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文献詳細

雑誌文献

総合診療27巻9号

2017年09月発行

文献概要

特集 うつより多い「不安」の診かた—患者も医師も安らぎたい 【診断編】

誰もが感じる「不安」と病的な「不安症」の違いとは?—プライマリ・ケア医の守備範囲

著者: 野村総一郎1

所属機関: 1日本うつ病センター 六番町メンタルクリニック

ページ範囲:P.1168 - P.1171

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Case
患者:46歳、女性。銀行の総合職。
現病歴:1年前に、職場での部署が変わり、ストレスが増す。2カ月前から電車通勤時に「呼吸困難」「動悸」「めまい」「頭痛」「発汗」を発作的に生じるようになり、「閉所恐怖」を感じて電車を途中で降りることがたびたび起こった。会社医務室の内科医に相談した結果、心電図および胸部単純X線検査に異常所見なく、精神科に治療依頼された。
診断:「パニック症/パニック障害」と「広場恐怖症」 G1 に該当する典型的な症状を示していた。予期不安が強く、いらついた様子で、ほてり感や発汗なども続いていた。また、気持ちを落ち着かせるために、仕事中にもコーヒーやドリンク剤を1時間に3〜4杯飲んでいた。これらから、「更年期障害」「甲状腺機能亢進」、また「カフェイン中毒」の疑いももたれた。
 そこで、内科での再検査と婦人科にも依頼し、併せてカフェイン減量を指導した。パニック発作に対しては、呼吸法(p.1190)と自律訓練を指導し、予期不安が著しい場合にベンゾジアゼピン系薬(p.1182)の頓服を指示したが、服用はほとんどなかった。
 診断的には仕事上のストレスによる不安症が中心的な病態だが、更年期症状やカフェイン摂取などがパニック症状にかなり影響していると思われたケースである。パニック症は、総合的に心身の状況を診る必要がある場合が多い(p.1202・1206)。

参考文献

1)木村大樹,他:動悸を感じ気持ちが落ち着かない(不安障害).堀川直史(編):ジェネラル診察シリーズ あらゆる診療科でよく出会う精神疾患を見極め,対応する─適切な診断・治療と患者への説明,専門医との連携のために.pp83-110,羊土社,2013. 〈プライマリ・ケア医に必要な精神医学について非常にまとまった内容である〉
2)American Psychiatric Association, 2013/高橋三郎,他(監訳):DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引.pp111-124,医学書院,2014. 〈米国精神医学会による診断分類DSM-5のポケット版の全訳である。マニュアルだが、疾病概念を知るうえでも最適。p.1176〉
3)Schneider, RK, et al. 2008/井出広幸,他(監訳):ACP 内科医のための「こころの診かた」─ここから始める!あなたの心療.pp135-158, 丸善,2009. 〈プライマリ・ケア医が精神疾患の初期対応を適切に行うために必要な知識を、コンパクトにまとめた好著〉

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:2188-806X

印刷版ISSN:2188-8051

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