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文献概要
特集 うつより多い「不安」の診かた—患者も医師も安らぎたい 【診断編】
「不安」を身体診察でアセスメントできるか?
著者: 上田剛士1
所属機関: 1洛和会丸太町病院 救急・総合診療科
ページ範囲:P.1172 - P.1176
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患者:58歳、女性。生来健康。
現病歴:2週間前、なんとなく「倦怠感」を感じたため夕方に測った体温が37.5℃であった。その後、体温を毎日測定したところ37℃前半の発熱が続いているが、倦怠感は消失している。それ以外の症状はない。すでに複数の医療機関で血液検査やX線検査、超音波検査を受け、異常はないと言われている。
診察室で何度も「ため息」をつくことから心理・社会的要因を確認したところ、義母の介護に疲弊していることが判明した。また、知人が原因不明の食欲低下と微熱が続き、最終的に悪性リンパ腫と判明していたこともわかった。
詳細な病歴聴取と身体診察を行ったのち、重篤な病気による徴候とは思えないことを説明した。また、食後や運動後・入浴後を避けて体温測定するように指導したところ、“微熱”は消失したため終診とした。
患者:58歳、女性。生来健康。
現病歴:2週間前、なんとなく「倦怠感」を感じたため夕方に測った体温が37.5℃であった。その後、体温を毎日測定したところ37℃前半の発熱が続いているが、倦怠感は消失している。それ以外の症状はない。すでに複数の医療機関で血液検査やX線検査、超音波検査を受け、異常はないと言われている。
診察室で何度も「ため息」をつくことから心理・社会的要因を確認したところ、義母の介護に疲弊していることが判明した。また、知人が原因不明の食欲低下と微熱が続き、最終的に悪性リンパ腫と判明していたこともわかった。
詳細な病歴聴取と身体診察を行ったのち、重篤な病気による徴候とは思えないことを説明した。また、食後や運動後・入浴後を避けて体温測定するように指導したところ、“微熱”は消失したため終診とした。
参考文献
1)Sharma N, et al : Objective measures, sensors and computational techniques for stress recognition and classification; a survey. Comput Methods Programs Biomed 108(3): 1287-1301, 2012. PMID 22921417 〈ストレスに対する身体反応と、それを検出するための機器についての総説〉
2)大平英樹:対人不安の生理的表出についての検討─表情筋筋電図と皮膚電位反応を指標として(社会B(2),口頭発表).日本教育心理学会第34回総会発表論文集 34 : 274, 1992. 〈対人不安の程度と皺眉筋・大頬骨筋・前頭筋の筋電図振幅を比較し、高不安群では皺眉筋筋電図の平均振幅が高かったことを示した〉
3)Pediaditis M, et al : Extraction of facial features as indicators of stress and anxiety. Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc 3711-3714, 2015. PMID 26737099 〈頭部の動きや顔色、まばたきや目の開き、あるいは口の開け方などを解析することで、ストレスや不安があるかどうかを73%で予測できる〉
4)Hicks RA, et al:Pupillary attributions of college students to happy and angry faces. Percept Mot Skills. 48(2): 401-402,1979. PMID 461040 〈幸せな顔を見ると、怒った顔を見た時よりも瞳孔径は大きくなる〉
5)Cruz AA, et al : Spontaneous eyeblink activity. Ocul Surf 9(1): 29-41, 2011. PMID 21338567 〈まばたきの回数についてのレビュー。このトピックに関しては小規模な古い報告が多いため、非常に参考になる〉
6)Sody AN, et al : Sigh syndrome;is it a sign of trouble? J Fam Pract 57(1): E1-5, 2008. PMID 18171560 〈ため息症候群(sigh syndrome)を呈した患者では、32.5%で重要な心的外傷のイベントが先行していた。ため息症候群の10徴候のうち、身体疾患を示唆するものはなかった〉
7)White PD, et al : The symptom of sighing in cardiovascular diagnosis. With spirographic observations. Am J Med Sci 177 : 179-188, 1929. 〈ため息の頻度について調べた貴重な報告。非常に古い報告でPMIDがない〉
8)Larner AJ : Head turning sign; pragmatic utility in clinical diagnosis of cognitive impairment. J Neurol Neurosurg Psychiatry 83(8): 852-853, 2012. PMID 22338027 〈head turning signは、認知機能障害に対して感度60%、特異度98%と、強く認知機能障害を示唆する〉
9)Fukui T, et al : Can the ‘Head-Turning Sign'be a clinical marker of Alzheimer's disease? Dement Geriatr Cogn Dis Extra 1(1): 310-317, 2011. PMID 22203823 〈head turning signは、Alzheimer型認知症の診断において感度42%、特異度83%、陽性尤度比2.5、陰性尤度比0.7で、他の認知症との鑑別に有用〉
10)Kadakia KC, et al : Cancer patients' perceptions regarding the value of the physical examination ; a survey study. Cancer 120(14): 2215-2221, 2014. PMID 24899511 〈悪性腫瘍患者において、身体診察は診断的価値(pragmatic)だけではなく、象徴的(symbolic)な意味を強くもっている。特に高齢者において、その傾向は強かった〉
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