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文献詳細

雑誌文献

総合診療27巻11号

2017年11月発行

文献概要

特集 今そこにある、ファミリー・バイオレンス|Violence and Health 【総論】

ファミリー・バイオレンスの臨床社会学—「家族システム」に暴力を発生させる「社会的要因」「文化」への視点を

著者: 井上眞理子1

所属機関: 1奈良学園大学 ビジネス学部 社会学・社会病理学

ページ範囲:P.1474 - P.1478

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Case
 2014年2月上旬から中旬にかけて、生後0カ月の男児が父親から暴行を受け重症となった事件。父親は逮捕・起訴され、2015年3月大阪地方裁判所で実刑判決を受けた。
 夫婦は他市から転入してきたが、若年夫婦で経済的問題もあり、そのため市保健センターが支援を申出。2014年1月男児を出産したが、出産医療機関が不安を感じて市保健センターへ家庭訪問を依頼。2月12日家庭訪問の際、男児の顔に傷を発見するも、児童相談所に通告せず。家庭訪問の3日後、男児が心肺停止状態で救急医療機関を受診。翌日転院し、「低酸素脳症」「慢性硬膜下血腫」と診断された。
 現在では「父親の育児参加」についての広報・啓発が各自治体で盛んであるが、価値観のみ先行している傾向がみられる。若年の父親には「乳児とはどのようなものか、どのように扱うか」の知識がなく、出産後退院時などにすべての父親に対して研修が必要ではないか。

参考文献

1)American Academy of Family Physicians:Violence(position paper), 2004. http://www.aafp.org/x7132.xml(現在は非掲載だが、同じくAAFPのサイトに「ファミリー・バイオレンス」の定義が載っている。http://www.aafp.org/about/policies/all/violence.html)
2)厚生労働省:平成27年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数(速報値),2016. http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000132381.html
3)Children's Bureau(Administration on Children, Youth and Families, Administration for Children and Families):Child Maltreatment 2013. U.S. Department of Health & Human Services, 2015. https://www.acf.hhs.gov/cb/resource/child-maltreatment-2013
4)GOV.UK Department of Education:Child protection register statistics;England 2012-2016. National Society for the Prevention of Cruelty to Children, 2017. https://www.nspcc.org.uk/globalassets/documents/statistics-and-information/child-protection-register-statistics-england.pdf
5)Levesque RJR:Culture and family violence ; fostering change through human rights law. American Psychological Association, Washington DC, 2001. 〈ファミリー・バイオレンスと「文化」との関連についての論考〉
6)Gelles RJ:Family Violence. Sage Publications, London, 1979. 〈ファミリー・バイオレンスについての先駆的社会学的研究〉
7)Broderick CB:Family process theory. Spray J(ed): Fashioning Family Theory. Sage Publications, California, 1990. 〈「システム」「プロセス」という視点から家族を分析〉
8)井上眞理子:リスク・ファミリー─家事調停の現場から見た現代家族.pp40-54, 晃洋書房,2007. 〈13年間にわたる家事調停委員としての経験に基づく現代家族についての論考〉
9)井上眞理子:ファミリー・バイオレンス─子ども虐待発生のメカニズム.p93, 晃洋書房,2005. 〈ファミリー・バイオレンス、とりわけ子ども虐待についての臨床社会学的研究〉
10)de Mause L. 1982/宮澤康人,他(訳):親子関係の進化─子ども期の心理発生的歴史学.pp122-132, 海鳴社,1990. 〈子育て慣習の変遷を、心理発生的進化の歴史として描いた研究〉

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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