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特集 感染症ケアバンドル・チェックリスト 【感染症予防バンドル・チェックリスト】
人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防
著者: 五十野博基1
所属機関: 1筑波大学附属病院総合診療グループ 水戸協同病院総合診療科
ページ範囲:P.589 - P.591
文献購入ページに移動人工呼吸器関連肺炎(VAP)とは
人工呼吸器関連肺炎(VAP:ventilator-associated pneumonia)は,気管内挿管から48時間以上経過して発症した呼吸器感染症であり,特に,❶新たなまたは増悪する胸部浸潤影と,❷臨床所見3つ(38℃以上の発熱,白血球上昇・減少,膿性痰)のうち2つがあれば疑われる.「疑われる」と書いたのは,この基準が感度69%,特異度75%との報告もあり,診断精度が高くないからである.さらに他にもCPIS(clinical pulmonary infection score)など複数の診断基準があり,VAPの診断自体にコンセンサスが得られていないからである.
新たに2013年,CDC(アメリカ疾病予防管理センター)からVAE(Ventilator-associated event)という人工呼吸器関連の有害事象を広く含む概念が提案されている.これにはCDCの旧基準と異なり,自動的にカルテから抽出可能な量的指標が用いられている.2日間以上の人工呼吸器管理の後に酸素化が悪化すれば,まずVAC(ventilator-associated condition:人工呼吸器関連状態)に該当する.さらに感染や炎症の徴候を認めると,IVAC(infection-related ventilator-associated complication:感染症に関連した呼吸器合併症)に該当する.ここに膿性の気道分泌物や細菌検査の陽性所見があれば,基準に照らしてpossibleまたはprobable VAPと定義している1).これらはあくまでサーベイランス基準であり,治療目的の診断とは異なるが,今後の扱いに注目したい.
人工呼吸器関連肺炎(VAP:ventilator-associated pneumonia)は,気管内挿管から48時間以上経過して発症した呼吸器感染症であり,特に,❶新たなまたは増悪する胸部浸潤影と,❷臨床所見3つ(38℃以上の発熱,白血球上昇・減少,膿性痰)のうち2つがあれば疑われる.「疑われる」と書いたのは,この基準が感度69%,特異度75%との報告もあり,診断精度が高くないからである.さらに他にもCPIS(clinical pulmonary infection score)など複数の診断基準があり,VAPの診断自体にコンセンサスが得られていないからである.
新たに2013年,CDC(アメリカ疾病予防管理センター)からVAE(Ventilator-associated event)という人工呼吸器関連の有害事象を広く含む概念が提案されている.これにはCDCの旧基準と異なり,自動的にカルテから抽出可能な量的指標が用いられている.2日間以上の人工呼吸器管理の後に酸素化が悪化すれば,まずVAC(ventilator-associated condition:人工呼吸器関連状態)に該当する.さらに感染や炎症の徴候を認めると,IVAC(infection-related ventilator-associated complication:感染症に関連した呼吸器合併症)に該当する.ここに膿性の気道分泌物や細菌検査の陽性所見があれば,基準に照らしてpossibleまたはprobable VAPと定義している1).これらはあくまでサーベイランス基準であり,治療目的の診断とは異なるが,今後の扱いに注目したい.
参考文献
1)長谷川 隆,他:人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia, VAP)はゼロにできるか? 日本集中治療医学会雑誌 21(1): 9-16, 2014. <VAPの総説で,診断基準やバンドルの作成された経緯も書かれている>
2)Guidelines for the management of adults with hospital-acquired, ventilator-associated, and healthcare-associated pneumonia. Am J Respir Crit Care Med 171(4): 388-416, 2005. <ATS/IDSAから出されたVAP,HAP(院内肺炎)管理のガイドラインである>
3)IDATEN感染症セミナー(編):病院内/免疫不全関連感染症診療の考え方と進め方.p40,医学書院,2011.
4)日本集中治療医学会 ICU機能評価委員会:人工呼吸関連肺炎予防バンドル2010改訂版(略:VAPバンドル). http://www.jsicm.org/pdf/2010VAP.pdf(2016年5月12日現在) <日本集中治療医学会から出されたVAP予防バンドルで,実施方法まで書かれている>
5)Muscedere J, et al : Comprehensive evidence-based clinical practice guidelines for ventilator-associated pneumonia ; prevention. J Crit Care 23(1): 126-137, 2008. <カナダから出されたVAP予防のガイドラインである>
6)Institute for Healthcare Improvement : How-to Guide ; Prevent Ventilator-Associated Pneumonia. 2012. http://www.ihi.org/resources/pages/tools/howtoguidepreventvap.aspx.(2016年5月12日現在) <IHIから出されたVAP予防のガイドラインである>
7)Sinuff T, et al : Implementation of clinical practice guidelines for ventilator-associated pneumonia ; a multicenter prospective study. Crit Care Med 41(1): 15-23, 2013.
8)Bouadma L, et al : Long-term impact of a multifaceted prevention program on ventilator-associated pneumonia in a medical intensive care unit. Clin Infect Dis 51(10): 1115-1122, 2010.
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