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文献詳細

雑誌文献

総合診療26巻8号

2016年08月発行

文献概要

特集 The 初診外来 【忘れられない初診】

かったるい青年の背後に隠れていた精神病症状

著者: 宮崎仁1

所属機関: 1宮崎医院

ページ範囲:P.683 - P.686

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Case
「かぜ」だと思って内科を受診した青年が実は……
患者:21歳,男性.大学生.
現病歴:1週間前から37℃台の微熱,倦怠感,四肢の軽い痛みが続くために受診した.初診の問診票には「かぜだと思う」という記載あり.体温は37.2℃であったが,身体所見は異常がないため,アセトアミノフェンの頓用のみで経過観察とした.
 5日後に再診となり,「だるくて,体が押しつぶされそうな感じがしてつらい.就職活動に集中することができない」と訴えた.精神医学的評価を行ったところ,入眠障害,食欲低下,興味関心の低下,集中力低下,自責感が認められた.
初期診断:「大うつ病性エピソード」と診断し,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitors : SSRI)による治療を開始した.

その後の経過:治療後は,精神症状・身体症状ともにいったん改善したが,初診から4カ月後に再び入眠障害・起床困難となり,大学のゼミにも行けなくなった.そこで,再度精神医学的評価を行ったところ,「今まで気づかなかったことがわかるようになってきた.自分の考えていることが,頭の中で声のように聞こえてくる.真っ暗な中にいると落ち着く」という訴えがあった.
最終診断:考想化声および妄想知覚を疑い,精神科医へ紹介したところ,「統合失調症(または統合失調感情障害)」と診断された.

参考文献

1)岡孝和:ストレスと体温調節.心身医 48(7): 631-636, 2008. <心因性発熱の発生機序と臨床像についての総説>
2)安部秀三,他:統合失調症における受診経路および初発症状に関する調査. 精神誌 116(12): 969-981, 2014. <初発統合失調症患者の受診経路と症状に関する最新の調査結果>
3)Holder SD, et al : Schizophrenia. Am Fam Physician 90(11): 775-782, 2014. <家庭医を対象とした統合失調症に関する簡潔な総説>
4)針間博彦:早期精神病(early psychosis)における診断と症候学.精神誌 112(4): 338-345, 2010. <早期精神病に関する諸概念と診断基準に関する解説>
5)井出広幸,他:「頭の中で他人の声が響いている人」への対応──プライマリケアで診る精神病症状.医事新報 4573 : 36-40, 2011. <プライマリ・ケアの外来診療で精神病症状を見逃さないための実践的対応が学べる>
6)下寺信次,他:アーリーサイコーシス外来における早期介入.精神誌 115(2): 168-173, 2013. <精神疾患に対する早期発見・早期介入に関する本邦での取り組みの紹介>

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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