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文献詳細

雑誌文献

総合診療26巻11号

2016年11月発行

文献概要

特集 続・しびれるんです! 【多発神経炎の鑑別診断】

この痛み,なんとかしてください!

著者: 土肥栄祐1

所属機関: 1

ページ範囲:P.922 - P.929

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Case
患者:72歳,男性.
●3年前:左下腿のしびれ感を自覚.
●1年前:両手足先の冷感,チカチカした感じが出現した.左母指の伸ばしにくさと箸の使いにくさを自覚.
●6カ月前:両手指先のしびれ感は増悪し,ボタンも付けにくくなり,歩行時に足の裏が浮いているような感覚となった.
●3カ月前:息苦しさ,および間欠性跛行が出現し増悪した.循環器内科にてCTR(心胸比)58%,心エコー上,びまん性の左室壁肥厚を指摘される.不整脈や冠動脈病変はなし.二次性心筋症が疑われるも,原因は不明.Ca拮抗薬と利尿薬にてフォロー.
●2カ月前:しびれ感,四肢筋力低下,100mも歩けないほどの間欠性跛行にて,整形外科を受診.頸椎症および腰部脊柱管狭窄症の診断となり,「腰部脊柱管狭窄症は手術適応」との説明を受けた.
既往歴:20年前に急性腰痛症,5年前より徐脈の指摘あり.
喫煙歴:1年前より禁煙(それまで20本/日).
飲酒歴:焼酎1合/毎日.
家族歴:父方の祖父;疼痛の訴えあり(原因は不明),父;肺がんで死去,母;肺がん,息子は2人ともに健康.
【身体所見】
HEENT(head,eyes,ears,nose,throat):異常なし.
頸部:頸動脈雑音なし,甲状腺腫大なし,頸部リンパ節腫脹なし.
胸部:心拡大(+),心雑音や過剰心音はなく,呼吸音清明,左右差なし.
腹部:腸蠕動音正常,腫瘤なし,肝脾腫も認めない.
四肢:両足の冷感あり,やや乾燥.両足背動脈は触知良好.
皮膚:皮疹なし.
【神経学的所見】
 脳神経系は正常,近位筋の筋力は上下肢にて正常,手首の掌背屈にてMMT(徒手筋力テスト)3-4/3-4,握力は17kg/18kg(右利き),下腿三頭筋は正常だが,足関節背屈がMMT 4/2と低下していた.右手の母指球と第1背側骨間筋の軽度萎縮,また両足底の筋が軽度萎縮していた.反射は,上肢は正常,両下肢で左優位に腱反射の減弱を認め,Wartenberg徴候,Babinski徴候などの病的反射は認めなかった.
 しびれ感・疼痛が強く,両手首および両膝以遠にある(右手第1-3で強い).
痛覚:
●右手掌・手背および右足背にて痛覚過敏(+).
●右手ではring finger splittingが陽性.
●前腕遠位では上腕や体幹と比較し軽度鈍麻.
●下腿遠位では大腿や体幹と比較し軽度鈍麻.
振動覚:
上肢(中指);16s/15s,下肢;膝蓋骨6s/6s,外果;0s/0sと低下を認めた.小脳系は異常なし.
自立歩行は可能,Romberg徴候は陽性であった.

参考文献

1)David CP, et al : Electromyography and Neuromuscular Disorders ; Clinical-Electrophysiologic Correlations, 3rd ed. Elsevier Saunders, 2012. <臨床所見から電気生理診断まで一貫性をもっており,重要なことは繰り返し書かれている,教育的な教科書>
2)薮内健一,他:著名な自律神経障害を呈した神経サルコイドーシスの67歳男性例.日サ会誌 33 : 139-145, 2013. <サルコイドーシスにて自律神経障害を呈する場合は,後根神経節の障害の可能性があることなどを考察している>
3)Dineen J, et al : Autonomic Neuropathy. Semin Neurol 35(4): 458-468, 2015. <自律神経障害を呈する純粋な末梢神経障害のレビュー.末梢性の自律神経障害をきたす鑑別は,この文献に乗っているものがすべてではないと思われる>
4)Wechalekar AD : Systemic amyloidosis. Lancet 387(10038): 2641-2654, 2016. <イギリスでの5,100人のアミロイドーシス患者を対象にした臨床試験データを基にした表と,診断フローチャートがあり,わかりやすい>
5)安東由喜雄:家族性アミロイドポリニューロパチーの診療ガイドライン.https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/neuropathy.pdf <PDFをフリーでダウンロードできる.詳細かつとてもわかりやすい>
6)Adams D, et al : Amyloid neuropathies. Curr Opin Neurol 25(5): 564-572, 2012. <ALおよび変異TTRによる末梢神経障害についてまとめてある.非典型例の頻度なども書かれており,手で発症することもある等,興味深い内容>
7)Brouwer BA, et al : Neuropathic pain due to small fiber neuropathy in aging ; current management and future prospects. Drug Aging 32(8): 611-621, 2015. <高齢者のsmall fiber neuropathyによる疼痛についてまとめてある.ポリファーマシーに対する警鐘も鳴らしている.処方戦略と副作用対策のフローチャートがある>

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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