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文献詳細

雑誌文献

総合診療27巻8号

2017年08月発行

文献概要

特集 見逃しやすい内分泌疾患─このキーワード、この所見で診断する! 【Case series 1 病歴と診察で突き止める!】

認知症でしょうか?

著者: 橋本貢士1

所属機関: 1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 メタボ先制医療講座

ページ範囲:P.1032 - P.1035

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Case
患者:74歳、男性。
既往歴:高血圧症(4年前より)のため、カンデサルタン4mgを内服している。
家族歴:特記すべきことなし。
現病歴:約2年前から歩く速度が遅くなり、他人によく追い抜かれるようになった。ゴルフでも以前ほど飛距離が出なくなった。管理職であり、朝礼での挨拶の途中で声がかすれるようになった。また挨拶のなかで「何回か同じことを繰り返して言う」と周りから指摘されるようになったが、自分では全く身に覚えがなく、「そんなことはない」と声を荒げることが多くなった。また、言いたいことが思い出せないことが増え、会話に「あれ」「それ」を使うことが増えた。さらにここ数カ月前から顔がむくむようになり、全身倦怠感も強くなった。会社の健診で肝機能障害と高コレステロール血症を指摘され、当院を紹介受診した。
現症:意識清明。血圧131/72mmHg、脈拍数47回/分・整。両側の上眼瞼に黄色腫様の皮疹を認める。貧血なし。甲状腺腫は触知しない(七條分類0度)。胸部聴診上異常なし。肝臓を右肋弓下に1横指触知する。両側の前脛骨に陥没浮腫を軽度認める。徒手筋力検査では上下肢ともに異常なし。深部腱反射;アキレス腱反射に反応遅延あり。長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)20/30点。
初診時検査所見(カッコ内は基準値)
●血算:WBC 6,700/μL、RBC 507x104/μL、Hb 13.9g/dL、Plt 22.5x104/μL。
●生化学:Alb 4.5g/dL、Cr 1.38mg/dL、BUN 17mg/dL、Na 143mEq/L、K 4.5mEq/L、LDH 373IU/L(109〜210)、AST 75IU/L(13〜35)、ALT 68IU/L(8〜48)、γ-GTP 37IU/L(7〜60)、ALP 161IU/L(104〜338)、T-Bil 0.9mg/dL(0.3〜1.2)、CK 1,385IU/L(35〜175)、CRP定量0.03mg/dL(0.30以下)、TG 167mg/dL(26〜173)、LDL-Chol 186mg/dL(139以下)、Glu 94mg/dL、HbA1c 6.2%。
●胸部単純X線写真:心拡大なし。
●心電図:低電位を認める。

参考文献

1)橋本貢士,他:甲状腺疾患(機能亢進症,機能低下症).診断と治療 100(増刊号):424-431, 2012. 〈代表的な甲状腺疾患に対する標準処方について,わかりやすくまとめられている〉
2)日本神経学会(監修):認知症の定義,概要,経過,疫学.「認知症疾患治療ガイドライン」作成合同委員会(編):認知症疾患治療ガイドライン2010. pp 1-23, 医学書院,2010. 〈認知症の診断・治療に関する基準が,クリニカルクエスチョン形式で網羅的に記載されている〉
3)米田誠:橋本脳症の診断と治療.臨床神経学 52(11): 1240-1242, 2012. 〈橋本脳症の診断・症状・治療についての概略が,簡潔にまとめられている〉
4)Ritchie M, et al : Thyroid hormone ; influences on mood and cognition in adults. Maturitas 81(2): 266-275, 2015. PMID 25896972 〈甲状腺機能異常と,情緒および認知障害の関連に関する多くの臨床研究を俯瞰した総説〉
5)橋本貢士:TSH測定に関する問題点と潜在性甲状腺機能低下症.医学のあゆみ 260(9): 735-740, 2017. 〈潜在性甲状腺機能低下症診断の根幹となるTSH測定の問題点を,さまざまな角度から論じている〉

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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