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雑誌目次

雑誌文献

総合診療26巻6号

2016年06月発行

雑誌目次

特集 “賢い処方”と“ナゾ処方”

今月のQuestion & Keyword & Drug Index

ページ範囲:P.444 - P.446

より早く,より的確に内容をとらえるために,QuestionとKeywordによるIndexをご利用ください.それぞれ各論文の要点を示す質問とキーワードで構成されています.本特集に限り,主な薬剤(Drug)のIndexも作成しました.
Question
Q1 「Choosing Wisely(賢い選択)キャンペーン」とは? 447
Q2 不適切処方を認識しようとせずに,なんとなくdo処方し続けるのは,やはり問題でしょうか? 451
Q3 「deprescribingプロトコル」の手順は? 459
Q4 「新薬」を処方する時に注意すべきポイントは? 466
Q5 「超高齢者」に対する薬物療法で,特に気を配る点は? 469
Q6 高齢者に「本来処方されるべき薬剤」がないか,どのように確認し介入したらよいか? 473
Q7 「使ってはいけない!」「なくてもよいのではないか?」という抗菌薬は? 141
Q8 え,「あの薬を飲んでから関節が痛い」って? 精神的なものじゃないの? 481
Q9 多剤併用している高齢者が救急搬送されてきました.救急室で留意すべきことは? 486
Q10 アナフィラキシーに対するポララミンやアタラックスPなどの「抗ヒスタミン薬」,「静注ステロイド」は有効か? 490
Q11 気管支喘息の急性発作に対する「テオフィリン製剤」の点滴は有効か? 490
Q12 過換気症候群における「ペーパーバック呼吸法」は有用か? 490
Q13 急性のめまい発作に対して,単独で有効性が示されている薬剤は存在するか?
  「ATP製剤」であるアデホスコーワ顆粒,「浸透圧利尿薬」(イソバイド,メニレット),「ビタミンB12」(メチコバール)は有効か? 490
Q14 ポリファーマシーの問題に対して,「薬剤師」には何ができるのか? 495

ONE MORE GM

ページ範囲:P.516 - P.517

Q1 薬の整理はいつ行えばいいですか?
A1 外来のたびに,処方する薬剤が患者の病状に最適化されているかを判断することが望ましい.しかし実際には,忙しい外来で毎回見直すのは困難であるかもしれない.入院した場合には,薬の整理を行う好機である.また外来であっても,新たに処方を追加する際に他の薬でやめられるものがないかを検討する癖をつけておくのもよいし,患者の誕生月の受診時には必ず薬剤整理を行うとマイルールを決めておくのも1つの方法である.

【“賢い処方”への第一歩】

そもそも“賢い処方”とは?—賢い処方の3つの要件

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.447 - P.450

Case ❶
降圧薬の変更による一石三鳥の効果
患者:75歳,男性.
既往歴:高血圧症,脳梗塞,慢性腎臓病,便秘.
現病歴:脳梗塞による嚥下機能障害あり,誤嚥性肺炎にて入院加療目的に紹介.
所見:BMI 20,血圧170/100mmHg.
処方と経過:誤嚥性肺炎は,抗菌薬にて治癒.降圧薬としてカルシウム拮抗薬が投与されていたが,誤嚥性肺炎への予防効果も認められているACE阻害薬の投与に切り替えた.また,高齢者の便秘症におけるカルシウム拮抗薬は「不適切処方」とされることもある.
 退院後,血圧管理は良好で,誤嚥性肺炎の再発はなく,便秘症も改善した.

そもそも“ナゾ処方”とは?—不適切処方をしない/放置しないための8箇条

著者: 北和也

ページ範囲:P.451 - P.458

“ナゾ処方”のスクリーニング
 NSAIDs潰瘍による出血性ショック(p.487),SU薬による低血糖性昏睡(p.488・500・512)など,派手な薬剤有害事象(adverse drug events : ADE,p.486)で痛い目にあえば,以降の処方には十分注意を払いたくなる.しかし,なかには認識しにくいADEもあり,その場合は経験を蓄積しにくいので,同じ過ちを繰り返しうる.たとえば次のようにして,“見る人が見ればナゾ”な処方が繰り返されているのではないだろうか.
●ADEの発現が緩徐かつ地味なものはインパクトに乏しく「痛い目にあえない」ので,潜在的な不適切処方(PIM)(G1)としてなかなか意識できない(例:PPIによる慢性腎臓病〔後述〕).
●コモンな症状や非特異的症状は,ADEとして認識しづらい.特に超高齢者・認知症患者のADEは,underdiagnosis(過小診断)または誤診されやすい(図1).
●派手なADEが出ていても,後医のフィードバックを受けなければ,前医の経験知として蓄積されない.

—deprescribing⇆re-prescribing!?—問題処方の中止・中断/再開の手順と注意点

著者: 南郷栄秀

ページ範囲:P.459 - P.465

Case
deprescribingプロトコルを用いてポリファーマシーを解消した一例
患者:76歳,女性.
服薬歴:ブロプレス 8mg分1,アムロジン 5mg分1,リピトール 10mg分1,アマリール 3mg分1,トラゼンタ 5mg分1,バイアスピリン 100mg分1,ネキシウム 20mg分1,アリセプトD 3mg分1,デパス 1.5mg分3,マイスリー 5mg分1,メチコバール 1,500mg分3.
現病歴:肺炎で入院し,抗菌薬で治療して回復した.入院がポリファーマシー解消の好機ととらえ,減薬を試みた.
 deprescribingプロトコルを用いたところ,デパスとメチコバールは服薬理由がはっきりせず,血圧が110/50mmHg程度しかなかったため降圧薬とベンゾジアゼピン系薬によりふらつきをきたしていると考えた.また,ネキシウムは処方のカスケードによって加えられていると判断し,その他の各薬剤による利益もあまりないと判断された.そこで,まずは有害作用を引き起こしている薬剤から1〜2剤ずつ中断し,最終的にトラゼンタ 5mg分1だけが残った.減薬による問題は特になく,退院した.

目まぐるしく現れる「新薬」との付き合い方,知られざる注意点

著者: 片岡裕貴

ページ範囲:P.466 - P.468

Case
慢性便秘に難渋している一例
患者:72歳,女性.気管支喘息にて通院中.
現病歴:慢性便秘症に対して,緩下剤(センノシド24mg/日)を頓服し,週4回程度の排便あり.
 「ルビプロストンという新しい下剤が出た」と患者がインターネットで調べて,添付文書を診察室で医師に手渡してきた.

【ケース別“賢い処方”と“ナゾ処方”】

超高齢者には不要なクスリとそのリスク

著者: 西村正大

ページ範囲:P.469 - P.472

あるあるナゾ処方Case
自己転倒による頭部外傷で入院した超高齢者の内科的管理を依頼された一例
患者:89歳,女性.42kg.要介護2,中等度認知症.自宅で息子夫婦と同居.
既往歴:77歳からアルツハイマー型認知症.82歳時に心房細動.87歳時に腰椎圧迫骨折(転倒後).
内服歴:
▼◯◯内科クリニックより
ワーファリン,アイトロール,ラシックス,ニトロダームTTS,アリセプト,酸化マグネシウム,レンドルミン,マイスリー
▼△△整形外科クリニックより
ロキソニン,ムコスタ,エディロール
現病歴:自宅で転倒後に救急搬送となり,軽度の急性硬膜下血腫を認めたため,脳外科入院となりました.あなたは入院中の内科的管理を依頼され,ワーファリンの再開とその他の内服薬について継続すべきかどうかで悩んでいます.

超高齢者でも一度は適応を考えるべき大事なクスリ—ポリファーマシーvsアンダートリートメント

著者: 吉岡靖展

ページ範囲:P.473 - P.477

あるあるナゾ処方Case
肺炎・心不全で入院した高齢者への処方再開
患者:83歳,女性.
既往歴:高血圧・慢性心不全にて近医A内科,腰部脊柱管狭窄症にて近医B整形外科に通院中.
現病歴:2日前からの発熱・咳・痰・呼吸苦にてERを受診.肺炎に伴う慢性心不全増悪の診断にて入院.抗菌薬治療および酸素投与,利尿薬と血管拡張薬にて軽快した.担当となった研修医と,内服薬の再開ならびに今後の二次予防について,どうするか議論となった.
処方薬:
▼近医A内科より
●アムロジピンOD 5mg 1錠 分1朝食後
●ランソプラゾール15mg 1錠 分1朝食後
●モサプリド5mg 3錠 分3毎食後
●エチゾラム0.5mg 1錠 分1就寝前
▼近医B整形外科より
●リマプロスト5μg 3錠 分3毎食後
●ロキソプロフェン60mg 3錠 分3毎食後
●ノイロトロピン4単位 3錠 分3毎食後
●レバミピド100mg 3錠 分3毎食後

使ってはいけない!抗菌薬,なくてもよいのではないか?という抗菌薬—「処方を憎んでクスリを憎まず」

著者: 忽那賢志

ページ範囲:P.478 - P.480

あるあるナゾ処方Case
抗菌薬の不適切処方による死亡例
患者:30歳台,男性.
現病歴:3週間前から,鼻汁・咽頭痛が出現した.その翌日から咽頭痛が増強し,咳嗽も伴うようになってきた.職場の上司から「クラビットという抗菌薬がよく効くから,もらってこい」とアドバイスされ,近医を受診した.近医では,「最近は,クラビットよりいい薬があるから」と言われ,ジェニナックを1週間分処方された.ジェニナックを内服している間に,鼻汁・咽頭痛・咳嗽は改善した.
 ところが,1週間前から発熱と腹痛・下痢(1日10回以上の水様便)が出現するようになり,再び近医を受診した.簡単な問診のうえ,「もっとよく効く抗菌薬があるから,今度はこっちにしてみよう」と言われ,オラペネムを処方された.その後も発熱と腹痛・下痢は続いたが,年度末のため仕事をどうしても休めず受診できなかった.職場に出勤してこないため上司が自宅に様子を見にいくと,患者は布団の中で死亡していた.
 剖検が行われたところ,死因はクロストリジウム-ディフィシル感染症(Clostridium difficile infection:CDI)による巨大中毒結腸症と麻痺性イレウスであった.

よくある症状が「薬剤の副作用」だったなんて!—“いつもの処方”のピットフォール

著者: 根本祐宗 ,   佐田竜一

ページ範囲:P.481 - P.485

あるあるナゾ処方Case
ビスホスホネート製剤による食道炎から漏出液を伴う両側下腿浮腫をきたした一例
患者:74歳,女性.
主訴:食思不振,両側下腿浮腫,右下腿の難治性潰瘍.
現病歴:もともと入院の3カ月前から徐々に食事が進まなくなってきていたが,何とか食べていた.徐々に下腿がむくむようになり,足も重くなってきたとのこと.
 入院の4日前に階段を踏み外して右下腿を打撲し,徐々に潰瘍化した.全身状態の緩徐な悪化と潰瘍の加療目的で,近医より紹介となり入院となった.
既往歴:左大腿骨骨幹部骨折(73歳時),胃癌(54歳時),骨粗鬆症.
内服薬:リセドロン酸ナトリウム2.5mg/日(ビスホスホネート),カモスタットメシル酸塩300mg/日.
入院時現症:身長148cm・体重35.5kg,BMI 16.2.バイタルサイン安定.
 両側下腿に著明な浮腫(fast pitting edema,漏出液がしみ出している),右下腿に5×7cmの潰瘍あり.
検査所見:Alb 1.9g/dl,BUN 20mg/dl,Cr 0.61
mg/dl.BNP 36.8pg/ml.TSH 3.520μIU/ml,FT4 1.0ng/dl(正常下限),FT3 1.00pg/ml(低値).VitB1 41ng/ml(正常).
入院後経過:上記より,栄養不良による低アルブミン血症・浮腫・創傷治癒の遷延をきたしていると考え,食思不振の改善を目指した.来院時に随伴症状を聞くと,胸焼け,胸骨裏の不快感があり,食道炎を考えリセドロン酸ナトリウムを休薬してスクラルファートを投与したところ,入院4日目には安定して食事摂取が可能となり,徐々に血清アルブミン値も改善し,浮腫・潰瘍も軽快して退院となった.
 上部消化管内視鏡は本人に抵抗感があり未施行ではあるが,るいそう・亀背が強く,ビスホスホネート製剤による薬剤性食道炎が起こりやすい素因があった.食道炎により食思不振が起こり,更にるいそうになるという悪循環が強く疑われる症例であった.

—また運ばれてきた!—「薬剤の副作用」による救急搬送症例

著者: 浅川麻里

ページ範囲:P.486 - P.489

あるあるナゾ処方Case
意識障害と嘔吐で救急搬送された高齢者
患者:86歳,女性.ADLは杖歩行.
既往歴:高血圧で内科,膝関節痛で整形外科に通院中.
主訴:意識障害,嘔吐.
現病歴:1週間前から,食欲が低下していた.来院当日,朝からボーッとして会話が成立せず,数回嘔吐したため家族が救急要請.
 来院時の意識レベル E3V4M5,他のバイタルサインや身体所見は異常なし.血糖値110mg/dl,血液検査結果でCr 2.6mg/dl,Ca(Alb補正後)13.8mg/dlが判明.
 処方薬を確認すると,内科からトリクロルメチアジド(フルイトラン),整形外科からロキソプロフェン(ロキソニン)とエルデカルシトール(エディロール)が処方されていた.
 ビタミンD製剤内服中にNSAIDsとサイアザイド系利尿薬によりeGFR(推算糸球体濾過量)が低下したため血清カルシウムが上昇,腎障害の悪化によりカルシウム排泄が低下し,ついにビタミンD中毒による高カルシウム血症を発症したと考えられた.

ER・集中治療領域における“エビデンスに乏しい処方”

著者: 大楠崇浩 ,   金成浩 ,   木積一浩 ,   永田慎平

ページ範囲:P.490 - P.493

あるあるナゾ処方Case❶
アナフィラキシーなのに抗ヒスタミン薬とステロイド?!
患者:35歳,男性.そばアレルギー.
現病歴:昼食に冷麺を摂取後,10分程度で気分不良と嘔吐が出現,15分程度で喘鳴と胸部不快感を自覚し,ERへ搬送となる.顔貌は苦悶様.血圧142/80mmHg,心拍数122回/分,SpO2 92%(室内気).呼気時にwheezeを聴取.体幹・四肢に発赤を認める.
 冷麺に含まれるそば粉による「アナフィラキシー」が疑われ,ハイドロコートン200mgとポララミン5mgが点滴静注された.

【スペシャル・アーティクル】

薬剤師からみたポリファーマシー問題—薬剤師にできること,医師にしてほしいこと

著者: 青島周一

ページ範囲:P.495 - P.499

あるあるナゾ処方Case
かぜのポリファーマシー
患者:30歳台,男性.
薬局窓口での主訴:発熱,咽頭痛,鼻汁.医師より「ただのかぜ」と言われている.
患者背景:現在服用中の薬剤はなく,また合併症などもない.
今回の処方:
以下の❶〜❻を5日分,❼を10回分.
❶フロモックス錠100mg 3錠分3 毎食後
❷ムコダイン錠500mg 3錠分3 毎食後
❸メジコン錠15mg 3錠分3 毎食後
❹トランサミン錠250mg 3錠分3 毎食後
❺ムコスタ100mg 3錠分3 毎食後
❻PL顆粒 3g分3 毎食後
❼ブルフェン200mg 発熱時 1回1錠

【ホンネ座談会】

なぜ僕らは“ナゾ処方”をするのか?—「ナゾ処方例への処方せん」つき

著者: 北和也 ,   矢吹拓 ,   吉田英人 ,  

ページ範囲:P.500 - P.515

北 今日は,いったい何について語り合うのか? 企画者として,初めに“ナゾ処方”という言葉に込めた意味をお話しさせていただきたいと思います.
 第一に,ナゾ処方とは,“ダメ処方”や“ムダ処方”だけを表わすのではありません.僕らが日々行っている処方には,禁忌や不適切処方検出ツール(p.451・474)に該当するものだけでなく,慣例あるいは自分流でなんとなく行っている処方や,たとえガイドラインで推奨されてはいても「この患者さんにベネフィットをもたらしているか」が疑わしい,いわば“グレーゾーン”にある処方が少なからずあります.

Editorial

ポリファーマシー問題への介入が,いま熱い!

著者: 北和也

ページ範囲:P.437 - P.437

 「ポリファーマシー」という言葉に初めて出会ったのは,『提言──日本のポリファーマシー』(徳田安春,尾島医学教育研究所,2012)という本の中でした.何となくネットで購入してみたその本では,多剤併用がもたらす問題点についてディスカッションされていました.それまで,日常診療のなかで日々感じていたけれども,あまり触れられていないテーマだったので,衝撃を受けると同時に深く共感したのを覚えています.
 研修医の頃から現在(卒後11年目)に至るまで,医師としてさまざまなシチュエーションで働いてきましたが,いついかなる時も不適切処方にまつわるエピソードがつきまといました.悔しい思いもたくさんしてきましたが,それは私に限らないことだと思います.

What's your diagnosis?[162]

GIMカンファレンス

著者: 小山弘 ,   孫瑜

ページ範囲:P.441 - P.443

病歴
症例:70代,女性.大阪出身.両親は鹿児島出身.
主訴:歩けない,しゃべりにくい,食欲がない.
現病歴:2カ月程前から全身の筋力低下,食欲低下,全身のかゆみが出た.1カ月半前から歩きにくさ,しゃべりにくさを自覚.1カ月前になって歩けなくなり,近医より紹介され受診.
 朝のほうがしんどい.眼瞼が下がってくることはない.動悸,発汗,振戦,胸痛はなし.もともと体重は45kgぐらいだった.よだれが出る.嚥下できる.固形物よりも液体のほうが飲み込みやすい.食べた後に苦いものが上がってくる.
既往歴:X年前,乳癌に対し右乳房温存術・右腋窩リンパ節郭清術施行,放射線療法.1年前に術後補助療法終了.
内服薬:ミカルディスR錠40mg 1錠分1,アムロジピンROD錠5mg 1錠分1,アシノンR錠 75mg 2錠分2,ナウゼリンROD錠10mg 2錠分2.

Empirical EYE・1【新連載】

「患者の想い」をポリファーマシー対策の布石に—“クリニック薬剤師”としての経験から

著者: 八田重雄

ページ範囲:P.519 - P.523

 日常診療において指針になるのは,エビデンスばかりではありません.臨床経験に基づく個別の知恵や直観もまた,おおいに頼りになるもの.そこで,日々の実践に基づく工夫や考察,経験知を,言語化して共有する新コーナー「Empirical EYE」を始めます.
 今回は,プライマリ・ケア認定薬剤師として,“クリニック薬剤師”という稀少な立場から「処方」に関わり,患者そして医師をはじめとする多職種とのコミュニケーションに基づいて実践してきた「ポリファーマシー対策」の経験則をご報告いただきます.(編集室)

Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー! クスリとリスク・3

ジギタリス中毒

著者: 上田剛士

ページ範囲:P.524 - P.527

症例
患者:75歳,女性.
現病歴:3カ月前に心房細動からの脳塞栓症のために左片麻痺が出現.もともと独居であったが,ADLが低下し車椅子生活となっている.2カ月前に両下腿浮腫が出現したため心不全が疑われ,フロセミド10mg/日とジゴキシン0.125mg/日が追加処方された.2週間前から食欲が低下し,救急外来を受診した.検査にて血清Cr 1.9mg/dl,K 3.0mEq/l,血中ジゴキシン濃度3.2ng/mlが確認された.補液のみにて食欲と腎機能障害は改善し,退院.最終的には「就下性浮腫に対して処方された薬剤による腎前性腎不全と食欲低下」と判断された.
Q:ジギタリスは中毒を起こしやすいが,「陽性変力作用と陰性変時作用を持つ」という他にはない特徴があり,かつ安価(9.6円/錠)というメリットがあります.副作用を生じさせずにジギタリスを上手に用いるためには,どのような点に注意すればよいでしょうか?

Dr.加藤の これで解決!眼科Q&A相談室・9

ペンライト法はどれくらい使える検査なのか?

著者: 加藤浩晃

ページ範囲:P.528 - P.529

今月のQuestion
本連載第1回で,「抗コリン薬を投与できないのは,緑内障のなかでも閉塞隅角緑内障の人であり, 開放隅角緑内障では投与可能である」ことがわかりました.簡便な方法としてペンライト法が挙げられていましたが,どのくらい使える検査なのでしょうか?

レジデントCase Conference

Basedow病に遷延する労作時息切れを合併した40代女性

著者: 塚本裕 ,   仲里信彦

ページ範囲:P.530 - P.533

◆甲状腺機能亢進症が高拍出性心不全を合併することはよく知られているが,稀に肺高血圧症の原因にもなりうるので注意が必要である.長期の甲状腺機能亢進状態に合併することがあり,注意を要する.

臨床の勘と画像診断力を鍛える コレクション呼吸器疾患[50]

呼吸困難,右側胸腹部痛を主訴とし,救急車で来院した72歳女性

著者: 藤田次郎 ,   宮城征四郎

ページ範囲:P.534 - P.542

本連載では,沖縄県臨床呼吸器同好会の症例検討会をもとに,実況中継形式で読者のみなさんに呼吸器内科疾患を診る際のポイントとアプローチ方法を伝授したいと思います.宮城征四郎先生の豊富な臨床経験に基づいたコメントに注目しながら読み進めてください.画像診断のポイントと文献学的考察も押さえています.それでは早速始めましょう.今月のテーマは,呼吸困難,右側胸腹部痛を主訴とし,救急車で来院した72歳女性に対するアプローチです.

GM Library 私の読んだ本

松村理司(監),酒見英太(編)『診断力強化トレーニング2 What's your diagnosis?』

著者: 小泉俊三

ページ範囲:P.545 - P.545

 本書は,書名が示すように2008年に刊行された『診断力強化トレーニング』の続編である.今回は監修の立場に移られた松村理司先生(洛和会総長)が,巻頭の「序」で本書の礎となっている「京都GIMカンファレンス」が1998年以来,休むことなく開催され,昨年2月には200回を数えたことを紹介しておられる.評者も,5年近く毎月第一金曜日は「京都GIMの日」と決めて参加しているが,京都・山科にある洛和会音羽病院の会議室を埋め尽くす熱気には,毎回圧倒される.
 本書をひもといてみると,前書を踏襲して50症例が「救急外来」「一般外来」「紹介受診」に色分けされ,その合間に要点を短くまとめた「Bullet」症例が38例掲載されている.

バックナンバー

ページ範囲:P.547 - P.547

次号予告

ページ範囲:P.548 - P.548

基本情報

総合診療

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 2188-806X

印刷版ISSN 2188-8051

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30巻11号(2020年11月発行)

特集 診断に役立つ! 教育で使える! フィジカル・エポニム!—身体所見に名を残すレジェンドたちの技と思考

30巻10号(2020年10月発行)

特集 —ポリファーマシーを回避する—エビデンスに基づく非薬物療法のススメ

30巻9号(2020年9月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【感染症・内分泌・整形外科 編】

30巻8号(2020年8月発行)

特集 マイナーエマージェンシー門外放出—知っておくと役立つ! テクニック集

30巻7号(2020年7月発行)

特集 その倦怠感、単なる「疲れ」じゃないですよ!—筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群とミミック

30巻6号(2020年6月発行)

特集 下降期慢性疾患患者の“具合”をよくする—ジェネラリストだからできること!

30巻5号(2020年5月発行)

特集 誌上Journal Club—私を変えた激アツ論文

30巻4号(2020年4月発行)

特集 大便強ドリル—便秘・下痢・腹痛・消化器疾患に強くなる41問!

30巻3号(2020年3月発行)

特集 これではアカンで!こどもの診療—ハマりがちな11のピットフォール

30巻2号(2020年2月発行)

特集 いつ手術・インターベンションに送るの?|今でしょ! 今じゃないでしょ! 今のジョーシキ!【循環器・消化器・神経疾患編】

30巻1号(2020年1月発行)

特集 総合診療医の“若手ロールモデル”を紹介します!—私たちはどう生きるか

27巻12号(2017年12月発行)

特集 小児診療“苦手”克服!!—劇的Before & After

27巻11号(2017年11月発行)

特集 今そこにある、ファミリー・バイオレンス|Violence and Health

27巻10号(2017年10月発行)

特集 めまいがするんです!─特別付録Web動画付

27巻9号(2017年9月発行)

特集 うつより多い「不安」の診かた—患者も医師も安らぎたい

27巻8号(2017年8月発行)

特集 見逃しやすい内分泌疾患─このキーワード、この所見で診断する!

27巻7号(2017年7月発行)

特集 感染症を病歴と診察だけで診断する!Part 3 カリスマ編

27巻6号(2017年6月発行)

特集 「地域を診る医者」最強の養成法!

27巻5号(2017年5月発行)

特集 コミュニケーションを処方する—ユマニチュードもオープンダイアローグも入ってます!

27巻4号(2017年4月発行)

特集 病歴と診察で診断できない発熱!—その謎の賢い解き方を伝授します。

27巻3号(2017年3月発行)

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27巻2号(2017年2月発行)

特集 The総合診療ベーシックス—白熱!「総合診療フェスin OKINAWA」ライブ・レクチャー! 一挙公開 フィジカル動画付!

27巻1号(2017年1月発行)

特集 総合診療の“夜明け”—キーマンが語り尽くした「来し方、行く末」

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