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文献詳細

雑誌文献

総合診療26巻4号

2016年04月発行

文献概要

What's your diagnosis?[160]

自家薬籠中の鑑別診断

著者: 酒見英太1

所属機関: 1洛和会音羽病院

ページ範囲:P.280 - P.283

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病歴
患者:66歳,主婦.甲状腺機能低下症で内服治療中.喫煙・飲酒はしない.
主訴:腰部の間欠的灼熱感と寝汗.
現病歴:受診8カ月前より両鼠径部にピリピリ感があり,次第に歩行困難となったため6カ月前に腰部MRIを撮ったところ,Th 11/12に重度の椎間板ヘルニアを認めたため,他院にて椎弓切除とチタン合金による後方固定術を受けた.以後,歩行はほぼ元通りに改善するも,両鼠径部〜大腿内側にかけての不快感は残っていた.リハビリで酷使した両上肢近位部痛(特に右)は徐々に改善し,受診時は消失している.
 ところが,5カ月前より咽頭痛,3カ月前より全身倦怠感と夕方の微熱,1カ月前より両上臀部の間欠的灼熱感と著明な寝汗が出現し,術後に0.58まで低下していたCRPがじわじわと上がり始めて,1カ月前からは10mg/dl前後で持続した.これらは耳鼻科医院,内科医院で抗菌薬(セフジトレンピボキシル,ファロペネム,クラリスロマイシン)の投与を受けるも,改善しなかった.消化器内科医院における上部消化管内視鏡・大腸内視鏡,産婦人科医院における診察はいずれも異常所見なく,当院内科外来における血液培養2セット陰性,RF/ANA/ANCA検査陰性,胸腹部造影CTで甲状腺右葉囊胞と石灰化子宮筋腫2つを指摘されただけで,原因不明のため,紹介受診した.
 悪寒,食欲不振,体重減少,頭痛,頭皮過敏,視力障害,顎跛行,頸部痛,持続する上肢痛,耳鼻症状,嚥下痛,咳・痰,胸痛,呼吸苦,動悸,腹痛・腹満,便通変化,排尿変化,異常帯下,灼熱感ではない背部痛・腰痛・臀部痛,筋力低下,知覚異常・鈍麻,振戦,ふらつき,関節痛・腫脹,浮腫,リンパ節腫脹,皮疹・出血斑は,いずれもなかった.
既往歴:小学生時に扁摘,61歳時に高脂血症,腺腫様甲状腺腫,64歳時に胃潰瘍にてH.pylori除菌,胃食道逆流症(GERD).薬物・食物アレルギーはない.
薬剤歴:エイコサペンタエン酸,エゼチミブ,レボチロキシン50μ,ラベプラゾール,テプレノン→受診1週間前からレボチロキシンのみとしている(∵1カ月前より肝型ALP↑).
家族歴:母が78歳で大動脈解離(AoD : Aortic Dissection),姉が75歳でリウマチ性多発筋痛症(PMR).

参考文献

1)Fernandez-Lopez MJ, et al : Low back pain as presenting manifestation of giant cell arteritis associated to abdominal aortitis. Clin Exp Rheumatol 25(1 Suppl 44): S31-33, 2007. <腹部大動脈のGCAは腰痛をきたす>
2)Hunder GG : Clinical features of GCA/PMR. Clin Exp Rheumatol 18(4 Suppl 20): S6-8, 2000. <GCAでは咽頭痛も肝障害も起こる>
3)Carlo S, et al : Polymyalgia ruematica and giant cell arteritis. N Engl J Med 347(4): 261-271, 2002. <GCAでは空咳,咽頭痛,嗄声も起こる>
4)Gonzalez-Gay MA, et al : Giant cell arteritis ; laboratory tests at the time of diagnosis in a series of 240 patients. Medicine(Baltimore) 84 : 277-290, 2005. <GCAでALPの上昇は25%に認める>

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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