psychiatric and neurologyc risk factor for incident cases of new-onset epilepsy in older adults ; data from U.S. Medicare beneficiaries. Epilepsia 55(7): 1120-1127, 2014. <リスクファクターとなる背景疾患に関した研究.脳血管障害が最大だが,少なからず精神疾患も関与しうる>
5)Zeman A : Transient epileptic amnesia. Curr Opin Neurol 23(6): 610-616, 2010. <中年以降の男性に生じやすい,30〜60分と短時間の(長いと数時間の)前向性健忘.81%が記憶障害の訴え>

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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