文献詳細
特集 見逃しやすい内分泌疾患─このキーワード、この所見で診断する!
【Case series 1 病歴と診察で突き止める!】
文献概要
Case
鞍上部腫瘍により汎下垂体機能低下症を呈した1例
患者:57歳、女性。
主訴:全身倦怠感、食思不振。
現病歴:56歳時より微熱が持続し、朝起床しようとすると強い倦怠感を自覚するようになり、徐々に増悪していった。食思不振も出現し、3カ月間で5kgの体重減少を呈した。
同時期より視野障害を自覚し、眼科を受診したところ両耳側半盲を認め、脳外科を紹介した。頭部MRIでトルコ鞍〜鞍上部にかけて進展す る腫瘤(図1)を認め、ホルモン評価目的で内分泌内科紹介となった。
検査所見:Na 131mEq/Lと軽度の低ナトリウム血症を認め、ホルモン基礎値ではACTH(副腎皮質刺激ホルモン)14.3pg/mL、コルチゾール 1.2μg/dL、TSH(甲状腺刺激ホルモン)2.26μU/mL、FT4(遊離サイロキシン) 0.5ng/dL、FT3(遊離トリヨードサイロニン) 2.7pg/mL、LH(黄体形成ホルモン)<0.2mIU/mL、FSH(卵胞刺激ホルモン)1.0mIU/mL、エストラジオール<10pg/mL、GH(成長ホルモン)<0.03ng/mL、IGF(インスリン様成長因子)-1 52(年齢別基準範囲;73〜207)ng/mL、PRL(プロラクチン)35ng/mLと、汎下垂体機能低下症の所見を認めた。
診断と治療:機能刺激検査を実施し、「視床下部障害型の汎下垂体前葉機能低下症」と診断し、ヒドロコルチゾン15mg/日内服開始したところ、倦怠感および食思不振は著明に改善を認め、1週間後よりレボチロキシン25μg/日内服を追加とし、待機的に手術予定となり退院した。
鞍上部腫瘍により汎下垂体機能低下症を呈した1例
患者:57歳、女性。
主訴:全身倦怠感、食思不振。
現病歴:56歳時より微熱が持続し、朝起床しようとすると強い倦怠感を自覚するようになり、徐々に増悪していった。食思不振も出現し、3カ月間で5kgの体重減少を呈した。
同時期より視野障害を自覚し、眼科を受診したところ両耳側半盲を認め、脳外科を紹介した。頭部MRIでトルコ鞍〜鞍上部にかけて進展す る腫瘤(図1)を認め、ホルモン評価目的で内分泌内科紹介となった。
検査所見:Na 131mEq/Lと軽度の低ナトリウム血症を認め、ホルモン基礎値ではACTH(副腎皮質刺激ホルモン)14.3pg/mL、コルチゾール 1.2μg/dL、TSH(甲状腺刺激ホルモン)2.26μU/mL、FT4(遊離サイロキシン) 0.5ng/dL、FT3(遊離トリヨードサイロニン) 2.7pg/mL、LH(黄体形成ホルモン)<0.2mIU/mL、FSH(卵胞刺激ホルモン)1.0mIU/mL、エストラジオール<10pg/mL、GH(成長ホルモン)<0.03ng/mL、IGF(インスリン様成長因子)-1 52(年齢別基準範囲;73〜207)ng/mL、PRL(プロラクチン)35ng/mLと、汎下垂体機能低下症の所見を認めた。
診断と治療:機能刺激検査を実施し、「視床下部障害型の汎下垂体前葉機能低下症」と診断し、ヒドロコルチゾン15mg/日内服開始したところ、倦怠感および食思不振は著明に改善を認め、1週間後よりレボチロキシン25μg/日内服を追加とし、待機的に手術予定となり退院した。
参考文献
1)杉山徹,他:下垂体前葉機能低下症の診断とホルモン補充療法.ホルモンと臨床 58(9): 773-779, 2010. 〈各ホルモンの欠落症状について詳細に記載されている〉
2)栗本真紀子,他:下垂体前葉機能低下症.ホルモンと臨床 54(春季増刊号): 63-66, 2006. 〈下垂体機能低下症をきたす疾患について,表にまとまって記載されている〉
3)片上秀喜:視床下部-下垂体疾患診断へのアプローチ 下垂体前葉.日本内科学会雑誌 101(4): 913-923, 2012. 〈視床下部-下垂体機能とホルモン分泌調整の基本的な仕組みが,図表入りで説明されていて理解しやすい〉
4)沖隆:下垂体前葉機能低下症.成瀬光栄,他(編):内分泌代謝専門医ガイドブック改訂第4版.pp129-134,診断と治療社,2016. 〈機能刺激検査の解釈やホルモン補充療法について記載がされており,診断手順のフローチャートの記載もある〉
5)Pekic S, et al : Diagonis of endocrine disease ; expanding the cause of hypopituitarism. Eur J Endocrinol 176(6): R269-R282, 2017. PMID 28258131 〈免疫チェックポイント阻害薬による下垂体機能障害についても記載あり〉
掲載誌情報