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文献詳細

雑誌文献

総合診療26巻8号

2016年08月発行

文献概要

特集 The 初診外来 【忘れられない初診】

「わたし,生理前は調子が悪いの!」

著者: 溝岡雅文1

所属機関: 1広島大学病院 総合内科・総合診療科

ページ範囲:P.670 - P.672

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Case
急性腹症と低ナトリウム血症の精査のために紹介された若い女性
患者:30歳台前半,女性.既婚.
主訴:低ナトリウム血症の精査依頼.
現病歴:X-2年に,人工妊娠中絶を2回実施した.この頃「甲状腺機能低下症」を指摘され,レボチロキシンの内服を開始した.
 X-1年前に,自然流産した.この頃から月経前に強い下腹部痛を繰り返すようになっていた.
 X年4月初旬に,「月経前症候群」の診断で精神安定薬などが開始されていた.
 X年4月中旬に,左下腹部痛で産婦人科を受診し,CT検査で右卵巣腫瘍(dermoid cyst)を指摘された.「卵巣腫瘍茎捻転」の診断で腹腔鏡下摘出術を受け,術後のトラブルなく軽快退院した(手術では,捻転の所見なし).
 X年5月下旬,心療内科で「うつ状態」に対してフルボキサミン25mg(SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が開始された.
 X年6月初旬,下腹部痛および食欲不振が出現.その翌日の夜には痛みが増悪し,悪心・嘔吐を伴うようになったため,産婦人科に緊急入院となった.
入院後の経過:意識清明,血圧116/94mmHg,脈拍数72回/分・整,体温36.8℃.腹部全体に軽度の圧痛はあるが,反跳痛や筋性防御は認めなかった.白血球数4,500/μl,CRP(C反応性蛋白)≦0.3mg/dl,腹部単純X線検査(図1)は腸管ガス像が多いのみでニボー形成はなく「腸閉塞疑い」と診断され,補液のみで腹部症状は軽快した.
 入院第3日目に,血清Na 118mEq/lと著明な「低ナトリウム血症」を認め,精査のため内科に転科となった.内科受診時には腹部症状はほぼなく,点滴による補液が行われていた.
初期診断:SSRIによるADH(抗利尿ホルモン)過剰分泌症(syndrome of inappropriate antidiuretic hormone : SIADH),月経前症候群,腸閉塞疑い.

参考文献

1)急性腹症診療ガイドライン出版委員会:急性腹症診療ガイドライン2015.医学書院,2015. <症状と初期対応を重視し,限られた時間のなかで的確に対応するために作成されたガイドライン>
2)Desnick RJ, et al.2012/福井次矢,他(監訳):ポルフィリン症.ハリソン内科学 第4版,pp2746-2757, MEDSI,2013. <米国の代表的教科書.ポルフィリン症,禁忌薬剤についても詳述されている>
3)近藤雅雄,他:日本の遺伝性ポルフィリン症.ALA-Porphyrin Science 1(2): 73-82, 2012. <1920〜2010年の91年間のポルフィリン症の集計報告,AIPは198人(男性32人,女性166人)>
4)大門眞,他(監修):急性ポルフィリン症.オーファンパシフィック社ホームページ. http://www.orphanpacific.com/patient/porphyria/index.html(2016年7月11日現在) <急性ポルフィリン症の症状から診断チャートまで,基本知識を学ぶ良い情報源である>

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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